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Rutgers大学におけるGriffis Collectionの電子化プロジェクト

Electronic Access Project of W. E. Griffis Collection at Rutgers University

越塚 美加 (Mika KOSHIZUKA)

研究開発部 助手

1 Alexander Libraryの概要とScholarly Communication Center
2 Center for Electronic Text of Humanities (CETH)の活動
3 グリフィス・コレクション (William Elliot Griffis Collection)の重要性
4 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト
5 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト: 本プロジェクト
6 グリフィス・コレクション電子化プロジェクトにおける日米共同研究の可能性

1 Alexander Libraryの概要とScholarly Communication Center

1.1 アレキサンダー図書館(Archibald Stevens Alexander Library)

 米国ニュージャージー州立ラトガース大学(Rutgers, The State University of New Jersey)は、1766に創立された、米国内で8番目に古い大学である。現在は、New Brunswick、Newark、Camden、Busch、Livingston、Douglassにキャンパスが点在している。学生数は47,000人を越え、12の学部(undergraduate college)と11の大学院(graduate school)、そして、その両方を備えた3つの学部がある。うち、5校がカムデンキャンパスに、7校がニューアークキャンパス、14校がニューブランズウィックキャンパスにある。[1]

 学内の図書館は合計25館あり、Rutgers University Libraries(RUL)と総称される。図書館の総床面積は、約625,000平方フィートで、閲覧席は6,928席である。(表1)[2]

表1: ラトガース大学図書館全体の蔵書数(1996年6月30日現在)

資料の種類 所蔵冊数/タイトル数
単行書 2,411,412 冊
製本した雑誌 629,974 冊
現在購入中の雑誌 23,235 タイトル
政府刊行物 2,530,352 冊
マイクロ資料 3,929,618 巻/枚
インフォメーション・ファイル 202,963 冊

 ラトガース大学図書館の第一の目的は、学内の学生、教員、職員の教育や研究上のニーズに応えることであるが、母体が州立大学であるため、ニュージャージー州の住民を中心として、一般市民に対してもサービスを提供している。特に、政府刊行物に関しては、米国政府の刊行物およびニュージャージー州政府の刊行物も収集しており、館内閲覧に供している。また、電子的な情報資源も積極的に収集、サービスしており、1975年以降の資料はオンライン目録(IRIS)で検索することができる。また、IRISは、大学のコンピュータネットワークと接続しており、外部からのアクセスも可能である。

 グリフィス・コレクションの電子化を進めているアレキサンダー図書館(Archibald Stevens Alexander Library)は、ニューブランズウィックキャンパスにある。主として人文・社会科学分野の研究を支援するための図書館で、ラトガース大学の中で最大規模の図書館である。蔵書は人文・社会科学系の資料を中心に、政府刊行物のコレクションも充実している。また、電子的な情報資源も多く提供しており、ネットワークから利用できる各種オンラインデータベースを購入している他、スタンドアロンのパソコンからCD-ROMへのアクセスも可能である。さらに各図書館員が自分が担当している主題に関するインターネット上の情報資源を探索し、「Hot World Web Site」として、ニュースレターに公開するほか、WWW上に構築している図書館のホームページでの公開を行っている。[3] さまざまなサイトで作成しているホームページの中は、有用なものも含まれているが、URLが変わったり、当該ページの公開そのものも中止になること等がしばしば生じ、印刷物に比べて安定していない。そこで、上述のようなサービスを行うためには、図書館員はインターネット上の情報資源に関する知識を常に最新のものにしておかなければならない。また、アレキサンダー図書館では、すべての図書館員(いわゆるLibrarian職についている図書館員)がレファレンスを担当するため、こうした努力は仕事を遂行する上で必要不可欠となる。

 こうした電子的な情報資源を有効に利用するために、館内にはさまざまな場所に端末が置かれている。特に建物の1階には、OPACだけではなくインターネット上の情報資源を自由に利用するための端末を集中的に設置している部屋があり、図書館員が端末の間を歩き回って必要な支援を行っている。次節1.2で述べるScholarly Communication Centerは、電子的な資源をより積極的に提供するために構築されている。

