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「学術情報センター紀要」第4号(1991年12月)

論文要旨

      



1. 学術雑誌総合目録・誌名変遷マップの開発-和文編マップから欧文編マップへ-
根岸 正光 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
「学術雑誌総合目録欧文編・誌名変遷マップ1990」の作成に際して,このために 設計・開発されたソフトウエア等について報告する.この誌名変遷マップは,前 版である「学術雑誌総合目録和文編・誌名変遷マップ」(1987年)と比較して, 1)欧文書誌データを対象にすることだけでなく,2)収録雑誌数が2.6倍である こと,3)原データの収集機構がオンライン化されたことなどから,新たな設計,開 発を要した部分が多い.これら諸点を前版システムとの対比において論じる.

2. 誌名変遷マップ:学術雑誌総合目録における誌名変遷の図式的表現   -第3版欧文編の開発と新たな特色-
根岸 正光 (学術情報センター) [本文:英語]

要 旨
「学術雑誌総合目録欧文編誌名変遷マップ1990」は1991年3月に公刊された. これを受けて,本論ではまず学術雑誌総合目録データベース開発の経過・環境 について総括し,「ファミリー」概念に基づいた誌名変遷データの管理方式を 概説する.また,計算機によるマップ作成の過程に即して,変遷マップの形式と構 成法をまとめる.直観的に了解可能という変遷マップの特徴から,その応用はオ ンライン・サービスやCD-ROM版へも広がっている.また,本論では,変遷パターン のブラフ理論的分析に基づく分類による変遷関係の統計を掲げ,統計的な特異事 例をとり上げて解説を加える.

3. オブジェクト指向モデルに基づくマルチメディア文書データベース
勝野 聡 (東京大学), 安達 淳(学術情センター) [本文:日本語]

要 旨
オブジェクト指向モデルをデータベースシステムに適用する方法として,従来の データベースシステムの機能と,オブジェクト指向モデルに基づくクラス階層機 構を組合せ,オブジェクト指向データベースシステムの実現を行なう方法を提案 する.提案するデータベースシステムは,データ操作層,オブジェクト管理層,利用 者インタフェース層から構成され,機能ごとに層分けを行なう.さらに,マルチメ ディア文書データベースの構築を目的として,各層の機能の検討を行ない,プロ トタイプの作成を試みる.

4. データ従属性に基づくデータベースの合成
高須 淳宏 (学術情報センター), 桂 英史(学術情報センター), 原 正一郎(学術情報センター), 相澤 彰子 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
本論文では,複数の関係データベースを合成して新たな関係データベースを構築 する方法について議論する.関係モデルでは,データベースにおける制約をデータ 従属性を用いて記述し,合成の演算として結合演算を用いた場合,合成結果が設計 者の目的のデータとなるかどうかを無損失結合の概念を用いて判定できる.また, データの合成によって目的のデータが得られない場合は,補助的なデータの付加が 必要となる.そこで,本論文では,従属性を利用してこの補助的なデータのスキーマ を求めるための方法を示す.本論文で示す方法は,別々に管理されているデータを 集めて新しいデータベースを構築する場合に既存のデータでは不足している補助 的なデータのスキーマを構成するのに利用できる.

5. テキストイメージのテクスチャ性を利用した領域分割法
原 正一郎 (学術情報センター), 高須 淳宏 (学術情報センター), 桂 英史(学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
本論文においては,データベースの自動入力に資するためのアプローチとして, 文献におけるテキストイメージをそのテクスチャ性に基づいて効率的に分割す る解析手法について述べる.本論文で示す手法は,大局的処理から局所的処理へと いう流れをたどり,局所的処理では大局的処理で得られた情報を利用しながら処 理を行うことを特徴としている.これにより従来の局地的情報からのアプローチ に比べ,汎用性,処理効率の向上を図ることが可能となる.また,分割情報から局所 処理をテキスト領域に限定できるので,効率的な処理が可能である.さらに,カラ ーの分布特性から文字の抽出を試みた.これにより,従来のOCR(光学的文字認識) 技術のような白地に黒文字といった制約を受けることなく文字認識を行う事前 的処理の枠組みを提供することができる.

6. 電子出版物の生産・流通システムの形成に係わる諸問題-SGMLを中心に-
田村 俊作 (慶應義塾大学), 内藤 衛亮 (学術情報センター), 濱田 喬 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
電子出版物の生産・流通に関わる欧米の機関を対象に1989年春および1990年春に 行った訪問調査の結果に主に基づいて,SGMLに関連する動向を中心とした電子出版 物の生産・流通システム構築の動きのいくつかを概観し,システムを整備する上で の課題を検討した.SGMLの普及に携わる団体の活動について述べ,SGMLの導入状況 を見ることにより,SGMLが普及する上での問題点を指摘した.さらに,電子文書の保 存・提供を試みた最近のプロジェクトをいくつか取り上げて,その問題点,特にSGML の適用可能性に関わる問題点を簡単に検討した.

7. 中国科学院文献情報システムの現代化に向けて
張 希軒 (中国科学院文献情報センター), 訳: 計 宇生 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
中国科学院は中国における自然科学総合研究センターであり,中国各地に約130の 研究所をもっている。中国科学院文献情報センターは中国科学院の研究活動の支 援機関であり,上海,武漢,成都,蘭州にある4つの分院の文献情報センターおよび 130の研究所の図書情報部門と合わせて,中国科学院の文献情報システムを構成し ている.本論文では各種データベースの作成及びサービスを中心に,それらの機関に おける図書館自動化および現代化への歩みについて述べる.十数年の努力によって 得られた成果が示され,情報資源の交換と共有のための新しいハイテクなセンター に発展していくための問題点が指摘された.

