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「学術情報センター紀要」第6号(1994年3月)

論文要旨




1. 学術振興のための情報サービス
サー H.P.F. スウィナートン=ダイアー (英国図書館研究開発部諮問委員会委員長) [本文: 英語]

 [日本語要旨なし]

2. 情報技術の「国際化」― AFSIT-SIG の活動
内藤 衛亮 (学術情報センター), 佐藤 敬幸 (横河・ヒューレット・パッカード株式会社技術調査室長) [本文: 日本語]

要旨
情報技術の国際化(I18N)の理論的枠組みについて、文化、経済、技術的な観点か ら検討した。アジア情報技術標準化フォーラムの国際化専門委員会(AFSIT-SIG) はアジア10か国からの専門家による活動であり、その活動および文化要素に関す る調査結果について報告する。アジア地域の情報専門家のあいだで国際化活動に 関する連携が必要である。この活動の次の段階として、多様性調査、アプリケー ション・プラットフォームに対する要求条件の調査などについて紹介し、地域的 な意義を示唆する。

3. 図書館情報政策の形成に関する考察
金 容媛 (学術情報センター) [本文: 日本語]

要旨
図書館情報政策とは図書館情報に関する政策目標と政策手段に対し、政府機関が 公式に決定した基本方針や施策である。図書館情報政策に関する研究の中で、そ の形成過程を明らかにすることを試みた。その端緒として政策研究の意義、目的 および内容を踏まえた上で、図書館情報政策の形成に関する研究の枠組みを提示 し、政策の形成に影響を及ぼす要因と政策形成に参加する主体の一つである利益 集団の性格と役割について考察した。また図書館情報に関する国家政策の目標と それを実現する全国システムの機能や図書館情報に関する国際計画や活動などに ついて、一般的に適用できる主な要素を抽出し、図書館情報政策の基本的かつ本 質的な必要条件を考察した。本稿では事例として、英国、米国、韓国、日本をと りあげた。

4. 情報の経済学:新たなパラダイムに向けて
ティエリー・リボー (フランス科学技術庁経済産業社会共同研究所) (学術情報センター) [本文: 仏語]

[日本語要旨なし]

5. 情報の経済学:新たなパラダイムに向けて
ティエリー・リボー (フランス科学技術庁経済産業社会共同研究所) (学術情報センター) [本文: 英語]

要旨
本論では、情報の経済学において有力な二つのパラダイム、すなわち、市場財パ ラダイムと公共財パラダイムを批判的に分析したのち、新たな概念的枠組みとし て、情報に対する「伝来財産的な (Patrimonial) 管理」を提供する。 この枠組みは、環境資源や記念物のための経済学に由来する。情報は、情報ベー スと情報サービスという二側面からなる伝来的財産であるので、「情報環境」の 保全と、現在、未来の要求への適応を助長するような独自の管理方法が必要であ る。さらに、それは、伝来財産としての情報の各要素に特有な減価の諸態様に対 応し、また情報に対する伝来財産的な確認を促すようなものでなければならない であろう。

6. 互恵主義の追求:経過と結果 第5回日米大学図書館会議の評価
井上 如 (学術情報センター) [本文: 英語]

要旨
第5回日米大学図書館会議は、東京で開催された後、京都でもワンデイ・セミナ ーが開かれた。本稿は、その両方に出席した経験を踏まえて、日米の大学図書館 間における相互作用、互恵関係に関心の焦点をあててその評価を試みるものであ る。この関心を巡って3つのポイント:1)米国における日本研究と日本における 米国研究との間の情報資源の収集にみられるアンバランス、2)研究者と図書館員 との間の新しい関係における行き違い、3)互恵関係の発展に対する日米大学図書 館会議の持ち方の長短について、それぞれ第5回の会議中にどう扱われたかを紹 介し、会議後のフォローアップと関連情報を追加した上で、筆者の考察を試みた。 互恵関係の追求が、潜在的ながら、日米の大学図書館の底流にある一貫した関心 であることを明らかにした。

