今日、世界的規模でのインターネットの普及と電子出版技術の高度化が急速に進むなかで、学術情報流通システムは未曾有の変革期を迎えている。欧米の商業出版社、大手の学協会の多くは既に学術雑誌の電子化を完了しており、学術情報の流通メディアは紙から電子へと急速に転換しつつある。
一方、20世紀における学術研究の量的増大と、それを吸収するための商業的流通システムへの依存によって、学術雑誌の購読料は毎年上昇を続けており、支払金額は増加するにも関わらず、購入タイトル数が急激に減少するという危機的な状況(「雑誌の危機」)が生み出されている。
近年、北米の研究図書館協会を中心として、大学図書館が、学術情報流通システムの本来の担い手である研究者、学協会と手を携えて、学術出版の主導権を大手の商業出版社から自らの手に取り戻そうというプロジェクトが開始されている。また、学術論文への障壁無きアクセスの実現を標榜する「オープンアクセス運動」も、欧米を中心として地球規模での展開を見せようとしている。
翻ってわが国の状況を概観すると、国内学会誌の電子化は欧米に比べて大きく立ち遅れ、また国内の学術研究成果の発信力の弱体化が指摘されている。さらには、国からの助成金は学会の大きな支援となっているものの、それへの依存も決して否定できない。
全世界的に広まりつつある学術情報流通システムの変革の嵐の中で、わが国からの情報発信力を高め、学術研究活動のオートノミーを確立するためには、日本の学会誌をいかにして再生させるかが今まさに問われているのではないか。
以上のような状況に鑑み、ここに国内学会誌の将来を照射することを目的とした緊急シンポジュウムの開催を企画した。学術情報流通システムの主要なステイクホルダーである、学協会出版者、研究者、大学図書館員が一同に会し、今後の日本の学会誌のあり方について議論する場としたい。
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