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巻頭言

安達 淳(あだち じゅん/国立情報学研究所 学術基盤推進部長)

何よりもまず、先の東日本大震災でお亡くなりになった方々に心から哀悼の意を表します。また、被害の甚大さや被災された人々の言語を絶する困難を見るにつけ深い同情の念を覚えるとともに復興への強い意思に敬服しております。

NIIのコンテンツサービスも、節電要請や計画停電を受け、震災直後の二週間はたびたびサービスを停止せざるを得ず、利用者の皆様に多大なご迷惑をおかけしました。深くお詫びするとともに、改めてサービス体制を徹底的に見直す方針です。

NACSIS-CAT/ILLやCiNiiなどのサービスを提供するサーバ群は、千葉市稲毛区に所在する千葉分館内に設置されています。この地域が東京電力の計画停電の対象となり、3月中に計6回の停電が発生しました。自家発電装置があるにも関わらず、震災のため燃料の重油供給の見通しが全く立たず、度重なる停電には無力でした。

ただ、NIIのささやかな誇りはネットワークサービスが震災に耐え運用し続けたことです。部分的には回線断があったのですが、冗長構成を取る最新のSINET4への移行が終わっていたため、バックボーンのネットワークは途切れることがありませんでした。

夏に厳しい節電が予想される中で、今回の苦い経験を踏まえて、利用者にとっての利便と価値を第一に考えたシステムの再構成を考えているところです。

2003年から始まったSPARC Japanの活動でも、新たな方向性を出すことが求められています。最近の外的環境の急速な変化に適切に対応する必要があるからです。

2010年秋には国公私立大学図書館協会とNIIの間で包括的な協力協定が締結されるとともに、新しいコンソーシアム連合がJUSTICEとして誕生し、2011年4月1日から活動を開始しています。これは第一には電子ジャーナルの確保を目的とするものですが、その先にはオープンアクセスの強化も含む学術コミュニケーションの変革を目指すものとして位置づけられていると確信しています。

NIIは2009年からSPARC Japanの活動を、学会出版と大学図書館の間に立つ位置から、より大学図書館に近い立場での活動に移そうとしてきました。これは、扱う課題が単に電子化支援等の技術だけで解決できる問題ではないこと、国としてもオープンアクセスに向かう政策を掲げるよう徐々にシフトしてきたこと、また日本学術会議が学術雑誌の問題に取り組むという姿勢を見せ、ステークホルダーが一層明確になってきたことなどを背景としています。

そのような中で、2010年春にSPARC Japanが、物理学、数学、統計、コンピュータ科学および関連分野のプレプリントサーバarXiv.orgへの日本の大学からの支援の仲介などで成果を上げることができたのは大変喜ばしいことでした。現在、高エネルギー物理学分野のSCOAP3で日本からの貢献が求められており、力強く咲く桜これに日本として真摯に対応することが重要であると考えている次第です。

SPARC Japan発足時の論点であった学術雑誌の電子化は、今では技術的困難は解決されたと整理できると思います。 一方、大学の教育研究を支えるために必要なデジタル情報を整備するには新たな取り組みが求められていますし、何よりも国際的な連携協力が必要です。

SPARC Japanは、機関リポジトリ、オープンアクセスなど、今後の学術コミュニケーションを良質にするための活動を、大学図書館とともに、そして学会とのコミュニケーションを密に保ちつつ進めていきたいと考えております。

今後ともご支援を賜りたくよろしくお願いいたします。