SPARC Japan NewsLetter No.16 コンテンツ特集記事トピックス活動報告
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SPARC Japanに参画して 「化学工学会からの報告」

山下 和子(やました かずこ)
公益社団法人 化学工学会
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Journal of Chemical Engineering of Japan(以下、JCEJ)は、2003年に SPARC Japan のパートナー誌として選定された。JCEJ が電子ジャーナルのビジネスモデル作成を求められている時期であった。

● 英語版ハンドブックの刊行

当初の目標を、論文の質を上げることにおき「投稿論文の手引き―初心者から熟練者まで執筆する前に必ず読もう―」という論文執筆のためのハンドブックを編集委員会で作成し、2003年から販売した。これは、数年分の査読レポートを分析し、査読においてどのような指摘が多いのか、またどのような表現方法が望ましいかを解説した20ページ程度のものである。

2003年は、日本語版のみの発行だったが、翌2004年には、SPARC Japan の支援で英語版を刊行することができた。初めに、英語圏の投稿者向けに、大幅な書き直しを行った。ハンドブックの中には、日本語の表記方法や、ローマ字の表記方法など、日本人向けの内容も含まれていたためである。それを、大幅に削り、新たに書き足し翻訳した。翻訳者は、化学工学の研究者から、日本の大学で英語のコミュニケーションを専門とする研究者に転身したイギリス人という、適任者であった。また、翻訳後の原稿を複数の研究者にレビューを依頼し、内容および表現の精査を行った。利用者からは、好評を得ることができた。

● 大学図書館コンソーシアム提案

SPARC Japan が開催した大学図書館との意見交換会を通して、大学図書館の活動に触れることができたことも大きな成果である。

JCEJ は、2008年に購読モデルの電子ジャーナルへと移行した。移行後は、大学図書館の購読が伸びないと、アクセスも引用も伸びない。SPARC Japan と大学図書館コンソーシアムの協力を得て、2010年に初めて化学工学会で出版している3誌を SCEJ パッケージとしてコンソーシアムに提案することができた。提案書の書き方もわからない筆者に、丁寧に指導してくれたコンソーシアムの担当者(現 JUSTICE の事務局の方々)には、心からお礼を述べたい。

JUSTICE が開催する、版元提案説明会に参加する機会も得た。多くの商業出版社が参加する説明会では、ブース作りや、プレゼンテーション前の細かなチェックなど、勉強になることがたくさんある。化学工学会は展示用のバナーや、ブースに飾るテーブルクロスを持たないため、すべて SPARC Japan からお借りした。現在、コンソーシアム提案を行っている非営利の団体は、SPARC Japan 選定誌が中心である。

● 化学系合同プロモーション

2007年から始まった化学系ジャーナル合同プロモーション活動は、SPARC Japan の支援がなければ続けることはできなかった。ジャーナルの担当者が、海外の会議に出向いて、研究者に日本のジャーナルを紹介する活動を、学会が自費で運営するのは財政的に難しい。全予算の半分以上が SPARC Japan の支援であった。

2012年8月には、展示ブース担当者として American Chemical Society 秋季大会に参加した。3日分として用意した、参加11ジャーナルの情報をまとめたパンフレット300部を2日目の夕方にはすべて配布し終えるほど盛況であった。日本のジャーナルに興味を示す研究は多いのだが、なかなか次のステップに進むことができない。投稿や購読など、次のステップに繋げる手段を検討する必要があると実感した。

限られた予算の中、毎年、アジア、北米、欧州と3箇所の会議に出展するのも、限られたリソースを活用して会場で研究者に PR する展示ブース担当者も、熱意がないと続かなかった活動である。2012年で、この活動もひとつの区切りを迎えた。

● SPARC Japan への期待

2003年当時、電子ジャーナルのビジネスモデル作成は、霧の中を手さぐりで進む状態であった。2013年を迎えた今、その霧はますます濃くなっているように思える。新しい出版形態、新しい購読モデル。セミナーなどを通して、それらを知る機会を与えてくれたのは SPARC Japan である。これからも SPARC Japan の活動に期待をしている。