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米澤 誠(よねざわ まこと/国立情報学研究所学術コンテンツ課長)

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協定調印式
協定調印式に臨む 坂内正夫 国立情報学研究所長(左)、
田村俊作 国公私立大学図書館協力委員会委員長/慶応義塾大学メディアセンター所長(右)

● はじめに

平成22年10月13日に国公私立大学図書館と国立情報学研究所は、これまでの電子ジャーナル・コンソーシアムの連携を強化し、新たな組織を立ち上げるための協定を締結しました。この協定をもとに両者は、500近い加盟館を持つ世界有数の大規模電子ジャーナル・コンソーシアムの形成へと動き出し、今後我が国の大学の研究活動で必要とされる電子ジャーナルを、安定的・継続的に確保・提供できる体制を整えて行くことになります。

また今回の協定では、電子ジャーナルに関する取組み以外にも、機関リポジトリの構築促進や総合目録データベースの強化、人材の交流と育成などに関する包括的な合意がなされています。このような包括的合意は、今後各方面における大学図書館と国立情報学研究所の連携・協力活動を推進する上で、その基盤になるものと期待しています。

●新たなコンソーシアム連携が求められる背景

1. 電子ジャーナルの重要性

今日、学術情報の中で研究成果を発表する論文の刊行媒体は、インターネットによって頒布される電子ジャーナルに移行しています。とりわけ、最新の研究成果が公表される海外の学術雑誌の購入形態は、従来の冊子体の雑誌から電子ジャーナル中心の形態に大きくシフトしてきており、「電子ジャーナルなしでは、我が国の学術研究は成り立たない」状況となっています。

文部科学省の調査によると、大学図書館における電子ジャーナルの利用可能な種類数は、平成16年度において約123万種類であったものが、平成20年度には約247万種類と約124万種類(100.8%)の増となっています。


2. 電子ジャーナルの価格問題

一方、電子ジャーナルに係る総経費は、平成16年度において約62億円であったものが、平成20年度には約185億円と約123億円(198.4%)の増加となっており、この増加傾向は止むことがありません。この経費増は、利用可能な電子ジャーナルの種類数の増加のみならず、海外の大手商業出版社の市場独占による、恒常的な価格上昇が大きな要因となっています。さらに、我が国の大学図書館は図書館予算が抑制されるなどの厳しい状況の下に置かれており、電子ジャーナルを含む図書館資料費の増額への対応は限界にきています。


3. 従来のコンソーシアムの取組み

この電子ジャーナルの価格上昇に対しては、国立大学では平成12年から「JANUL」、また公私立大学では平成15年から「PULC」というコンソーシアムをそれぞれ形成し、主要な海外出版社との間で交渉を行い、価格上昇に歯止めをかけることで一定の成果を上げてきました。この度、出版社との交渉力をさらに強化するために、2つのコンソーシアムの連携を強化する試みに着手することとなったのです。

●新たなコンソーシアム連携

協定調印式
(左から)古田元夫 国立大学図書館協会会長/東京大学附属図書館長、田村所長、坂内所長、中西新太郎 横浜市立大学学術情報センター長


新たなコンソーシアム連携では、電子ジャーナルを安定的・継続的に確保・提供できる体制を整えることを目指します。そのためには、以下のような活動を行い、我が国における教育研究環境の充実を図ります。

  • (1)電子ジャーナル等の統一的な契約交渉
  • (2)電子ジャーナルの新たな契約モデルの検討
  • (3)電子ジャーナルバックファイルの整備
  • (4)新たな電子リソースの導入
  • (5)電子ジャーナルへのアクセス支援(利用者認証環境の整備)
  • (6)電子ジャーナルに関する啓発活動

そして、以上のような活動を強化するために、国立情報学研究所にコンソーシアム事務局を設置することとしました。そのためにまず国立情報学研究所では、新しいコンソーシアム連携のための設置準備室を発足させ、新組織の設置に向けた準備を開始しています。

●コンソーシアム連携の基盤となる包括協定

今回の協定は、この電子ジャーナルに関するコンソーシアム連携の基盤となるものです。一方、これまでも大学図書館と国立情報学研究所との間では、国内最大の図書館総合目録の形成、国単位では世界第2位の数の機関リポジトリ構築、通算約2万5千人の図書館職員に対する教育研修の実施などの事業を通じて連携・協力を行ってきました。

この協定は、これまでの連携・協力の関係を踏まえて、「昨今の学術情報の急速なデジタル化の進展の中で、我が国の大学等の教育研究機関において不可欠な学術情報の確保と発信の一層の強化を図る」ことを目的とする包括的な内容となっています。この包括的な目的のもとで具体的には、次のような事項についての連携・協力を推進することとしました。

  • (1)バックファイルを含む電子ジャーナル等の確保と恒久的なアクセス保証体制整備
  • (2)機関リポジトリを通じた大学の知の発信システムの構築
  • (3)電子情報資源を含む総合目録データベースの強化
  • (4)学術情報の確保と発信に関する人材の交流と育成
  • (5)学術情報の確保と発信に関する国際連携の推進


国公私立大学図書館と国立情報学研究所は、我が国の学術情報流通の新たなステージに向け、この協定を起点としたさまざまな活動を展開して行くことになるでしょう。

広島大学共同リポジトリ