1.2 アレキサンダー図書館学術コミュニケーションセンター

 1992年に基本構想案の作成に着手した「学術コミュニケーションセンター」(SCC: Scholarly Communication Center)が、1997年春のサービス開始をめざして、アレキサンダー図書館の4階に建築されている。SCCは、人文・社会科学分野の研究及び教育分野で増加しつつある電子的な情報資源を作成、収集、提供したり、SCC内の設備を利用して、学生や研究者の高度な研究を支援するための施設である。

 SCCが作られることになった経緯については、アレキサンダー図書館長である外山良子氏の論文に詳しい[4]。簡単に述べれば、1953年に建てられたアレキサンダー図書館の建物を建て増しする際に浮いた資金で、当初計画にはなかったが、建築希望のあったSCCを、新たに獲得した予算を加えて建築した。基本構想案を作成する委員会には、図書館員だけではなく、情報図書館学科(School of Communication, Information and Library Studies)を始めとする教員もメンバーとして参加している。

 SCCは、具体的には、次の3つの設備及びサービスから成っている[5]

 まず、情報処理研究室は、25のワークステーションを備えた2つのマルチメディア研究室であり、主として、電子的な情報資源の利用教育を行うために用いる。

 テレビ会議室/講堂は、収容能力112席のホールになっており、LANケーブルが引き込まれ、マルチメディアスクリーンが設置されている。ここでは、インターネットを経由して学外とのテレビ会議も可能である。ここで行われるセッションは、ビデオで保存し、必要に応じて再放送したり、編集する予定である。

 3つめの、人文・社会科学データセンターは、単に収集したデータへのアクセスを可能にするだけではなく、独自に作成した人文科学分野の電子テキストの提供も行う予定である。将来の方向性としては、後述する「Center for Electronic Texts in the Humanities」とアレキサンダー図書館ですでに所蔵している「Lexicon Iconographicum Mythologiae Classicae」を統合して、「Humanities Data Center」とすることが望ましいとしている。

 また、社会科学分野の研究者に対しては、様々な数値データを引き続き提供し、より高度で自由な研究に供する。社会科学データセンターとしては、既存の、あるいは、新しく作成されるデータコレクションのクリアリングハウスとしての役割を果たすと同時に、学内に散在する政府情報や社会科学関係の様々な情報に対するアクセスを容易にすることも目標の一つである。

 ラトガース大学では、SCCの様々な施設も、地域の企業やラトガース大学以外の教育機関へ貸し出す予定である。あらゆる通路は、建築規定にしたがって車椅子でも通れるよう広くなっているが、講堂前の廊下は特に広い。これは、そのスペースでデモや簡単な立食パーティー等が可能にするためである。また、利用者が利用する空間と職員のための空間の仕切りが透明なガラスになっており、利用者の様子が職員から見えるようになっている。これは、利用者が何か問題に直面しているように見える場合に、すぐに支援できるようにとの配慮から設計されている。

 このように、SCCは、柔軟な利用が可能なように設計されており、図書館の企画以外でも積極的な利用が期待されている。日本の大学図書館では、図書館員自身が積極的に設計に携われることは稀であるが、スペースの使い方、多機関への貸出方針については、基本的な考え方がかなり異なっているように思われる。

 現在、インターネット上には様々な分野の情報資源が公開されている。それらの情報源の存在を特定し、評価した結果を継続的に提供するだけでなく、情報資源そのものの作成まで図書館員が踏み込もうとしている点で、先進的な試みの一つと言える。

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2 Center for Electronic Text of Humanities (CETH)の活動

2.1 CETHの概要

 Center for Electronic Text of Humanities (CETH)は、ラトガース大学とプリンストン大学の共同プロジェクトとして1991年に設立され、人文科学分野の電子的なテキストの作成、流通、利用についての研究を行う機関である[6]。果たすべき使命は、

  1. 人文科学分野の電子的なテキストを扱うための枠組みを作ること。すなわち、電子的なテキストの潜在的な可能性に対する理解を進め、研究と教育のニーズを満足させること、
  2. 高品質の電子的なテキストの作成及び利用についての情報を流通させること

