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トピック3


杉田 茂樹(すぎた しげき/北海道大学附属図書館学術システム課)

 「予想以上に閲覧回数が高いことに驚きました」
 「研究の当事者としては、研究論文の閲覧回数が分かることは大変励みになります。これからも自分なりに手応えのある論文を仕上げた時は、そちらにもご報告するつもりです」
 「読者の動向が分かります」
 「閲覧状況をお知らせ頂きありがとうございます。 私どもの研究に興味を持っている方がおられるということを知り、日本では余り研究者人口が多くないものですから安心致しました。今後もご連絡頂ければ幸いです。 今後も、整理がついたものから原稿をお送りいたします」

 北海道大学所属の研究者の方々からの声です。本学機関リポジトリでは、月に一度、利用状況レポートをお送りしています。

 次のメッセージは大学院生さんから。

  「おかげさまでどこの研究会や学会に行っても必ず『読みましたよ』と言ってくださる方がいらっしゃり、研究会にお誘いいただいたり、書籍の執筆のお誘いをいただいたり、研究活動が大変充実しております」

 講義資料を公開している先生からは、次のような感想を頂きました。

  「講義ノートの作成とHUSCAPへの投稿は、そのダウンロード数をみるにつけ、とかく我々が『面倒だなあ』と考えがちな講義準備にある種の潤いを与え、講義をより良いものにして行こうという気を起こさせてくれるものとして大変意義深いものであると私は思います。なによりも、全国に公開されるわけですから、下手な手抜きはできないという緊張感をもって講義に臨むことができるようになるのではないでしょうか」

 ジャーナル刊行元の方針により、文献公開になんらかの制約を受けた先生方からもメッセージをいただきます。

  「Copyright transferを送った時点で学会の著作権の考え方に従わざるを得ないという認識です」
  「著者の権利の裏付けは、その成果が公的なものであるからであり、決して個人財産だからではない。[引用者注:学会誌の売上、ひいては学会の安定的な運営に害があるかもしれない、という考え方については]この場合、論文成果が公的な資産であることの視点が欠落していると思います。国立大学法人で行われた研究でも、科研費等の国民の税金による支援を受けているわけで、公的な機関で公開する義務があると思います」
  「論文公開することで、雑誌の売上が受ける影響はそれほどではない気がします。我々が投稿した論文は、(手段はどうであれ)いかに多くの人に読まれるかが重要であり、雑誌にとっては、そこに掲載された論文が、どれだけ他の論文に参照されたかが重要なファクターであると考えます。つまり、多くの人に読まれ、他の論文に参照されるのであれば、その雑誌の価値も高まるし、いい論文の投稿数も増えると思います。『著者の権利』としてが適切かどうかは分かりませんが、世の中への公開に対して、もう少し寛容であってもよいと思います」

平成17年7月の仮オープン以降、著者の先生方のこうした生の声に支えられた4年間が過ぎました。公開文献数は本稿執筆時点で29,157点、トータルのダウンロード数は2,975,630回にのぼっています。

 「私の専門分野(心理生理学)とは異なる領域の方々に読んでいただき、率直な感想を聞いてみたいです」
 「同じ専門領域の方々は、データベースやジャーナル経由で読まれることと思います」

 私たちにとって最初の一里塚であった、10,000点目の文献の著者のおふたりからのメッセージです。
  学術文献流通の広がりと多層化。機関リポジトリがその交錯点となっていることを、私たち運営サイドも大きな喜びに感じています。