要旨
3次元における立方体および正八面体の高次元への拡張である超立方体および正
軸体は、たとえばユークリッド空間領域の分割の解析などに応用があるほか、純
粋数学的にも各種の興味ある性質を持っている。本稿は、関数の解析接続に基づ
く、その1次元および0次元への縮退の場合におけるいくつかの性質を、主とし
てガンマ関数と微分法によって論じる。
要旨
わが国の学術論文では、外国論文に比べて、一般に共著者の数が多いといわれる
ことがある。この背景には、わが国における研究活動のあり方、さらには、わが
国の文化的社会的風土があるはずである。本稿は、文献データベースによる共著
者数の統計的調査のための予備調査の結果報告と、多数連名の論文を生む、わが
国の研究環境に関する試論よりなる。予備調査における日米比較では、わが国の
論文のほうが著者数が多いという結果がえられたが、研究分野別間での差異が予
想されるので、今後の本格調査設計上の要件をまとめる。後半では、共著論文の
性格と創造性、学術雑誌の編集方針に関して、欧米とわが国の相違を、事例を通
じて比較検討し、今後、情報メディアの発達が共同研究の実施を一層容易にする
反面、成果の発表においては個別化・個性化をもたらす可能性を考える。
要旨
医師の診断過程は、人工知能の研究分野では古くから考察の対象とされてきた。
基本的には医師は初診問診時に、患者からの情報収集と疾患仮説の生成を並行し
て行っていると考えられる。本研究では、このような医師の初診時問診過程を、
情報収集、情報評価、仮説生成、仮説評価などの、同時並行的に進行する7つの
基本的なタスクとしてモデル化することを試みた。また、このモデルに基づいて、
これらのタスクを計算機上で並列実行する枠組みについての提案を行った。
要旨
本論文は、文献データベースの中から特定の文献を同定するための新しい手法を
提案している。データベースの中では、例えば参考文献の記述形式のようにして
文献の記載がなされている。一方、検索においては、文献に関する不完全な情報
を入力し、それと最も適合する情報を特定することが必要になる。この論文では、
入力時の誤り、人為的な省略、特殊な略記などに対して柔軟に対処するためのア
ルゴリズムと一致度を示す評価のための知的な方法を提案し、それをコアシステ
ムとして実現した。さらに、このコアシステムと連係して動作する構文解析ソフ
トウェアを実現している。以上のシステムを、実際のデータベースから選んだ文
献データを使って評価実験を行なって、高い同定率を得ると共に、本提案手法の
課題について論じている。
要旨
音楽の中の非可聴高周波成分が鑑賞者の快感の一端を担っているという Oohashi
らによる研究成果を踏まえて、アナログ技術によるLPレコードとディジタル技
術によるCDとの二つの音楽メディアをめぐって分かれている評価を、聴覚生理
学および大脳科学を中心とした見地から考察し、今後の検討課題と、関連した人
種的文化的問題について述べる。
要旨
化学情報データベースのうち特に化学構造とファクト・データに関するものの最
近の発展について述べた。化学構造検索データベース、化学反応検索データベー
ス、一般式構造データベース、物性値やスペクトルのデータベース、バイオ分野
のデータベースなどの動向について解説し、わが国における化学情報データベー
ス活動にも触れた。
[要旨なし]
要旨
海外の日本語文献のコレクションが日本研究を支援する上で抱える問題点を洗
い出すための一連の基礎調査を、欧米と韓国を対象として実施してきた。中国
については、1) これまでの海外の調査結果との比較、2)日本語文献所蔵機関
の総合目録の可能性、3)研究活動を方法や、情報源や、情報サービス側とセッ
トにして捉えることを念頭に置いて、大学の日本研究所等9機関を訪れた。そ
の結果、中国の日本研究の特徴として、1)日本の近代化への関心、2)方法とし
ての直接交流、3)情報源としての日本語本位という3点を見いだした。総合目
録の可能性については、中国語文献については、中国の図書館の運営様式が一
般に文献への直接アクセスを旨とする一方で、国家的情報機関ではモノグラフ
/逐次刊行物ともに総合目録の編集を重視しており、日本語文献に関しては準
備が始まった段階である。中国語文献、日本語文献ともに国際協力の可能性が
有り得ると見た。調査対象の捉え方として、研究をその方法や支援体制と併せ
て掴むことは、中国の日本研究の特徴からみて有効であると判断した。中国/
日本という2国間の研究・情報交流の調査から、グローバルな視野に拡大した
調査が今後必要である。
要旨
本稿は、文部省科研費によって1989-1991年度の3年間に行なわれた「東アジア
文字データの国際交流に関する実証研究」の報告であり、研究の目的、背景、
方法論、成果、今後の課題について述べる。