の2点である。

 これらの使命を果たすために、次のような活動を行っている。

  1. RLIN (Research Libraries Informatnion Network)で作成している電子的なテキストの目録作成作業
  2. 電子的なテキストの作成法やツールについての夏期講習会の開催
  3. 人文科学分野の研究者に対して電子的なテキストに関係する開発事業の調整。具体的には、テキストコード化の基準の利用、コンピュータソフトの評価、デモプロジェクトの企画
  4. WWW上のホームページの維持
  5. 人文科学分野の電子的な学術会議である、HUMANISTの支援

特に、夏期講習は、これから電子テキストを作成しようとする初心者を対象とした演習を含むセミナーとなっている。

 アレキサンダー図書館の3階に「人文科学電子資源センター(HERC, Humanities Electronic Resource Center)を置き、アレキサンダー図書館内のコレクションを電子化するとともに、先に述べたような研究を行っている。スタッフは、常勤が6名おり、その他に大学院生を非常勤として雇用している。

2.2 Text Encoding Initiatives (TEI)との関係

 人文科学分野では、コンコーダンスの作成や古典作品の異版のテキストの比較等、テキストを電子化し、共有することによって研究の促進が見込まれる領域が存在する。そのため、過去数十年もの間、各研究者や機関が独自の方法でテキストの電子化を行ってきた。しかしながら、電子化されたテキストを共有するためには、電子化の方式、テキストに対するタグづけ規則の共有、付与するタグの種類、テキストの交換の方式等、決めなければならないことが多数存在する。そこで、Text Encoding Initiatives (TEI)と呼ばれるグループが、電子的なテキストに付与すべきタグの検討及びタグ付与規則の決定に着手した。ここで用いられるタグは、SGML (Standardized Generalized Mark-up Language)の方式に則っている。

 CETHで作成される電子的なテキストは、TEIのタグづけの方式に則って作成され、第3章で述べるグリフィスコレクションも例外ではない。TEIのタグは、文学作品だけではなく、新聞記事や法律文書にも適用され始めているが、CETHでは規則の適用法の問い合わせに応じたり、作成された電子的なテキストのリストを作成することによって、クリアリング・ハウスの役割を果たしている。

2.3 アレキサンダー図書館との関係

 アレキサンダー図書館の中心的なコレクションは、人文・社会科学分野の資料であり、上述したようなSCCの建設による当該分野の電子的な情報資源の重要性はますます増大していくだろう。CETHの常勤職員は、英文学で博士号を取得し、現在も英文学の研究を続けている等、自分自身が作成している電子的なテキストの利用者であることが多く、まだ成熟していない電子的なテキストの作成、提供サービスを行うのにふさわしいと言える。アレキサンダー図書館のSCC機能と連携することにより、大学内外の研究者や図書館員への技術移転、電子化に値する資料の電子化を含め、さらに高度な活動が期待される。

 なお、次の章から述べる、グリフィス・コレクションの電子化プロジェクトは、図書館員と技術的な知識を備えた研究者との共同研究の成果である。

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3 グリフィス・コレクション (William Elliot Griffis Collection)の重要性

 グリフィス・コレクションは、主として、ラトガース大学の卒業生であり、日本研究者、歴史家として有名なWilliam Elliot Griffisによって1859年から1928年にかけて、収集された様々な資料から成っている。[7] すなわち、日本人学生によって書かれた英語のエッセイ、出版物、写真、パンフレット、スクラップブック工芸品および彼自身の日記や寄稿した新聞記事、手紙等が主体となっている。加えて彼の妹であるMargaret Clark Griffisが英語教師として日本に滞在したときに収集した女子学生のエッセイ等が含まれる。総数250,000にのぼるこれらのコレクションはすべて寄贈され、現在は、ラトガース大学の特別コレクションの一部となっている。グリフィス自身が収集したコレクションの中には、多数のスコットランドに関する資料も含まれているが、特に重要な資料は、グリフィスが明治政府に英語教師として雇用されている期間に日本で収集した、当時開成学校の学生であった小村寿太郎やMargaretの学生であった杉葉(すぎよう)を始めとする英語のクラスの学生が書いた英文のエッセイや当時の様々な出版物、政府が発行した公文書、多くの場合グリフィス自身のコメントやメモが付与されている写真、彼自身の日記や同僚とやりとりした手紙やそのコピー等である。これらは、当時の日本の文化や風習、それらに対する人々の考え方を研究する上で貴重な資料であることが指摘されてきた。[8]

