出版

何ヶ月もかけて雑誌の計画をし、雑誌を出版するためのシステムやワークフローを設計し、ついに創刊を果たした今、ようやく雑誌出版の中心となる日々の作業に目を向けることができます。これには、編集作業の管理(4.1 編集作業を管理するの各節)、制作の実行(4.2 制作を行うの各節)、論文や雑誌の配布(4.3 論文/雑誌を配布する)、コンテンツの保存とアーカイブ(4.4 雑誌/論文の保存とアーカイブを行う)、雑誌のインパクトの確保(4.5 インパクトを確保するの各セクション)が含まれます。

他の章と同様に、この章の主な節はページ右上の四角の中にリストされており、興味のある節にすばやく移動することができます。

4.1 編集作業を管理する

編集長や編集チームの日々の仕事のほとんどは、編集作業の管理が中心となります。この節では、雑誌の編集作業を構成する最も重要な6つの活動に関する情報を提供します。


4.1.1 査読審査を行う

査読審査は学術雑誌出版の要です。既に査読審査を行う体制は構築済みであり(2.3.5 査読審査ワークフローを設計するを参照)、査読審査の方針も決定済みです(2.3.3.2 査読審査方針を定めるを参照)。次は計画を具体的な行動に移す番です。

編集体制の構築の一環として、ワークフローを設計し、査読審査を行うために必要な任務を出版チームや編集チームのメンバーに割り当てました。ここでは、査読審査の工程を円滑かつ効率的に行うために計画されたワークフローに従います。査読審査の間、著者とレフェリーが気持ちよく作業できるようにするためのヒントは次の通りです。

  • 著者が最初の返事を貰うまでに不当に長く待つことがないように、レフェリーに締め切りを厳守させてください。
  • 一般に、事情が複雑な場合は特に、定型的な通知書を使わずに、担当編集者がレフェリーのコメントをまとめると良いでしょう。
  • 査読に対してレフェリーに感謝することを忘れないでください。
  • 特定のレフェリーに作業を集中させないでください。編集委員やPubMed/MedlineBioMedExperts.comなどのツールを使用して同等な能力を持つレフェリーを見つけてください。
  • 原稿の内容とレフェリーの関心が一致しているほど、レフェリーの論文査読に対する関心が高くなります。
  • 編集者自らが不受理通知を書いて、論文が基準に満たない理由や対象範囲を外れている理由を説明することを強く推奨します。この場合、定型的な通知書は失礼になると思われます。
  • 選択した査読システムを使用することになるレフェリーをサポートする準備をしてください。多くのレフェリーはシステムの使用が初めてで、正しく使用するのにサポートが必要だからです。
  • 時間が経つと、レフェリーのリストを再検討したくなると思います。必要に応じて新しいレフェリーを追加し、査読依頼を常に断る者や締め切りを守らない者を削除してください。


4.1.2 編集委員の参加意識を保つ

先に述べたように、雑誌の編集員会の委員は様々な方法で継続的に雑誌を支援する「雑誌大使」の役割を果たすことになります。編集委員会の委員が常に雑誌は自分たちのものであると考えさせることが重要です。編集委員の忠誠心や参加意識を保つ方法がいくつか存在します。

  • 定期的に編集会議を開いてください 。実際に集まっても(skype会議などの)仮想会議でも構いません。
  • ニュースレターやメールを定期的に送って、現状の説明、各種統計(投稿数、ダウンロード数など)の提供、最新サービスの更新などを行ってください。
  • 集会や会議に出席する委員にイベントで使用する販促資料を渡してください。
  • 委員にレフェリーや2つの査読結果が対立した際の裁定者になってもらってください。

編集委員に継続的な支援をしてもらうのは一般に編集長の仕事です。ただし、編集助手や編集幹事が査読審査の工程で編集委員と頻繁に連絡を取っている場合は、これらの者も重要な役割を果たすと思います。営業担当も、これが適切であるとすれば、編集委員に販促資料を渡したり、各自の専門分野におけるイベント情報を教えてもらい営業活動の機会を得るなどして編集委員の参加意識を維持するのに貢献することができます。


4.1.3 編集の辞を書く

編集の辞(Editorials)は、編集者が雑誌に対する一般的な考えや特定の号や論文特集について研究コミュニティに伝える機会を提供します。このため、編集の辞では出版された論文を理解・解釈するための枠組みや文脈を設定することができます。すべての号に編集の辞がある雑誌もあれば、たまにしか掲載しない雑誌もあります。また、近刊予定号や最新号に興味を持たせたり、基礎知識を提供するために特定の分野の研究者を招待してゲスト編集者の辞を書いてもらうこともできます(この例は追加情報源を参照)。

オープンアクセスジャーナルの多くは巻号ベースで出版されないので、編集者は周年記念や主題別の論文特集など編集の辞を書くのにふさわしい機会を見つける必要があります(この例は追加情報源を参照)。

編集の辞は一般にそれほど多く引用されることはありませんが、特にタイムリーであったり、挑発的であったり、議論を呼んだ場合は頻繁に引用されます。ただし、編集の辞は雑誌のインパクトファクターにはカウントされません。


