コラム
物理・理科教育におけるサイエンス・アウトリーチへの期待
アドバイザー 覧具 博義
今日の社会は科学技術に強く依存しています。そのさらなる進展のために、多くの若手人材に科学技術分野に目を向けてもらう必要があることは言うまでもありません。それだけでなく、地球温暖化対策、エネルギー確保などの科学性の強い世界的な重要課題への対応や研究投資などの政策選択に、広く市民の意志が反映されます。市民が妥当な選択を行いうるためには、理系・文系を問わず、すべての市民の科学技術に対する理解と信頼を得るためのサイエンス・アウトリーチがきわめて重要です。
研究者との直接対話
先端領域で研究に邁進する研究者は、科学技術の魅力に惹きつけられて情熱的に研究に没頭しています。その情熱の息吹を、市民に、生徒に、児童に感じ取ってもらう研究者からの直接的な語りかけはきわめて効果的と思われます。第一線の研究者に直に接して会話するという経験は、強いインパクトを持ちえます。
持続可能で波及効果の大きなアウトリーチ
別の形態のアウトリーチとして、初等中等教育の教員との連携が考えられます。日本の教員には、優れた教育研究・教材研究の伝統があり、教育センターや、物理教育学会等の学会・研究会、自主的サークルなどを通じて、新しい教材や教育手法を学ぶための努力があちこちで行われています。教員は、児童・生徒がどの段階でどこまで理解しているか、何をどう提示すれば能動的に学習できるか、を把握しているプロフェッショナルです。これらの教員に向けての先端領域からの情報発信は、大きな波及効果が期待できます。
継続的な双方向交流
さらに、先端成果を教科に結びつけることを支援するフォローアップや、教員が橋渡し機能をつとめる共同作業としての特別授業や実験実習、などを通じての継続的な交流は、有効性が格段に大きいと考えられます。長期的な視点に立った、視野の広い、持続性のあるアウトリーチは、研究者の側にとっても得るものが少なくないと期待されます。