7. 医学専門用語の構造解析
小山 照夫 (学術情報センター), 大江 和彦 (東大病院) [本文: 日本語]

要旨
医療データや医学知識の記述にあたっては、自然言語表現が広く用いられている。 自然言語によって記述された情報を機械処理するうえでは、さまざまな専門分野 の用語の意味と関係を記述する概念辞書の整備が重要である。医学用語を始めと するさまざまな分野の専門用語の多くは合成語としての構造を持つため、合成語 を構成する要素語と、要素語から合成語を構成する合成規則を整理することによ り、概念辞書の構築を効率化することが期待できる。本論文では、このような観 点から、特に人体各部位、臓器、組織などを表す人体部位関連語について、大規 模な用語集に基づいて用語の概念カテゴリーを推定することを試みた。

8. 主記憶データベースに適したデータ構造とアルゴリズムに関する研究
早稲田 聡 (東京大学大学院工学系研究科,現:株式会社三菱総合研究所), 濱田 喬 (学術情報センター) [本文: 日本語]

要旨
データベース (DB) の超高速化を目指す研究分野の一つとして、主記憶にDBの 全データを格納する主記憶 DB(MMDB) が注目されている。本論文ではMMDBでそ の真価を発揮する、新たな関係DB(RDB)演算のデータ構造とアルゴリズムを提案 する。最初に関係表をMMDB上に表現する方法を示し、それを用いて従来ディス クベースDB(DBDB) 向けに用いられてきた selection 演算およびjoin演算のアル ゴリズムを MMDB 向けに表現する。さらにポインタを用いた、MMDB 上の join 演算のための新しいデータ構造を提案する。これを“連結法”と名付ける。連 結法はjoin演算の組になる関係表どうしを、対応タプル間のポインタを用いて 結ぶ方法で、 この方法により RDB 演算の中で最も処理負荷の重い join演算の コストを大幅に削減することができる。実際に主記憶上にRDBを構築して実験に よる性能評価を行なった結果、MMDBでの selection 演算としては AVL 木法ま たはB木法が適しており、join演算や一般的な問い合わせに対する演算として は連結法が優れていることがわかった。

9. 音響機器の音質評価に関わる人間科学的考察
山田 尚勇 (学術情報センター) [本文: 日本語]

要旨
音楽の中の非可聴高周波成分が鑑賞者の快感の一端を担っているというOohashi らによる研究成果を踏まえて、アナログ技術によるLPレコードとディジタル技術 によるCDとの二つの音楽メディアをめぐって分かれている評価を含む、オーディ オ機器一般の音質評価を、聴覚生理学および大脳科学を中心とした認知科学の見 地から、耳の非線形性の影響を中心として考察し、今後の検討課題と、関連した 人種的文化的問題などについて述べる。

10. 聴覚的言語と視覚的言語(増訂版)
山田 尚勇 (学術情報センター) [本文: 日本語]

要旨
発話およびそれから派生した文章を含めた聴覚的言語のほかに、最近ではコンピ ュータ・グラフィクスの急激な進歩に伴って、ほとんどがまだ片こと的なもので はあるが、画像に訴える視覚的言語という概念が注目されている。本稿では人間 科学の立場に立って、この両者を比較し、かつ実は手話などを含む視覚的言語の ほうが、言語としてはずっと古い起源を持ち、それだけに人間にとっては楽で自 然なコミュニケーションの媒体である可能性を探る。

11. 多すぎる漢字・漢語にどう応えるか
山田 尚勇 (学術情報センター) [本文: 日本語]

要旨
アルファベットによってことばを表記している国ぐにでは、表記法の問題は前世 紀の終りごろまでにだいたい片付いているが、日本では今にいたっても、ときど きまだ大きな変化が起こっている。そしてそのほとんどが、実は漢字の借用に始 まる、おおよそ1500年にも及ぶ問題の細部の表明である。本稿ではこの漢字の問 題を、主権在民の情報化社会の立場に立って、日本語の側から展望した論説であ る。


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