4.1.4 コンテンツを集める

創刊後すぐにでも、編集チームは論文を投稿してもらうための作業を積極的に行う必要があると思われます。たとえば、制作スケジュールや予算に見合う数の原稿を受け取っていたとしても、雑誌が対象としている研究分野の一部で論文が不足している場合があります。そのような場合、編集者は編集委員会の力を借りて、不足している分野の論文を積極的に依頼しなければなりません。それには次のような方法が使用できます。

  • 現在不足している研究分野をカバーする総説論文の投稿を知り合いの研究者に依頼する。
  • 編集委員会の委員に当該主題分野の論文の収集に責任を持ってもらう。
  • 次号の内容案内と共に「論文募集」を送付して、必要とする分野の論文を投稿するよう依頼する。
  • 該当分野の研究者に「論文募集」の手紙またはメールを送付する。
  • 該当する研究分野の論文特集を計画する。まず最初に有名な著者に参加してもらえるよう試みる。有名な著者と同じ雑誌で発表していると履歴書にプラスになるので、他の研究者に特集に参加してもらうのが容易になります。


4.1.5 特別なコンテンツを集める

主題特集号や増刊号は、雑誌の収益をいくらか向上させるだけでなく、一般にウェブサイトの訪問者も増加させます。同一主題の論文をまとめて同時に出版すると、積極的に宣伝を行った場合は特に、常に何らかの関心を引くことになります。これらの特集論文を集めるにはいくつかの方法があります。

  • 知り合いの専門家にゲスト編集者になってもらうよう依頼し、論文特集や特集号の告知方法や招待論文の執筆者について議論する。これは、雑誌の対象範囲に含まれている特定の主題が十分に取り上げられていない場合や論文の集まりが期待ほどではない場合に妥当な方法です。論文特集のタイトルには~の最前線~の研究課題に向けてが考えられます。
  • 地方会議や大きな会議のサテライト会議など小規模な会議は、論文特集や特集号の素になることがあります。事前に主催者に連絡を取り、雑誌の論文特集や増刊号として講演集を出版できないか相談してください。
  • 会議の講演要旨集を増刊号として出版するのも良いかもしれません。これは会議が終わると誰も見つけることができない冊子体の講演要旨集よりはるかに大きな視認性を著者に提供します(要旨集の例は追加情報源を参照)。

主題特集号や増刊号の論文を集めるのは編集長が担当すると思われますが、編集委員や編集チームのメンバーも参加することになると思われます。


4.1.6 インデックスサービスと連携する

タイトルには「インデックスサービスと連携する」とありますが、インデックスサービスだけでなく他の種類のデータベースサービスとの連携も含んでいます。主要なデータベースに収録されたり、インデックスされることはきわめて重要です。生物医学雑誌ではMEDLINE、人文学雑誌ではERIHなどの最高のインデックスサービスに収録されることは、雑誌が高い学術的水準にあることを著者に知らせることになります。また、雑誌の視認性も高めます(4.5 インパクトを確保するを参照)。

多くのインデックスサービスは、一定期間出版が継続されないと雑誌を評価しません。さらに、雑誌の品質が基準に達していないと収録しません。すべてのインデックスサービスやデータベースサービスは独自の収録基準を持っているので、収録申請は細心の注意を払い継続的に行う必要があります。インデックスサービスやデータベースに収録されるための短期戦略を作成することを推奨します。これには、あなたの雑誌を収録する可能性が高いと思われるデータベースやインデックスにまず申請を行い、コンテンツや評判を得てから別のサービスに申請するという戦略が考えられます。

インデックス化や収録のためにあなたの雑誌をどのサービスに申請するべきかがわからない場合は、同一または類似の分野の雑誌を調べてサービス候補のリストを作成してください。以下は検討すべき最も一般的で重要なデータベースとインデックスサービスのリストです。

インパクトファクターを得るための申請は、編集長か編集長のサポートの下に編集事務局長または編集幹事が行うことになると思われます。

DOAJ: Directory of Open Access Journals - すべての雑誌が対象

DOAJはルンド大学図書館でホストされている、おそらく最も広く知られているオープンアクセスジャーナルコンテンツのデータベースです。すべての主題分野をカバーしています。雑誌は何らかの品質コントロールがあり、フリーのオープンアクセスである必要があります。関連の基準を満たす雑誌は、SPARC Europeシールを受けます。現在、DOAJはディレクトリに収録されている雑誌のアーカイブを支援するパイロットプロジェクトに参加しています。これにより雑誌のコンテンツはオランダ王立図書館(KB)e-Depotに保存されます。

Scopus - すべての雑誌が対象

Elsevier社の製品 Scopusは、抄録データベースとインデックスサービスを兼ねたもので、およそ18,000の査読雑誌を収録し、オープンアクセスジャーナルも数多く含んでいます。あなたの雑誌がある程度の数の論文(おそよ15論文)を出版したら、Scopusについてにある「この出版物を推薦する」リンクをクリックして雑誌の収録を推薦することができます。このサービスは多くの図書館が購読しているので、所属機関の図書館員に聞けばこのデータベースについて教えてもらえると思います。Scopusは引用を記録していますので、収録されるとこのデータベースの情報を使って非公式のインパクトファクターを計算することもできます(4.5.3 インパクトを追跡するを参照)。

