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2008年度のSPARC Japan セミナーは9回に渡り開催され、学術コミュニケーション媒体としてのジャーナルにかかわる様々なトピックについての講演がありました。それに基づき活発な議論もおこなわれ、分野を越えて問題意識を共有できた有意義な1年だったと思います。参加者は学協会、大学、企業と多岐にわたっています。
第1回 2008年 4月 22日 研究成果発表の手段としての学術誌の将来
参加:86名
第2回 2008年 6月 24日 学術出版とXML対応-日本の課題
参加:83名
第3回 2008年 7月 10日 韓国コンソーシアム事情-海外展開を目指して
参加:41名
第4回 2008年9月2日・3日 紀要の電子化と周辺の話題 [京都大学数理解析研究所研究集会との共催]
参加:43名
第5回 2008年10月14日 日本における最適なオープンアクセスとは何か?[Open Access Day 特別セミナー]
参加:90名
第6回 2008年11月25日 I Fを越えて-さらなる研究評価の在り方を考える
参加:61名
第7回 2008年11月27日 Open Access Update [図書館総合展・学術情報オープンサミット2008フォーラム]
参加:80名
第8回 2008年12月16日 日本で使える電子ジャーナルプラットフォーム
参加:75名
第9回 2009年2月13日 SPARC Japan選定誌がやってきたこと


●第1回
研究成果発表の手段としての学術誌の将来
まずスタートとして選んだテーマは「学術誌は今後も存在していくのか」という大きな問題。総論としての講演を土屋俊教授(千葉大)にお願いし、各論として数学と物理の分野から行木孝夫助教(北海道大)、植田憲一教授(電気通信大)にそれぞれお願いしました。土屋教授からは、電子ジャーナルの登場によって、従来の冊子体のジャーナルがどのように変わっていくのか、また、研究成果を論文という形で表現し雑誌という形態で刊行することが果たして必然的なことなのかどうかについてお話いただきました。行木助教からは数学系を含む基礎科学論文の過去、現在、未来について語っていただき、植田教授からは、プレプリントの果たす役割、ピアレヴューの多様化、オープンアクセスなどについてのお話がありました。


●第2回
学術出版とXML対応- 日本の課題
2007 年11月に行われたXML出版についてのセミナーに引き続き、今回はXML作成の専門家からみた電子ジャーナル出版事業について学びました。講師に、デジタルコミュニケーションズの福重青史氏、物理系学術誌刊行センターの太宰達三氏、日本化学会の林和弘氏を迎え、メタデータがどのように作成されているか等、電子ジャーナル出版事業について講演していただきました。


第2回 SPARC Japan Seminerの様子
第2回 SPARC Japan Seminerの様子

●第3回
韓国コンソーシアム事情-海外展開を目指して
韓国科学技術情報研究院のChoi, Ho Nam氏をお招きして、韓国コンソーシアムについてのお話を伺いました。Choi氏は韓国科学技術大学で海外電子ジャーナルのコンソーシアムを初めて立ち上げ、現在は、国内外のコンテンツ総合サービスのチーム長として活躍されています。電子ジャーナルの認知度を向上させ、販売拡大につなげるためのノウハウを学ぶよい機会になりました。


●第4回
紀要の電子化と周辺の話題
紀要の電子化と周辺の話題   京都大学数理解析研究所で毎年行われている研究集会との共催で、2日間に渡り、下記のようなバラエティに富んだトピックが取り上げられました。(敬称略)
・ オープンアクセスをめぐる最近の動向: 三根慎二(名古屋大学附属図書館研究開発室)
・ Amazon.co.jpのランキングのモデルとロングテールの分析: 服部哲弥(東北大学大学院理学研究科)
・ 引用統計: 小田忠雄(東北大学名誉教授) ・ SPARC Japanとコンテンツ事業: 尾城孝一(国立情報学研究所)
・ 国内の数学関連ジャーナル類の発行状況: 行木孝夫(北海道大学大学院理学研究院)
・ Journal of the Mathematical Society of Japanの電子化における数式: 戸瀬信之(慶応義塾大学経済学部)
・ 数式検索システムの実用化に向けて: 橋本英樹(大阪大学基礎工学研究科)
・ 化学系電子ジャーナルから見た紀要の電子化: 林和弘(日本化学会)


●第5回
日本における最適なオープンアクセスとは何か?
世界初のOpen Access Day (2008年10月14日)にちなみ、オープンアクセスについてセミナーを開催しました。講演者とテーマは下記の通りです。(敬称略)
・ オープンアクセスの神話と真実: 永井裕子(日本動物学会)
・ 国立大学図書館からみた機関リポジトリの4年間: 富田健市(東京工業大学研究情報部情報図書館)
・ 「埋もれた研究成果を投稿・共有するサイト:My Open Archive」をやってきて思うこと: 坂東慶太(My Open Archive)
・ 誰が、何を読んでいるのか-アクセスログに基づく機関リポジトリの利用実態: 佐藤翔(筑波大学)


●第6回
I Fを越えて-さらなる研究評価の在り方を考える
過去40年以上に渡りジャーナルの評価基準となってきたインパクトファクター(IF)ですが、IF以外の評価基準を模索する新たな試みが始まっています。その新しい取り組みとして、オックスフォード大学出版局のMartin Richardson氏を迎え、2007年に設立されたThe Usage Factor Projectについて講演いただき、またワシントン大学のJevin West氏にはEigenfactorについて語っていただきました。日本の取り組みとしては、根岸正光教授(国立情報学研究所)から、「研究評価・雑誌評価のためのビブリオメトリックス指標:現状と課題」についての講演がありました。


●第7回
Open Access Update
会場をパシフィコ横浜に移し、図書館総合展の一環としてセミナーを開きました。世界で始めてオープンアクセスの試みを始めた出版社のひとつであるオックスフォード大学出版局のMartin Richardson 氏に、著者負担モデルの一例をあげながら、オープンアクセスモデルの多様化について講演いただき、日本化学会の林和弘氏には、学協会出版を中心にした日本のオープンアクセスの取り組み、及び、日本と欧米との認識の相違などについてお話いただきました。


●第8回
日本で使える電子ジャーナルプラットフォーム
物質・材料研究機構の谷藤幹子氏に、電子ジャーナルに関わってきたこれまでの様々な経験を通して、生産者・仲介者・利用者の立場で、学術プラットフォームへの期待を述べていただき、科学技術振興機構の久保田壮一氏からは、J-STAGE の現状報告と今後のシステムの構想を紹介いただきました。また、電子出版の出現によって利用者の行動を把握できるようになり、図書館や購読者にとって低価格での購入が可能になってきた状況の中で、機能やコストなどの観点から、日本で導入可能な海外のプラットフォームの紹介として Atypon SystemsのChris Beckett氏、Publishing TechnologyのLouise Tutton氏からそれぞれお話をお聞きしました。


●第9回
SPARC Japan選定誌がやってきたこと
SPARC Japan第2期事業(2006〜2008)の総まとめとして、寿山正博氏(日本機械学会)、二階堂紀子氏(電子情報通信学会)、鈴木英則氏(物理系学術誌刊行センター)、永井裕子氏(日本動物学会)から、これまでの活動報告と今後の課題や展望についての話しがありました。また、後半のパネルディスカッションでは、会場を交えた活発な議論がおこなわれました。



下越 弘子(しもこし ひろこ/日本数学会・SPARC Japanセミナー実行委員