8. 韓国におけるデータベース・サービスの現況
権 忠煥 (韓国産業研究院産業技術情報センター), 訳: 金 容媛 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
韓国におけるデータベース産業の歴史的背景と国家計画,海外のデータベースの 導入と提供も含み,本格的に活動している数十のサービス組織を網羅した現状を 製作,流通,利用に分けて述べている.さらに韓国のデータベース産業が直面して いる当面の問題点を指摘し,これからの課題についても提言する.韓国において 1978年に韓国科学技術情報センター(KORSTIC)が始めたデータベースの生産活動 は,1990年現在,140余機関で約170種のデータベースが生産されており,その中で KETEL,NICE-TIPS,DACOMなどの47機関で製作される68種が一般に公開・提供 されている.

9. 韓国目録規則の構造と特質-日本における適用上の諸側面
林 昌夫 (東京都立衛生研究所), 内藤 衛亮 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
収集整理すべき文献の言語による目録規則の理解が不可欠であるとの前提をあき らかにするため,東アジア地域における書誌調整の枠組みについて検討する.韓国 目録規則を1)日本において韓国文献の目録作成に適用することの可否,2)日韓共通 の目録作成原理を確立することの可否,3)日本の目録規則との異同を確認するなど の目的で調査分析した.そのため,韓国目録規則3.1版を日本語訳した.日本語も韓国 語もともに漢字を使用しながらも,表記する用語に異同があり,また,それぞれ規則 における言い回しも多様である.日韓の学術情報および書誌情報交換を実現するた めの課題を列記して問題提起を試みる.

10. 欧米日本語コレクションの日本情報源としての再評価
井上 如 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
日本に関する情報の海外への提供手段の一環として,外国で蓄積が進んでいる日 本語コレクションの日本情報源としての可能性について調査をした.日韓間にお ける相互の情報蓄積の現状をまず予備調査として実施し,その結果を踏まえて, 日本語コレクションの日本情報源としての可能性を評価するための7個の評価基 準:1)図書と雑誌の対比,2)文献の取扱い単位,3)総合目録の発達,4)エキゾチシズ ムからの自由,5)日本情報源としての英文文献,6)サブジェクト・アクセスもしく はサブジェクト・ライブラリアン,7)custodyの孤立,を設定し,それらを作業仮説 として用いながら,欧米の人文科学系,社会科学系の日本語コレクション所蔵機関 23機関に対し,あらかじめ質問表を送付した上で,訪問調査を実施した.上記評価基 準毎にまとめた調査結果に対し考察を加えた結果:1)国際語とvernacularの2重構 造,2)エキゾチシズムとの距離,3)書誌コントロール,4)主題アクセス,5)CJK対応の 5点が,それら日本語コレクションの,日本情報源としての今後の可能性を評価する クリティカルな要因であることが確認された.その上で,調査対象機関の日本語コ レクションを:1)日本研究,2)地球研究,3)国際研究という目的別に3種類に類型化 し,今後の課題の定立を試みた.

11. 文字論の科学的検討
山田 尚勇 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
われわれは主として漢字かな混じり文を使いなれているために,自分が漢字に対 して持っている先入主を基にした,科学的裏付けのない議論をもって,文字に関す 普遍的真理と信じていることがかなりある.本稿においては,言語学,心理物理学, 認知科学,脳科学などの観点から,講演形式を用いて,文字に関するそうした種々 の主張を一つ一つ解明してゆく.

12. 現在の日本の工業的成功の一分析
山田 尚勇 (学術情報センター) [本文:英語]

要 旨
第2次世界大戦後の日本の工業経済の奇蹟的な発展は国際的に高く評価されると ともに,時には謎とされている.一方,国際的な貿易摩擦を引きおこすようになっ てからは,日本のそうした成功は日本文化の非国際的な異質性や日本政府のアン フェアな貿易政策によるものとする論調をしばしば誘発するに至った.しかし,そ の多くは問題の核心を十分理解した上でのものとは言い難いと思われる.本稿は, さまざまな観点からの考察を通して,この問題の本質についてのそうした国際的 な誤解を解くことを試みるとともに,これからわれわれ日本人がこのような国際 問題に取り組んでいくときに考えるべきことの一端を率直に示唆しようとするも のである.

13. 知的能力の加算的評価による選抜のくりかえしがもたらす創造性の抑圧の傾向   -数理的考察-
山田 尚勇 (学術情報センター) [本文:日本語]

要 旨
各種テストにおける得点を加算的に総合して個人の総合能力を評価することに よる選抜をくりかえすと,順次そつのない人材が選抜され,たとえば特定の分野 における独創性の持ち主のように,何か傑出した才能を持つ者が疎外されていく 可能性について,かつて筆者は定性的な論考を試みておいた.本稿では,その数学 的根拠を示すことにより,定量的に一歩進めた論考を展開する.

14. 資料: NACSISサービスの国際展開を目指して-国際展開WG報告書-
[本文:日本語](要旨なし)


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