Ulrich’s - すべての雑誌が対象

Ulrichsweb.comは、30万を超えるあらゆる種類の定期刊行物(学術雑誌、オープンアクセス出版物、査読誌、大衆雑誌、新聞、ニュースレター、その他世界中のあらゆる逐次刊行物)に関する目録情報と出版者情報を提供する権威ある情報源です。また、印刷版とオンライン版の逐次刊行物データに関する公開されている最も包括的な情報源でもあります。

DOAJ収録のタイトルはUlrich'sにも収録されます。

あなたの雑誌を収録してもらうには、http://www.ulrichsweb.com/ulrichsweb/areyou.aspにアクセスしてください。

Google scholar - すべての雑誌が対象

Google Scholarは無償でアクセスできるウェブサーチエンジンで、数多くの出版フォーマットや分野にわたる学術文献のフルテキストをインデックス化しています。学術出版社や学会向けのページポリシーや技術情報をhttp://scholar.google.com/intl/en/scholar/publishers.htmlで見ることができます。

Open J-gate - すべての雑誌が対象

Open J-Gateは現在4000を超える英語で書かれたOAジャーナルのメタデータを収集し、出版社のウェブサイトにあるフルテキストにシームレスにアクセスする機能を提供しています。Open J-Gateは査読誌の他に、業界誌・紙などの専門雑誌もカバーしています。連絡を取るにはhttp://www.openj-gate.com/Footer/Contact.aspxを参照してください。

PubMed Central/PubMed - 生物医学雑誌が対象

ウェブサイトから引用すると「PubMed Centralは、米国国立衛生研究所(NIH)が提供する生物医学および生命科学分野の雑誌文献の無料のデジタルアーカイブです」。

PubMed CentralとMEDLINEを混同してはいけません。PMCは収録基準はありますがアーカイブです。MEDLINEは品質基準を満たす雑誌のみを収録するインデックスサービスであり、雑誌はランク付けされてインデックス化されます。

Philosopher’s Index - 哲学に関するコンテンツを持つ全ての雑誌が対象

Philosopher’s Indexは、現在40カ国以上の622の雑誌を収録し、1年に4回インデックスを更新しています。連絡を取るにはhttp://www.philinfo.org/#contactを参照してください。

CSA Sociological abstracts - 社会学に関するコンテンツを持つ雑誌が対象

CSA Sociological Abstractsは、社会学および社会学と行動科学に関連する分野の世界中の文献の抄録を作成し、インデックス化しています。

PsychInfo - 心理学に関するコンテンツを持つ雑誌が対象

PsycINFOは、1800年代から現在までの心理学文献を体系的に収録しています。あなたの雑誌を収録してもらいたい場合は、http://www.apa.org/pubs/databases/psycinfo/publishers/index.aspxを参照してください。

ERIH: European Reference Index in the Humanities - 人文学の雑誌を対象

現在のところ、ERIHは人文学の15分野におけるヨーロッパのトップジャーナルの指標となるインデックスです。その目的は、ヨーロッパのあらゆる言語で書かれている学術雑誌で発表されているヨーロッパのトップレベルの品質の人文学の研究を特定し、より多くの視認性を得ることです。ERIHでは、ヨーロッパ中の助成機関、学会、専門研究センターから受け取った情報を基に15名からなる専門家パネルがふるいにかけてまとめるという全ヨーロッパ規模にわたる完全な査読審査が行われています。

収録申請をするには、http://www.esf.org/research-areas/humanities/erih-european-reference-index-for-the-humanities/erih-feedback-form.htmlを参照してください。

ISI Thomson/インパクトファクター

インパクトファクターに対する個人的見解が何であろうと、あなたの雑誌がこの種のインパクトを重視する分野の雑誌であれば、インパクトファクターを計算して付与しているISI Thomsonのインデックスサービスに申請するべきです。申請の前に、ISI Thomsonはあなたの雑誌がコンテンツを定期的に出版していることを要求します。したがって、おそらく少なくとも出版後2年間は申請をしない方が良いでしょう。また、申請の時点で質の高い論文を出版していることが重要です。それが評価されるからです。収録には雑誌がオンラインであることが推奨されています。収録が却下された場合は、再申請まで2年間待つ必要があります。ISI ThomsonによるWeb of Knowledgeの収録基準の詳細な情報をhttp://isiwebofknowledge.com/benefits/essays/journalselection/で見ることができます。

収録が承認されると、あなたの雑誌は3年後に始めてインパクトファクターを受け取ります。インパクトファクターは、前2年の引用数に基づいているからです。



4.2 制作を行う

制作はおそらく学術出版社にはあまりなじみのない作業分野です。小さな雑誌では編集長が一人で制作を行うことができるかもしれませんし、その例もたしかにありますが、おそらく制作を管理する製作担当編集者を採用することになると思います。この種の作業には細部への目配りも必要ですが、製作担当編集者は校正作業の間、著者と頻繁に連絡を取るので、技術スキルに加えて、社交性も必須です。

制作作業を行う際に、作業をできるだけ容易にするために覚えておくことがあります。以下に主な検討事項を提案します。

主な検討事項:

