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「学術情報センター紀要」第1号(1987年3月)
 要旨

【2001/12】
創刊のことば
猪瀬 博 (学術情報センター所長)

研究論文

IFLAプレコンファレンス・セミナー「多言語・多文字資料利用のための図書館自動化システム」: 提起された問題点
内藤 衛亮(学術情報センター)
要旨:
1986年8月に多言語・多文字資料の整理と利用のためのコンピュータ処理に関する国際図書館連盟(IFLA)プレコンファレンス・セミナーが開催された. 文字セット(特に漢字文字セット)の国際標準化の必要性がどのようなところにあるか, 何が基本的な要求条件かを明らかにして, 共通理解を深めようとする目的で開催された. 中国, 韓国そして日本など漢字を使用し, コンピュータ・アプリケーションの開発を進めている漢字圏の事例, 東アジア各国との調整を必要とする, 現に漢字処理を進めている当事国である米国(RLG)とカナダ(Utlas)などのほか, アラビア文字, タイ文字, ジャワ文字, ギリシャ文字などのアプリケーション開発とその後の問題点, そして東アジアにおける書誌調整のための体制が必要な点が指摘され, 提案された.

TOOL-IR工学文献データベース(COMPENDEX, EiENGINEERING MEETINGS)検索システムの開発
根岸 正光(学術情報センター), 小澤 宏(東京大学大型計算機センター)
要旨:
工学文献データベースCOMPENDEXおよびEi ENGINIEERING MEETINGSに対するオンライン情報検索システムを開発した. システムの一般語索引は論文表題, 会議名, CODENの各項目, およびデータベース編集者が付与した索引用項目中のすべての語について, また特定索引は著者名, ISSN, ISBNおよび会議番号について作成されている.
これらの索引と照合して目的とする文献の集合を作るには, PHRASE, SEARCH, AUTHOR, ISSN, ISBNの各コマンドを使用する. PHRASEコマンドは一般語索引を対象とし, オペランドに指定された語すべてを含む文献を検索する. SEARCHコマンドは汎用の検索コマンドであり, すべての種類の索引を対象として範囲検索など複合操作を行うことができる. またLOOKコマンドを投入すると索引内容が表示され, それを吟味したのち, 文献集合を作ることができる. 文献集合の内容を表示するにはDISPLAYコマンドを投入する. このコマンドは簡略表示から全情報の表示まで5段階の表示レベルを持つ.
本システムは東京大学大型計算機センターTOOL-IRシステムの一環をなすものであり, 日本の学界において広く利用されている.

誤り訂正符号の調査票記入への応用
橋爪 宏達(学術情報センター), 宮澤 彰(学術情報センター)
要旨:
調査票のようなオフライン形式のデータ・エントリに適用可能な誤り訂正符号系について述べる. またこの誤りと訂正符号を, 学術雑誌総合目録の調査に適用した例を紹介する. この調査で収集した75万件のデータにつき, 誤りパターンを解析する. 更にこのデータから人間の誤り特性につき考察する.

TSS接続による仮想画面転送(VTSS)方式
安達 淳(学術情報センター), 橋爪 宏達(学術情報センター), 大山 敬三(学術情報センター)
要旨:
本論文は, 1985年に東京大学文献情報センターにおいて開発された, 小規模端末システム用通信方式(VTSS)の実現方法について述べている. この方法は比較的小規模な計算機による端末システムに対して, 画面型アプリケーションの仮想画面情報の転送を可能にすることを目的とし, 分散処理に適した機能を有している. 方式の中核は, 東京大学文献情報センターおよび学術情報センターにおいてすでに運用を行っているN-1ネットワークに基づいた「画面転送プロトコル」を, N-1機能を持たない計算機に対しても適用可能にするための簡易化された下位プロトコルであり, 本論文の中でその開発の背景, および実現方法について概要を述べるとともに, 付録として仕様書を掲載している.

画面指向通信用簡易プロトコルVTSSのテストシステムおよびプロトタイプ端末システム
大山 敬三(学術情報センター)
要旨
東京大学文献情報センターにおいて画面型アプリケーションに適用する小規模端末システム用通信プロトコル(VTSS プロトコル)の開発を1985年に行い, これに基づいてホストおよび端末システム用の通信ソフトウェアの開発を行い, 学術情報センターにおいてひきつづきサービスを行っている. この開発に際し, ミニコンピュータを用いてホストおよび端末のシミュレータを開発し, これらのシステムのテストおよびデバッグに用いた. 本論文ではこのシミュレータについて, その構成と利用方法について述べる. また, 本プロトコルの妥当性と実現性を検証し, より使いやすい端末システムのユーザインタフェースのあり方を検討するために端末シミュレータを発展させ, プロトタイプ端末システムの開発を進めている. この基本的構成と考え方についても述べる.

解説

大量情報の蓄積技術[本文:英語]
安達 淳(学術情報センター)
要旨
本論文は, 画像データベースのような大規模データベース構築のための蓄積媒体技術の現状を調査報告するものであり, 特に光学的蓄積技術に焦点をあてている. 従来の磁気蓄積媒体を比較基準として参照しつつ, 光ディスクの現状および将来動向を議論する. また, 情報システム内における蓄積装置の機能分担の観点から, 光ディスクを取り入れたシステムを設計する際, 考慮すべき点についても述べる.

研修リポート

駒沢大学図書館の現状と将来
阿部 博則(駒沢大学図書館)
要旨:
駒沢大学図書館はこれまで大学の特色である仏教学・禅学関係図書の収集に力を注いできた. 現在, 本学図書館は機械化を検討中であるが, その際同関係図書の存在が大きな問題となってくる.
本学図書館ではかつて, 禅学関係図書を収録した「禅籍目録」を編纂している. 同目録は資料のもつ特異な性格により, 独自の目録法で記述し,かつ分類作業をしている. しかし将来禅籍目録の継続編纂と, その機械化, および学術情報システムの参加を考える時, 古典籍の目録規則や, 分類法の標準化が第一に望まれる.