 当初、グリフィス・コレクションは、孫娘であるKatherine G.M. Johnsonの手で整理、保管されていた。その後、コレクションがラトガース大学に寄贈され、1994年から1995年にかけて、アレクザンダー図書館の特別コレクションのキュレーターであるRuth SimmonsとCETHのWendell Piezによって、内容の調査を行ない、資料種別に再編成され、適切な保存のための処置がとられる共に、目録が作成された。

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4 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト

 グリフィス・コレクションの電子化計画は、コレクションそれ自体を電子化する第1期(パイロットプロジェクトおよび本プロジェクト)と電子化されたコレクションが実際の研究にどのように貢献しうるかを検討するためのシンポジウムの開催という第2期から成っている。

4.1 電子化計画立案の経緯: コレクションのマイクロフィルム化および電子化計画

 グリフィス・コレクションは、米国および日本を中心として、その歴史的な価値が高く評価されてきた。例えば、明治政府に様々な目的で雇われた外国人の活動や彼らが日本に与えた影響について議論するために開催された「ザ・ヤトイ・シンポジウム」では、このコレクションを実際に利用して行った研究成果が多数発表された。[8] コレクション中に納められている資料が実際に生産されたのは、1859年から1928年までのことで、既に100年以上が経過していることから、特に洋紙に書かれたり、印刷された資料の損傷状態が深刻になりつつある。そのため、「保存」を目的とした全資料のマイクロフィルム化が計画された。

 一方、グリフィス・コレクションの利用希望者は現在でも多いが、ほとんどの場合、現物そのもの、すなわち、紙の状態やインクの状態、裏面の記述等を研究対象としているのではなく、記述内容を対象としている。そこで、現在の情報技術進展状況およびその普及状況に照らして、電子化した資料をWWW上に公開し、一般に提供する計画が提案された。[7]

4.2 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト第1期計画

 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト第1期計画は、パイロットプロジェクトと本プロジェクトからなり、現在、パイロットプロジェクトが終了した段階である。

4.2.1 パイロット・プロジェクトの概要

プロジェクトの責任者: ラトガース大学アレクサンダー図書館長 外山良子

実施時期: 1996年3月〜1996年7月

資金源 : Alexander Library, Rutgers University;
The Center for electronic Texts in the Humanities(CETH)
Special Collections and University Archives, Rutgers University

電子化の対象および量: グリフィスが日本で1871年から1874年にかけて担当した日本人学生が授業で書いた英文のエッセイ約340篇

電子化作業に要した時間および経費:
 ・スキャニングからSGMLのタグを付与するまで:100時間
  $10×100時間×1名= $1,000.-
 ・その他
  付与するタグの選定、スタイルシートの作成、SGMLタグ付与規則の明確化、Panoramaのスタイルシート等の設定、プルーフ・リーディング

4.2.2 パイロットプロジェクトにおけるコレクション電子化の手順

 パイロットプロジェクトにおける実質的な作業は、CETHのWendell PiezとMary Jo Wattsが行なった。スキャニングを終えた画像は、Soft Quad社から発売されている、World Wide Web上で動くSGMLブラウザ、「Panorama Pro」に搭載され、作業は、Panorama Proを通じて行なわれる。なお、Panorama Proのプラットフォームは、MS Windowsである。以下にパイロットプロジェクトで採用された電子化の手順を述べる。