  • 著者にどの程度柔軟性を与えるのか予め決めておいてください。校正処理完了後に、著者がさらに変更を求めてきた場合、この変更を認めますか?
  • 言語校閲編集を行いますか? 行う場合、どの程度行いますか(小規模ですか、大規模ですか)? これについての情報を必ず執筆要項に含めてください。
  • 多くの研究者は、間違いなく最も時間がかかる作業の1つがレイアウト編集であることを知っています。タイプセッターを採用すると経費はかかりますが、時間を大幅に節約することができ、洗練された外観が保証されます。あなたにとっての最適な解決策を検討してください。


4.3 論文/雑誌を配布する

2.4.4 制作ワークフローを設計するで示した制作工程図は、原稿や雑誌の制作の最終工程の1つが第三者への配布であることを示しています。クリエイティブコモンズライセンスやその類似ライセンスを使用しているオンライン・オープンアクセスの雑誌にとって、雑誌の配布対象となる第三者はほとんどがインデックスサービスとデータベースサービスです。たとえば、雑誌がPubMed Centralに収録されている場合、その要件に応じてデータベースにファイルを転送する必要があります。ただし、ほとんどのインデックスサービスやアーカイブ、その他のサービスはデータをハーベストしていきますので、配布のためにあなたが特に何かをする必要はありません。

配布を確実に行ったり、配布のニーズを把握したりすることは製作担当編集者が担当することになると思います。タイプセッターを雇っていればファイルの第三者への転送をしてもらえます。ただし、その指示をしたり、第三者からの連絡窓口になるのはあなたです。


4.4 雑誌/論文の保存とアーカイブを行う

2.1.3 アーカイブと保存の設定を行うで、様々な可能性を検討して、あなたの雑誌に最もふさわしいと思うソルーションを選択したはずです。ソルーションを選択し、PorticoやCLOCKSSなどの機関と契約を行った後は、随時アーカイブと保存を点検してこのソルーションを再検討するべきです。これは技術支援担当か製作担当編集者が行うことになるでしょう。

雑誌を永久に利用できるようにするために選んだ標準的な保存法に加えて、著者の中には所属機関のリポジトリやその他のリポジトリやアーカイブに論文をデポジットするための支援を要求する者があるかもしれません。そのような支援を著者サービスとして提供している雑誌もあります。再利用を許可するクリエイトコモンズライセンス(CCL)を採用していれば、著者は論文の最終版を容易にデポジットすることができるので、同一論文の複数の版が引用されるという不安を避けることができます。CCLの使用は再利用権が明確に確認できるので、図書館員が研究者の代わりに資料をアーカイブすることも容易になります。再利用権の許可を貰うために問い合わせる必要がないので、仕事が楽になるからです。


4.5 インパクトを確保する

雑誌とその論文はインパクトを生み出すために出版されます。インパクトは様々な形態をとります。たとえば、論文への引用、臨床や実作業への適用、対象分野のパラダイムや研究方法の変革への貢献などです。したがって、あなたの雑誌がインパクトを生み出すことを保証することは意識的に検討し、計画すべき重要な作業です。

あなたの雑誌のインパクトを確保するには、主に3つの活動を行う必要があります。雑誌の売り込み(4.5.1 雑誌を売り込む)、デジタル世界の幅広い読者への雑誌の配布を助け、視認性を高め、検索を容易にするデータベースやアグリゲータなど、雑誌に至る複数のエントリーポイントの作成(4.5.2 複数のエントリーポイントを作成する)、雑誌の成功度を測るインパクトの追跡(4.5.3 インパクトを追跡する)の3つです。

以下で見るように、これら3つの活動のアウトプットの多くは活動をさらに増幅させるためのインプットになります。たとえば、雑誌の売込みにより期待されるアウトプットは、雑誌の認知、投稿の増加、忠実な読者です。これらを追跡(インパクトの追跡)し、役に立つ統計を作成(インパクトの追跡のアウトプット)すれば、将来、営業目標や営業活動を改定するためのインプットとなります。

この章で述べる様々な活動のほとんどは、任命された営業担当か営業関連の作業を行うことになったチームメンバーにより行われることになります。営業活動全体やその一部(会議プログラムに掲載する広告のデザインなど)を第三者に外注することもできます。この役割を誰が担うにしても、営業担当は他のメンバーと独立に働くものではありません。インパクトを確保するための活動は、編集チーム(営業を行いインパクトを生み出す対象となるコンテンツについて議論できます)や製作チーム(新たに開拓した営業チャネル(たとえば、EBSCO hostなどのアグリゲータ)に論文や雑誌を配布するのに必要です)と協調して行うべきだからです。また、営業機会を生かすために常に出版スケジュールを頭に入れておかなければなりません。したがって、営業担当責任者は他のチームからの情報を入手することになります。


4.5.1 雑誌を売り込む

この節の目的は営業担当役員のなり方を教えることではありません。あなたが一人で、あるいは何らかの助けを借りて行うことができる、いくつかの重要なタスクを紹介することです。営業のこつや営業キャンペーンについて詳しく知りたい場合は、企業家を念頭に置いて書かれていますがあなたにも役に立つと思われる数多くの有用な本やツールがあります(追加情報源を参照)。