成蹊大学図書館機械化(漢字処理)へ向けてのMARCの実験 : リレーショナル・データベースの応用
大井 敏暉(成蹊大学図書館)
要旨:
本レポートは,PL/IによるMARC処理およびリレーショナル・データベース・マネジメント・システムの応用を述べたものである. はじめにMARCの構造分析を行い, PL/I処理例としてJP MARCレコードのコード変換, 記述ブロック・データ抽出およびLC MARCレコードのタグ・データ抽出を例示した. 次にRDB1の応用例を示し, 最後にMARC,PL/I,RDB1について検討を加えたものである.

農学分野における情報検索の現状と問題点
為石 理恵子(京都大学農学部図書室)
要旨:
京都大農学部図書室では, 1982年8月からオンライン情報検索サービスを実施している. 利用者がオンライン検索サービスをどのように捉えているのか, その問題点を探り, より望ましい情報検索サービスを考えるため, 利用者の実態調査を行った. アンケート結果の分析から, 検索効果あるいは結果に対する不満は, 検索語の適否の点にあると考えられ, BIOSIS Previewsをとりあげ, 自然語とコードでの検索比較を試みた. さらに, 農学分野におけるデータベースの問題点と検索仲介者の役割を考察した.

文献情報センターと琉球大学附属図書館
本郷 清次郎(琉球大学附属図書館)
要旨:
大学図書館には学術情報センターとしての機能が益々求められてきている. 琉球大学附属図書館が, 情報量の蓄積が少なく, またその大規模集積地からは遠く離れている沖縄という地域環境の中で, どのようにしてその機能の強化をはかっていくかは我々の大きな課題である. このレポートでは, そのような状況を把握するために琉球大学附属図書館および沖縄の図書館環境の実情を見て, それを打開する一方策として図書館ネットワーク利用による相互協力, その具体的なものとして東京大学文献情報センターとの接続について考えていく.

Reconから総合目録データベースヘ
牛崎 進(立教大学図書館)
要旨:
日本ではReconの意義や方法について言及されることが少ない. これはローカルに作成される書誌レコードが, 外部世界と交渉を持たないできたことに一因がある. そこで, 本レポートでは, 先ず, Reconそのものの理解の一助として, Reconをめぐる北米と日本の現状を報告する. そしてOPACを目指す図書館のReconプロジェクトによって形成される書誌データベースと, 図書館間を連結させて広範囲な書誌コントロールを可能にする地域的, 全国的総合目録データベース(一体化もしくは仮想化されるシステムとして)との相互関係について論じている.

書誌所在データベースと二次情報データベースの統合に向けて : モデル・システムの作成
尾城 孝一(名古屋大学附属図書館)
要旨:
文献情報の検索から原文献入手に至る一連のプロセスを効率的に展開するシステムは考えられないものか, というのが今回のレポート作成の動機である. 「書誌所在情報DB」と「二次情報DB」との統合というテーマを追求し, Model204を利用してモデル・システムの作成を行った. まず, E-Rモデルを援用し5つのファイルを設計し, 次に, 実験データを入力し, 検索するプログラムをModel204のユーザ言語によって作成した. 最後に, 文献情報センター・システムにおける統合システムの展開について若干の言及を行った.

中国語文献データベース化における漢字処理について
神田 百合枝(東京大学東洋文化研究所文献センター)
要旨:
中国語文献を電算化する時の漢字の処理法について調べた.
まず, 歴史的観点から, 米国の漢字用端末と日本の「JIS」漢字の制定について調べ, 次に, 日本の主要機関における対応などを調べた.

ローカルの雑誌管理システムと学術雑誌総合目録所蔵データ : 受入れから製本・所蔵データへの流れと学総目所蔵データ形式への交換
辻川 輝男(関西大学図書館)
要旨:
関西大学図書館において稼動中の雑誌管理システム(KULPIS)は受入れシステム, 製本管理システム, そして所蔵管理システムで構成されている. この受入れから製本・所蔵に至るデータの流れの処理方法は, 電算化を成功させる重要なキー・ポイントである. ここでは3つの間のデータの流れを整理し, 機械的処理をする場合の問題点を探る. また当館システムの所蔵データ(開始・終了方式)から学総目所蔵データ(あるもの表示)への機械的処理を試みた.

東京大学文献情報センターシステムとISSN
松野 とも子(北海道大学附属図書館)
要旨:
図書館のコンピュータによるシステム化が進むにつれ逐次刊行物の書誌調整がより大きな問題となってきており, 文献情報センターシステムと各館のシステムとが接続するためにはこれが重要な課題となる. このための一手段としてISSNを考え、その現状及び文献情報センターシステムとの関わりについて調査を試みた.

図書館 昨日、今日そして明日 : ニューメディア時代へ向けて
諸富 秀人(広島大学附属図書館)
要旨:
今日におけるコンピュータ技術・通信技術等の飛躍的な進歩が, いわゆるニューメディア時代を現出させようとしている. 図書館をめぐる今日的状況は, 「紙なし情報化社会」へ向かおうとしているかに見える. 「ゲートウェイ」というシステムは, 学術情報の流通が図書館の介在なしに行なわれる時代の到来を予想させる. この論文では, 図書館の本質・役割とは何かといういことを踏まえたうえで, ニューメディア時代へ向かう図書館の将来を展望しようと試みた.


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