1) オリジナルのスキャニング(400dpi/カラー画像)
 コレクションの大部分は、手書きのエッセイやノート、メモの類でしめられている。パイロットプロジェクトでは、1871年から1874年にかけてグリフィスが教えた日本人学生のエッセイ約350篇を電子化した。それらを正確に転記するためには、ある程度、解像度の高い画像でなければならない。また、日本人学生の英語で書かれたエッセイには、グリフィス自身が青いインクで添削を行っており、学生が書いた部分と区別しなければならない。カラー画像であれば、オリジナルの色を活かして区別することができる。

2) テキストの転記(プルーフ・リーディング)
 日本人学生の英文エッセイは、流麗な筆記体で書かれているため、比較的読みやすいが、破れや傷み等、物理的な損傷からは免れ得ない。色あせた部分や欠損部分を含む手書き原稿の転記は、ある程度、想像力を必要とする。その他にも、日本の地名(例: Kiu-shiu、九州)や人名、職名(例: Karo、家老)等の記述が含まれている。そこで、転記内容の信頼性や妥当性を高めるために、日本の地名や人名、歴史的な知識を備えた人によるプルーフ・リーディングの過程を踏む必要がある。パイロットプロジェクトでは、Alexander Libraryの館長であり、プロジェクトの責任者である外山良子氏が行った。しかし、本プロジェクトでは、このための人員を確保する必要があろう。

 また、電子化されたテキスト中でも、オリジナルテキストから読みとることができる部分とは区別される。具体的には、テキストの通常の表示では灰色で示される部分が推測により補った箇所になり、また次のようなタグが付与される。

    正規化 <Reg>・・・</Reg>

    損傷  <Damage>

        <Add>・・・</Add>  推測により補った部分

        <Reg>・・・</Reg>   正規化した記述

        </Damage>

3) SGMLのタグを付与
 基本的にText Encoding Initiatives (TEI)で用いているSGMLのP3のタグセットと、米国議会図書館 (Library of Congress, LC)で用いているEAD (Encoded Archival Description)のSGMLを用いている。

 TEI SGMLは、これまで人文・社会科学分野のテキストを電子化する上で適用してきた経験があり、ある程度洗練されたものとなっている。また、学術的なテキストならば何に対してでも用いることができるという柔軟な構造を持っている。

 一方、EAD SGMLは、それ自体がシンプルなので、あまり構造化されていない文書を扱うのに適している。この特徴を生かすことで、SGMLのコンポーネントを樹形図の形で一覧することが可能であり、コレクション全体の構造を比較的容易に図示でき、作業を進める上で助けとなる。

4.2.3 パイロット・プロジェクトにおける問題点

 パイロットプロジェクトにおいては、以下のような様々な問題点が指摘されている。

1) ブラウザー
 現在作成している画像及びSGMLが付与されたテキストは、Soft Quad社から販売されているSGMLでタグ付けされたテキストを見るためのWWW上で動くPanorama Pro(最新版)でなければ作業をしたり、見ることができない。しかしながら、このブラウザーはNetscapeのように広く普及していない。多くの人にとっての利用しやすさを考えると広く用いられているブラウザーとの間に互換性を持たせることが必要になる。

 また、Panorama Proは、現在、Windowsのみをプラットフォームとしており、この点に関しては、改造等を要求する必要があろう。

2) システム上の制約
 オリジナル資料をスキャニングして作成した画像ファイルは、容量が大きく、平均1MBである。そのため、ファイル転送に時間がかかり、場合によっては、「broken pipe」等のメッセージが出て、完全なデータをクライアント側で取り込めないこともある。特に物理的な距離が遠い場合、例えば、学術情報センターからアクセスする場合などは、3回に2回ほどこのような現象が起こる。これを解決する策としては、ミラーサイトを設ける方法と画像データのみCD-ROMで送付すること等が考えられる。また、画像データを扱うには、クライアント側に十分な容量のメモリが必要とされる。