営業とは、人々にあなたの雑誌を知らせ、雑誌を読んだり投稿したりすることの価値を知らせるために行う具体的な活動を意味します。営業を通じて、非常に多くの人があなたの雑誌とその論文を知ることになり、認知度が上がります。

雑誌の出版で利益を得ることが目的であろうとなかろうと、少なくとも、雑誌が成功するためには潜在的な投稿者や読者にあなたの雑誌を知ってもらうことが必要です。「森で木が倒れたとしても、誰もそれを聞いていなければ本当に木が倒れたかはどうかはわからない」という古い言葉があります。あなたの雑誌には最高レベルの研究者が書いた論文が掲載されているかもしれません。しかし、それを誰も知らなければ引用されることはなく、時間が経つと誰もあなたの雑誌で発表しなくなるでしょう。

雑誌の一般的な成功だけでなく、特にオープンアクセスの場合は自分の論文が広く配布されることを著者は期待するので、営業活動は重要です。つまり、雑誌の売り込みは著者に対する重要なサービスなのです。

購読ベースの雑誌では、営業活動は図書館に対して重点的に行われます。これらの機関の購読により収益が上がるからです。しかし、オープンアクセスの雑誌では、営業活動はほとんどすべての場合、著者や読者になることが期待される研究者に直接行われます。雑誌掲載の個々の論文に注目を集めるための営業活動もあります(プレスリリースなど)。

場合によっては、学術コミュニティ以外の読者に雑誌を売り込むことも良いでしょう。オープンアクセス出版に備わる価値の1つは、実務家や政治家、産業界、一般大衆など、研究結果に直接アクセスすることに興味を持つすべての人への配信を容易にすることだからです。

効果的なメッセージを選択する

効果的なメッセージは対象となるグループのニーズと嗜好に訴えるはずです。雑誌の場合、雑誌を売り込むのは読者を獲得し、投稿を勧めるためです。もちろん、両者のメンバーは大部分が重なります。Björk and Holmström (2006)は、著者が発表の場を選ぶ背景にある8つの主要な要因を指摘しました。

  • 出版物の業績上の価値(格式)
  • 研究者や実務家に対するインパクト(読者数)
  • 査読審査の品質(パフォーマンス)
  • 出版遅延(パフォーマンス)
  • 投稿却下率(パフォーマンス)
  • 雑誌のサービスレベル(基盤)
  • 雑誌の技術的特徴(基盤)
  • 著者課金(基盤)

これらの要因はあなたの雑誌の潜在顧客にどんな情報がアピールするかについての手がかりを与えます。あなたの雑誌の長所を幅広い顧客に伝えるために、強調したい点を選んでメッセージを作成する際には、収集・追跡するインパクト統計(4.5.3 インパクトを追跡するを参照)を利用することができます。たとえば、新しく創刊された雑誌はその分野の一流の地位にはありませんが、出版チームと編集チームが魅力的な雑誌基盤を構築したり、うまく宣伝すれば競争上有利な点になるパフォーマンス能力(投稿から最初の判定までの時間が短いなど)を示したりすることができるでしょう。


4.5.1.1 営業目標を設定する

一般的には、営業目標は何よりもまず読者と投稿を呼び込むことです。第2に、忠実な読者層と著者として貢献するグループの構築を営業は支援するべきです。ほとんどどんな営業入門書にも書かれているように、新しい「顧客」を呼び込むために必要な努力やお金は、既存の「顧客」を維持するコストに比べてはるかに大きいからです。

雑誌を売り込むにあたっては、これら基本的な法則に加えて、もっと具体的な営業目標を設定することも勧めます。小さな出版社の利点は、何といっても、状況にあわせて自由に営業活動を行える立場にあり、大規模出版社の多くが採用しなければならない月並みなアプローチを取る必要がないことです。これを実行するには、読者層と雑誌コンテンツに関する理想の将来像について慎重に検討することです。ここでは謙遜は不要です。きわめて野心的な目標であっても、段階的活動や下位目標に分割することで、最終的にはあなたが思い描く成功をもたらすことができるからです。

営業目標は次のような例が考えられます。

例 1:

対象分野で最も注目を集めている最新の研究が中国から現れたが、あなたの雑誌は中国からの論文をほとんど出版していない場合の目標: 今後18ヶ月に中国の読者数と投稿数を5%増加させる。

例 2:

ウェブログ(Google Analyticsなど)では、読者が南北アメリカ、アジア、ヨーロッパ、アフリカと世界中に幅広く存在することを示しているが、訪問者の総数や国数が期待より少ない場合の目標: 今後6ヶ月でトラフィックを33カ国から75カ国に増加させ、ウェブサイトの訪問者数を同一期間比較で現状から月1万件に増加させる。

例 3:

雑誌の刊行目的と対象範囲では対象とする専門分野で5つの具体的な下位領域を記載しているが、そのうち4つの領域の原稿しか受け取っていない場合の目標: 今年中に主題Xに関する論文を少なくとも5本集める。

これらの営業目標には目標だけでなく目標を達成する期限も含まれていることに注意してください。すなわち、成功か否かを測定可能にする2つの指標(定量的指標と定性的指標)が含まれています。

目標を設定する利点は、(a) 目標達成に適した営業チャネルを特定する(また、適さないチャネルをすばやく認識する)、(b) 営業活動の実行後にその有効性を評価するためのよいツールとなることです。


4.5.1.2 営業チャネルを選択する

出版社が従来行ってきた活動(会議への参加など)から新たに登場した電子的手段(Twitterなど)まで、現在では利用可能な営業チャネルは拡大しています。

営業活動や営業チャネルの選択は主に3つの基準により決定されます。

  1. その活動やチャネルが営業目標に適しているか?
  2. その活動やチャネルが想定顧客にどの程度近づくことができるか?
  3. その活動やチャネルが利用可能な資源(時間、お金、能力)で利用できるか?

