space     
ヘッダー
コンテンツ特集記事トピックス活動報告
トピック3
space
image

外山 智信(とやま としのぶ/早稲田大学図書館情報管理課)
space

image ● 早稲田大学リポジトリの特徴
 早稲田大学図書館(以下、本学図書館)では先駆的な試みとして2003年度より機関リポジトリシステムの実験、検証を行い、2005年11月に早稲田大学リポジトリ(DSpace@Waseda University)(以下、本学リポジトリ)として一般公開した。
 公開以来、多くの館員、関係者がリポジトリに携わって来た。担当により、考えが異なる中で、一貫して変わらない運用方針がある。それが「早稲田大学リポジトリに関する内規」(以下、内規)に明記されている。これは早稲田大学の併設機関である弁護士法人早稲田リーガルクリニックの協力の下、2006 年4月に制定された。
 内規には多くの条項があるが、本学リポジトリの特徴を表すものとして、第4条二項「リポジトリに供するサーバに格納された学術資料を公開し、その複製物を学内外の不特定多数の者からの要求に応じて電子的手段により無償で送信する」(以下、略)とある。つまり、本学リポジトリに掲載されている全ての学術成果において、学内者のみ公開といった限定をせず、広く一般の利用者の閲覧もできるようにしている。これはオープンアクセスの理念に沿うものであると考えている。更には、第2条四項「リポジトリに供するサーバに格納し、電子的手段により送信できるもの」とある。一見、何ということはない条項のようだが、この条項は本学リポジトリの収集方針の根幹の一つとなっている。メタデータのみの登録はせず、必ずメタデータと本文を一緒に収集、登録、公開するということである。
 また、内規以外にも本学リポジトリの特徴を表すこととして、広く流通していない本学ならではの学術成果(学位論文、紀要論文等)の収載に力が置かれていることが挙げられる。いわゆるグリーンジャーナル等の収載には力点を置いていない。これは機関リポジトリの本来のあるべき姿を考えるに、機関ならではの、その機関でしか閲覧等が困難な学術成果をリポジトリへ収載し、広く一般に公開すべきと考えられたからである。実際として、本学リポジトリに収載されている学術成果は紀要論文と学位論文で全体の50%以上を占めている。
 更には、利用者の視点から考えて、リポジトリ画面はビジュアル的、機能的にもシンプルに保ち、その分、学術成果の収載に力を入れている。利用者の多くは本学リポジトリを直接、閲覧しているのではなく、検索エンジン(Google Scholar等)や論文データベース(CiNii等)などから検索をしており、必要とする論文等が本学リポジトリに収載されている場合、それらを経由して、論文本体を閲覧すると考えたからである。勿論、メタデータを正確に作成すること、論文本文のデータファイル(PDFファイル等)を万全にしておかなければならない。


● 今後の課題
 残念ながら本学内におけるリポジトリの認知度は決して高いとは言えない。本学の構成員(研究者等)の母数が多いことは現実としてあるが、認知度を高めるために、本学図書館のホームページのリニューアルに伴い、リポジトリへのアクセシビリティの向上を図ったり、学内研究者向けにパンフレットを作成し、配布も行った。また、学内の他の部署との協働により早稲田大学研究者データベースと本学リポジトリとの連携を2008年度に実現したが、当該データベース経由によるリポジトリへの学術成果の登録件数はまだまだ緒についたところである。ダウンロード数を解析したり、論文執筆者への報告も必要であると思う。また、学内で産出される紀要類の全てがリポジトリに収載されているわけでもない。学内に多く点在するデータベースとの統合なども検討して行く必要がある。これらの課題の多くは本学に限った問題では無いと考えている。この国際学術情報流通基盤整備事業(SPARC JAPAN)セミナーへの参加、他機関との情報共有等で研鑚、経験を積み、本学リポジトリの発足時と同様、問題を一つ一つ解決して行ければと思う。