3) プロジェクトの方針
 パイロットプロジェクトでは、コード化作業の単純さと一貫性を追求した。そのため、TEIのSGMLとEADのSGMLを併用し、その中から用いるタグを選定した。例えば、改行を示すlbタグは用いず、また、行末のハイフネーションは、検索を考慮して<reg></reg>タグ中に正規化したデータを埋め込んだ。タグの使用法に関しては、さらに洗練させることが必要になる。パイロットプロジェクトでは、手書きのしかも流麗な筆記体で書かれたテキストのみを扱ったが、本プロジェクトで電子化する予定の資料は、日記帳や手紙、メモ等テキストデータが含まれている一方で、グリフィスのコメント付きの写真等が含まれる。これらを扱うためには、付与するタグの種類を再検討する必要があるだろう。

 本プロジェクトでは、これらの問題点を解決する方向で研究及び実際の作業を進める必要がある。

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4.3 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト第2期計画

 第1期の成果(電子化し、WWWで公開したグリフィス・コレクション)が研究にどう貢献するかを実際の研究活動を踏まえて報告する国際シンポジウムの開催によって評価することが第2期の中心である。

 現在、様々な機関や個人が既に印刷媒体で刊行された資料の電子化を行っているが、成果物である電子化された資料が従来の研究にどのように貢献するか、あるいはどのように貢献しうるかという側面からの評価はほとんどなされていない。本シンポジウムは、従来、ラトガース大学で現物を確認するか、あるいは、福井県でその写真版を確認することによってのみ進めることができた研究が、グリフィス・コレクションを電子化し、WWW上で公開、共有することによってどのように変わるのかを検証することを目的とする。このシンポジウムの結果から、電子化されたあるいは今後電子化されるテキストの利用に関する様々な示唆が得られるものと考えられる。

4.4 電子化されたグリフィス・コレクションが貢献しうると考えられる研究分野

1) 異文化理解、19世紀の英語、外交史等、人文社会科学系の研究
    社会学、文化人類学、言語学、英文学、歴史学等

2) 電子的な文書の保管に関する問題
    アーキビスト、キュレーター

3) テキストの電子化について、技術的な問題を具体的に解決する方法やテキストの検索に関する問題
    電気工学、データベース研究など

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5 グリフィス・コレクション電子化プロジェクト: 本プロジェクト

 現在、パイロットプロジェクトから得られた成果を踏まえ、本プロジェクトを遂行するための準備が進められている。

5.1 本プロジェクト組織

 本プロジェクトは、ラトガース大学アレキサンダー図書館長外山良子氏の責任で行なわれ、プロジェクトメンバーは、以下のようになる予定である。これに実際の作業を行なうメンバーが加わるものと思われる。

Project Manager:
TOYAMA, Ryoko, Director of Alexander Library, Rutgers University
Associate Project Manager:
PIEZ, Wendell, Humanities Computing Specialist, Center for Electronic Texts in the Humanities (sponsored by Princeton University and Rutgers University)
SIMMONS, Ruth J., Curator, Rutgers University Libraries

5.2 本プロジェクトで電子化の対象とする資料

 パイロットプロジェクトでは、日本人学生が書いた手書きのエッセイ約350点が電子化の対象となっていた。先にも述べたように、コレクション総点数は、マニュスクリプト、印刷物、写真、工芸品等をすべて合わせて25,000点以上に上る。この中で重要であり、電子化する予定のものは、グリフィスが日本から持ち帰ったコレクションである。この中には、「グリフィス自身が書いた日記」、「明治政府に雇用されていた他のお雇い外国人との私信」、「写真」、「ノート」、「スクラップブック」、「雑誌」、広告やパンフレット等といった「ephemera」等が含まれる。

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6 グリフィス・コレクション電子化プロジェクトにおける日米共同研究の可能性

1) 電子化された画像イメージを共有することによって、一つのコーパスを共同で作成する際の枠組み作り
 オリジナルのグリフィス・コレクションをスキャンして電子画像化し、WWW上で利用可能な形にしておけば、現物が手許になくてもインターネットや同じソフトウェア(この場合、Softquad社のPanorama pro)を利用できる環境を整えることによって、日本と米国のように離れた場所での共同作業が可能である。この場合、作業内容の一貫性を保持するためには、どのようなことが必要となるのか、その規則作りも含め、具体的に検討する。