営業チャネルの検討を助けるために、「オープンアクセスジャーナルのための営業チャネル候補」と題した表を追加情報源に用意しました。表では現在使用されている一般的な営業チャネルの概要、その利点、利用に適する条件、その限界、活用方法を提供しています。

  • 口コミ
  • パーミッションマーケティング
  • メールアラート
  • 会議展示
  • メーリングリスト
  • その他の会議営業
  • 検索エンジン最適化
  • RSSフィード
  • Google AdWords
  • 広告の交換
  • プレスリリース
  • オンライン記事の投稿
  • ブログ
  • ウェブベースのソーシャルネットワーキング
  • Twitter
  • リストサーブ

スパムについて

スパマーを追跡し、スパム情報サービスを提供しているSPAMHAUSは、スパム(SPAM)を「未承認の大量メール(UBE)」と定義しており、さらに、「未承認とは、受信者が送付されたメッセージに検証可能な許可を与えていないことを意味する。大量とは、そのすべてが実質的に同一の内容であるメッセージの大規模なコレクションの一部としてメッセージが送られることを意味する。」と述べています。

SPAMHAUSによれば、未承認かつ大量という2つの条件を満たすメッセージがスパムです。この定義は多くの人々がスパムだと考えているものを反映しています。すなわち、必ずしもその内容に関するのではなく、情報が送られる形式に強く関係します。

立法化の試みがいくつか行われています。したがって、大量のメールを送る場合は、絶対にこれらの法律に違反しないことが重要です。ただし、法律を順守するのと同じくらい重要なことはあなたが送った営業目的のダイレクトメールをあなたの顧客がどのように受け止めるかです。

すべてのインターネットサービスプロバイダはUBEを禁止しており、メール一括送信サービスを提供している会社(Constant Contactなど)の多くもスパムを禁止しており、顧客がサービスを悪用していないことを保証するために定期的に検査していることに注意するべきです。

過失によるスパムを避けるもっとも良い方法はパーミッションマーケティングと呼ばれる方法を使用することです。パーミッションマーケティングを行うためには、読者や著者が情報を受け取ることに同意するための方法を用意します。コンテンツ公開時に電子アラートを送付することをクリックして登録するボタンを用意するのは良い方法です。オンラインシステムを使用している場合は、パーミッションマーケティングとして利用できる登録システムが用意されていると思います。読者が雑誌に関する情報を受け取ることを自発的に登録すれば、登録時に説明した限度内で登録読者に情報を送る許可をあなたは得たことになります。


4.5.1.3 営業計画を作成する

営業計画は、営業目標とそれにふさわしい営業活動や営業チャネルを結びつけるのを助けます。一般に、計画には全体的な目標とそれを達成する方法(すなわち、どんな活動を行い、チャネルを使用するか)を含めます。計画に営業活動の予算や日程表を含めることも役に立つでしょう。

4年に1度しか開催されない世界会議のような珍しいイベントや大きな議論を巻き起こしそうな論文の雑誌への掲載はまたとない営業機会を提供します。営業活動は通常、編集判断と密接に連携して行います。たとえば、雑誌の対象範囲に含まれる主題分野に関する特集号は、この「イベント」を利用することにより雑誌を広く売り込む絶好のチャンスを提供します。

計画はできるだけ詳細なものにする一方で、柔軟性の余地を残してください。たとえば、会議における雑誌の営業を計画する場合は、どの会議でどのような方法(たとえば、会議バッグに放り込む、展示ブースを設けるなど)を取るかを決めるようにしてください。ただし、突発的な営業の準備もしておいてください。おそらくそのための予算措置も必要でしょう。たとえば、営業に適した良い会場で予期していなかった会議が開催されることを発見した場合などに、突発的な営業が必要になるでしょう。訪問者や投稿の大きな落ち込みに突然気付いた場合などは予定外の活動も必要になるでしょう。そのような出来事にはできるだけすばやく対応して悪い傾向を止めることが一番です。

主な検討事項:

  • その営業機会は具体的な営業目標に合致しますか?
  • 潜在顧客はどこにいますか?
  • 予算はどうなっていますか?
  • 他の雑誌や出版窓口に比べてあなたの雑誌独自のセールスポイントは何ですか?
  • 学術コミュニティ以外の読者を呼び込みたいですか?
  • どんなメッセージが主要な顧客にアピールしますか?
  • 学術コミュニティに適した「売り込み」メッセージを作成しましたか?
  • スパムだと受け取られかねない営業手法を避けていますか?


4.5.1.4 営業報告を作成する

毎年簡単な営業報告あるいはその年の雑誌の状況を示した一般的な報告書を作成することは有用だと思われます。報告書では雑誌の営業計画や事業計画に沿ってどんな活動を行ったかを簡潔に説明してください。また、営業努力に関連づけることができるどんな結果が観察されたかについても注記してください。さらに、(もしあれば)雑誌のインパクトファクター、Google Scholarなどの情報源に収録された引用、出版された論文数、著者や読者の種類や地理的な広がり、投稿から最初の判定までの時間、判定から実際の出版までの時間といった主要な指標をレビューするのも良い考えです。

この営業報告や雑誌年報は、雑誌を成長させた将来のあなたと編集・出版チームのための記録となります。また、あなたの雑誌と仕事に今後も関与してもらうために編集委員会の委員に送ることもできます。

報告書は編集チームのメンバーの協力を受けて、営業担当が作成することになると思われます。


4.5.2 複数のエントリポイントを作成する

イベントに合わせて行う雑誌へのトラフィックを生み出す営業活動に加えて、雑誌に対する恒久的なエントリポイントを増やすための仕事もするべきです。オープンアクセスジャーナルは非常に広範囲に配布できる可能性を持っています。これを実現するためにはあなたの雑誌ができるだけ多くの情報源から利用できなければなりません。すなわち、複数のエントリポイントを作成する必要があります。

訪問者は雑誌のサイトに汎用サーチエンジン(Googleなど)を通じて、あるいは直接、あるいは他の情報源のロングテールからやってくる可能性がありますが、URLを知って直接あなたのサイトに来る人は少数派にすぎないと思われます。大多数の人は他の場所で情報を探していて偶然あなたのコンテンツを見つけやってくることになります

追加情報源で「オープンアクセスジャーナルへのエントリポイント候補」という表をダウンロードすることができます。この表には多数のエントリポイント、その概要、その利点、その例、主な検討事項、利用法を含んでいます。新しいエントリポイントが常に登場しているので、このリストは時折更新されることに注意してください。取り上げられている一般的なエントリポイントには以下があります。

  • CrossRef
  • アグリゲータ
  • インデックスサービス
  • ディレクトリ
  • サーチエンジン
  • メタデータハーベスタ
  • 図書館コレクション
  • データベース
  • Twitter
  • ブログ


4.5.3 インパクトを追跡する

インパクトファクター

長年、論文の価値ひいては研究者や研究が行われた研究所の価値は、論文が掲載された雑誌のインパクトファクターで評価されてきました。インパクトファクターは、現在はISI Thomsonが同社のWeb of Scienceを通じて管理している計量書誌学的パラメタです。Web of Scienceは引用を追跡して、同一分野の他の収録雑誌に対するインパクトファクターとその他の要因に基づいて雑誌をランク付けしています。

インパクトファクターの信頼性と妥当性に対しては多くの議論や研究で疑問が投げかけられましたが、依然としてほとんどの学門分野や欧州と北米の国においてインパクトファクターが品質を評価する重要な指標であると考えられているのは事実です。したがって、少なくとも他の指標が同等の重要性を得るまでは、ISI ThomsonのWeb of Scienceに収録されることを意識して作業するべきです。

4.1.6 インデックスサービスと連携するで述べたように、新雑誌は少なくとも最初の3、4年はインパクトファクターを持つことができません。通常、ISI Thomsonは、その雑誌が収録に値するかを判断するために申請後一定の期間その雑誌を追跡するからです。ISI Web of Scienceへの収録が承認されると、雑誌には3年後にインパクトファクターが与えられます。これは申請後1年目と2年目の雑誌の引用に基づいて計量書誌学的な計算を3年目に行うからです。

ISI Thomsonの1つの限界は、インデックスリストに収録されている雑誌で行われた雑誌論文の引用しか捕捉していないことです。したがって、検出されていない引用が存在すると思われます。

雑誌が持つ高いインパクトファクターやISIランキングの引用は、著者を引きつけるセールスポイントして使用できます。少なくとも、ISI Thomsonに雑誌が承認されれば、雑誌がインデックスに収録されていることに言及して、近いうちに雑誌がインパクトファクターを持つことを潜在著者に知らせることができます。

インパクトを測定する代替方法

インパクトファクターは多くのオープンアクセスジャーナルに難題をもたらします。これらの雑誌は新しいからです。あなたはジレンマに直面していることに気付くでしょう。著者は(できれば高い値の)インパクトファクターを持つ雑誌で発表するのを好みますが、良い論文を出版しないと雑誌はインパクトファクターを得るための申請ができないのです。このインパクトファクターを得るまでの暫定期間には、別のツールを使用して雑誌が収録された際にどの程度のインパクトファクターが予想されるかを示す情報を抽出することが役に立つと思われます。