2) 画像資料の電子化に関する手法の確立
 画像資料の電子化及びその検索法に関する研究は、これまでも情報学分野、工学分野等でも進められてきた。グリフィスコレクション中の写真資料は、撮影対象や撮影状況に関するグリフィス自身の説明やコメントが余白に書き込まれていることが多く、それらも重要な情報となっている。したがって、従来扱われてきた画像データとは異なる側面を持っていること、またパイロットプロジェクトで扱ってきたテキストのみのデータとも異なる側面を持っていることなどから、新たに画像資料の電子化に関する手法を研究する必要がある。

3) スタイルシートの検討
 現在、テキストにSGMLのタグを付与するために用いているスタイルシートはテキストの内容に拘わらず一種類(フル装備)である。一方、グリフィス・コレクションには様々な種類のテキストが含まれており、その種類に応じて出現するSGMLタグの種類がかなり類型化できそうなことが、パイロットプロジェクトの結果から推測できる。今後、作業の効率化のためにも、こうしたDTDを整理し、テキストの特性に対応したDTDを整えていくことが必要である。また、こうしたDTDは汎用性を持ちうるのかを検討し、テキストに対するSGMLのタグ付けに関連する問題を洗い出し、解決策を検討する。

4) ローマ字の正規化
 グリフィス・コレクションに含まれている日本人学生のエッセイには、日本の地名や人名をローマ字読みしたものが頻出する。しかしながら、現在の訓令式やヘボン式とはかなり異なったやり方であるため、検索効率を考えると、ヘボン式や訓令式でローマ字読みにしたものを埋め込むことによって正規化する必要が出てくる。この正規化に関しては、日本の地名や人名に通暁した者が行うことが必要となるだろう。

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謝辞

 今回の訪問調査に際しては、ラトガース大学の多くの方々にお世話になった。アレキサンダー図書館館長外山良子氏、同ライブラリアンのMs. Myoung C. Wilson、Ms. Linda Langschied、キュレーターのMs. Ruth Simmons、CETHのDr. Wendell Piez、Blanche and Irving Laurie Music LibraryのMs. Harriette Hemmasiには、担当業務や将来構想等について貴重なご意見を賜わった。特にお名前を記して感謝の意を表したい。

参考文献

[1] ラトガース大学についてのホームページより
http://info.rutgers.edu/About_Rutgers/about_univ.html (1997年4月現在)
[2] ラトガース大学図書館ビジターガイドより
URL http://www.libraries.rutgers.edu/rulib/services/visitor.shtml (last updated January 18, 1997)
[3] アレキサンダー図書館のホームページ
http://www.libraries.rutgers.edu/rulib/abtlib/alexlib/alexhome.html

[4] 外山良子. アレキサンダー図書館学術コミュニケーションセンター. 越塚美加編. 科学研究費総合研究(A)(課題番号06302076)研究成果報告書. 研究成果流通システムの研究開発平成7年度報告. p.67-80(1996)
[5] Scholarly Communication Centerのホームページ
http://www.libraries.rutgers.edu/rulib/abtlib/alexlib/scchome.html (last revised on November 6 1996)
[6] Center for Electronic Texts in the Humanities のホームページ
http://www.ceth.rutgers.edu/

[7] The William Elliot Griffis Collection Electronic Access Projectのホームページhttp://www.ceth.rutgers.edu/projects/griffis/project.htm (last emended August 21, 1996) By Wendell Piez.
[8] グリフィス・コレクションの評価、及び、コレクションを用いての研究成果は、「『ザ・ヤトイ』国際シンポジウム研究成果」として、次の文献に収録されている。
嶋田正〔ほか〕編. ザ・ヤトイ: お雇い外国人の総合的研究 (第1回「ザ・ヤトイ」国際シンポジウム研究成果). 京都, 思文閣出版 , 1987.4, 366p.
嶋田正 [ほか] 編. ザ・ヤトイ: お雇い外国人の総合的研究 (第2回「ザ・ヤトイ」国際シンポジウム研究成果). 京都 : 思文閣出版 , 1990.4, 366p

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