引用を測定する代替手段にはScopusとGoogle Scholarがあります。Scopusは抄録・引用データベースであり、引用を追跡してSCImago雑誌ランキング (SJR)にしたがって雑誌をランク付けするポータルサイトSCImagoにデータを提供しています。Scopusは、生命科学、健康科学、自然科学、社会科学をカバーしています。Scopusはオープンアクセスフレンドリーでもあります。このガイドが書かれた時点(2009年)において、Scopusは1200誌以上のオープンアクセスジャーナルをデータベースに収録しています。あなたの雑誌がScopusに収録されると、ウェブサイトにScopusのバナーを付けることができます。

Google Scholarも引用尺度を提供しています。また、同一原稿の異なる版に対する引用を捕捉する(たとえば、出版社の最終版だけでなくアーカイブコピーへの引用も捕捉)よう構築されています。Google Scholarは図書や報告書など雑誌以外のソースからの引用も捕捉します。この理由のため、ある種の分野(人文学など)では、Google ScholarはISI Thomsonより優れたツールを提供する可能性があることを示す研究もあります。

読者の中には、BioMed Centralの「非公式インパクトファクター」をご存知の方がいるかもしれません。これはISIとは違う追跡サービス(主にScopus)のデータを使用してISIと同じ公式で計算されています。

他の形態のインパクト

ありがたいことに、電子出版の時代はインパクトを測定する方法や各分野で意味を持つインパクトに対してもインパクトを与えています。これに関連して興味深いトレンドが2つあります。第1に、利用が引用と同じくらい関心をもたれるようになっていることです。第2に、計量書誌学が雑誌レベルではなく論文レベルでインパクトを測定する方向に向かっていることです。

2009年、PLoS(Public Library of Science)は、インパクトを測定する論文レベルの指標セットを導入しました。これにはインパクトに貢献するこれまでとは異なる数多くの要因が含まれています。これはあなたの雑誌が追跡可能と思われるアイテムのリストを提供します。実際、PLoSの開発したものはすべてオープンソースであり、他の出版社でも採用することができます。

インパクトを示す代替要因の例には次があります。

  • 利用データ
  • ページビュー
  • ソーシャルネットワーキングリンク
  • 報道機関のカバー率
  • コメント
  • 利用者の評価
  • ページランキング
  • 被リンク
  • ブログカバー率
  • 登録ユーザ/読者数

これらの情報はいずれもあなたの雑誌に掲載されている著者はもちろん、おそらくは著者を評価する者にとっても興味深いものだと思われます。対象コミュニティにあなたの雑誌が重要な情報源であると主張するのを裏付けるために様々な統計や情報を提供することは営業活動をサポートすると思われます。ほとんどの出版社は、中でも、高いインパクトファクター、広範な配信(たとえば、2008年に125カ国の研究者に読まれた)、ランキング上位(たとえば、ISI Thomsonによる微生物学におけるランキングが第3位)の3つを強調します。

利用統計は営業目標の設定にも利用できます。利用統計は雑誌が対象顧客に届いているか、どの程度届いているかを示すからです。同時に、統計の追跡は営業目標の達成に向けた進捗状況の評価も可能にします。

主な検討事項:

  • ユーザに統計を提供する際には注意をしてください。利用統計は利用水準の指標を与えるだけです。正確な測定値ではありません。一方で、ロボットはインターネットを動き回ってランダムに資料をダウンロードします。あなたの論文や雑誌がヒットしたのは意図したものではないので、利用統計は過大なものになります。他方で、論文をクリエイティブコモンズライセンスで出版した場合は、論文がインターネット上の別の場所に投稿される可能性があり、そこからのダウンロードを追跡することはできません。これは利用統計が利用を過小評価していることになります。
  • 利用統計において不要なデータを削除したい場合は、SUSHI(Standardized Usage Statistics Harvesting Initiative)やCounterへの参加を検討してください。
  • 「もっともアクセスされた」論文や「もっとも最近出版された」論文を読者に通知するサービスは現在では一般的なものになっており、論文の著者や読者に好評のように思われます。
  • Google Analyticsなどのウェブログサービスを使用すると、利用情報の照合や分析作業を支援することができます。ウェブログはあなたの雑誌をホスティングしているサーバやGoogle Analyticsなどのサービスにより作成される記録で、あなたの雑誌が訪問された回数や使用ブラウザ、アクセス国や都市などの情報を追跡します。利用するウェブログが統計を見たい期間を変更できれば便利です。ここでも、実際の利用や配信を解釈する際には注意が必要です。ウェブログもロボットによる訪問を捕捉するからです。


4.6 雑誌統計を追跡する

4.5.3 インパクトを追跡するで説明した利用統計に加えて、一般に雑誌のパフォーマンス統計も追跡されます。この統計には以下が含まれます。

  • 却下率
  • 投稿から最初の判定までの時間
  • 投稿から出版までの時間(受理された場合)
  • 受理から出版までの時間

通常、著者は投稿前にこの情報を求めますので、この情報をウェブサイトに載せるか、請求に応じて提供するかを選択します。後者の場合、そのような問い合わせには編集局に届いた他の質問と共に編集助手か編集幹事が答えられるようにしておくべきです(5.4 問い合わせに回答するを参照)。

出版システムやプラットフォームの多くは自動的に統計を取得しており、容易に報告書を作成することができます。

これらのパフォーマンス統計は、その値が良ければ、営業資料や潜在著者に向けたメッセージに使用することができます。


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