オープンアクセスジャーナル出版のためのオンラインガイドへようこそ

オープンアクセスジャーナル出版のためのオンラインガイドは、独自にオンラインアクセスジャーナルの出版を計画している研究者等の小グループを支援する実践的な情報やツールを提供します。本ガイドは、スウェーデン国立図書館Nordbibの支援を受け、Co-Action Publishingルンド大学事務局が作成しました。

本ガイドを使用するにあたっては、まずこのページを読んでください。本ガイドの概略を理解するに役立つ重要な情報が含まれているからです。

本ガイドについて

本ガイドはオープンアクセスの学術雑誌の出版に焦点をあわせています。ここで「オープンアクセスジャーナル」とは、特定の雑誌名の下に出版される査読審査を受けた学術論文の出版物を意味します。

オープンアクセスジャーナル出版のためのオンラインガイドは、ウェブベースの動的な文書であり、ユーザは興味のある特定の領域にすばやくアクセスすることができます。各ページには同一の主題を扱う追加情報源へのリンクが含まれています。この情報源には、既存の文書やウェブサイト、あなたの雑誌に適用可能なツールやテンプレート、このガイドで提供する情報の実装方法を示す他の雑誌の編集チームによる実例やベストプラクティスがあります。また、可能な限り、冗長な文書の代わりに表やグラフ、図、チェックリストを使用しています。

本ガイドは成長する文書です。各ページの下にある「あなたのベストプラクティスをお寄せください」機能を使って、皆さんのベストプラクティスや経験を投稿してください。あなたの経験はきっと他の人の役に立つはずです。また、リンク切れを発見した場合は、ページ左側の「連絡先」メニューをクリックすると現れる連絡フォームを使って連絡してください。

システムとしての出版

理想を言えば、私たちは本ガイドを順番に行うことができる手順表の形で書きたいと思いました。しかし、学術雑誌の創刊や出版にそのような整然としたシステムは適しません。システムは数多くの活動で構成されています。この中には、明らかに連続して行われるものもいくつかありますが、一般的には多くの活動が同時に行われる必要があるからです。さらに、システムに含まれる活動は互いに連動しており、ちょうど時計の歯車のように、1つの活動の出力が別の活動の入力になっています。大規模な出版社は出版システムを構成する様々な活動を個別に管理する複数の部門で構成されていますが、学術出版社や小さな出版チームである皆さんは様々な活動の間を行ったり来たりすることになるでしょう。

出版システムは複雑ですので、小さなチームは圧倒されるかもしれません。そこで私たちはどんな活動を行う必要があり、それを誰が行うべきであり、それが他の活動とどのように関係するかを理解することが重要であるという仮定に基づいて本ガイドを作成しました。本ガイドを読むと、各セクションが互いに行きつ戻りつ参照されていることに気付くでしょう。

方法

システムの複雑性を完全に把握すれば、システムの様々な活動が互いにどのように連動しているかを明確に理解できることにもなります。そこで、私たちはIDEFØモデル化ツールを適用しました(たとえば、ソフトウェア技術支援センターのRobert P. Hanrahanによる“IDEFプロセスモデル化手法(The IDEF Process Modeling Methodology)” http://www.stsc.hill.af.mil/crosstalk/1995/06/IDEF.asp を参照)。このモデル化ツールは当初、技術システム用に作成され、その後ビジネス・リエンジニアリングに利用されましたが、Bo Christer Bjørkの論文(自身のウェブサイト、科学コミュニケーションのライフサイクルモデルで公開)やHoughton等によるJISCへの2009年度報告書 "学術出版の代替モデルの経済的意味: 費用対効果調査"において出版にも適用されました。

このモデルの中心は、システムを構成する様々な活動の特定、入力から出力への変換を支援する入力、出力、メカニズムの特定、この変換に対する制御です。このモデルは、出力が他の活動の入力になる時点を示すことなどにより各活動の連携計画を立てることもアナリストに要求します。

本ガイドの使い方

本ガイドに含まれるアイデアや情報をすべて実装している出版社はほとんどありません。読者のニーズ、スキル、経験は様々でしょうから、本ガイドは必ずしも最初から最後まで読み通す図書のようには書かれていません(実際に読み通せば役に立つとは思います)。まずこの入門ページを読むことを勧めますが、その後は、ナビゲーションツールを使って各自が興味を持つ活動(またはトピック)を扱うページに飛んでください。

画面の左側には常に、本ガイドの主要な5つの章: 計画、準備、創刊、出版、管理、に導くメニューがあります。各章は複数の節で構成されます。各章の上部にあるボックスにその章に含まれる節の一覧が示されています。ボックス内のリンクをクリックすると該当する節に飛ぶことができます。興味のある情報までページをスクロールして見ることもできます。各節の右上には、章の最初に戻るためのボタンがあります。

役割

本ガイドは「あなた」に向けて書かれており、「あなたの雑誌」について言及しています。そして、ほとんど場合で、あなたがこれから創刊する(すでに創刊した)雑誌の編集長であると仮定しています。おそらく雑誌の編集や出版には他の人が手を貸してくれると思います。本ガイドでは、既存の出版社で見られる一般的な数多くの役割について言及します。あなたはこれらの役割をすべて自分一人で担うこともできますし、各々を別の人に割り当てたり、チームのメンバーで分担したりすることもできます。これらの役割をどのように任命するかはあなた次第です。

編集長(Chief Editor) - 編集長は、雑誌編集における指導的な地位であり、雑誌の学術上・編集上の品質、編集委員会や編集チームに関する全ての責任を負います。

編集委員(Associate Editor) - 編集委員は、編集長と共に雑誌内容の管理を行います。

編集助手(Editorial Assistant) - 通常、学術出版社では大学院生や若手研究者に雑誌発行の手伝いをしてもらっています。編集助手に問合せの処理や査読審査中の原稿の処理を担当させることもできます(例えば、編集長が査読者に指示をし、編集助手が査読依頼や原稿を送付する)。

編集幹事(Managing Editor) - 通常、編集幹事は編集助手と同種の作業を行いますが、編集長と共により高次の決定に関与することが多く、雑誌の財務などの管理業務に参加する場合もあります。

制作担当編集者(Production Editor) - 雑誌を出版する上で最も大変な仕事の1つに制作過程の管理があります。これは一般に制作担当編集者により行われます。この役割をあなた自身が担当することもできますが、通常は、しっかりとしたIT技術を持つ若手研究者や大学院生が担当します。

原稿整理担当編集者(Copyeditor) - 原稿整理担当編集者は、原稿が正しい引用システムを使用しているか、雑誌指定のスタイルやレイアウトに準拠しているかを検査して修正を行います。また、原稿整理担当編集者は、編集者の決定に基づいて、様々な校正作業を行うこともあります。

レイアウト担当編集者(Layout Editor) - レイアウト担当編集者は、図や表を含むオリジナル原稿を論文として構成したり、必要なリンクの作成や出版に使用する様々なフォーマットの原稿の準備を担当します。

タイプセッター(Typesetter) - タイプセッター(DTPオペレーターまたはWebデザイナーに相当)はレイアウト処理や原稿を適切なフォーマットに変換する作業を行う外部パートナーです。タイプセッターは原稿整理を行ったり、PubMed Central(医学雑誌の場合)やその他のアーカイブなどの第三者へ雑誌を配信したりすることもあります。

技術支援担当(Technical support person) - 名前が意味するとおり、ウェブサイトの構築やドメインやURLの設定、出版プラットフォームの構築など、雑誌に関する技術上の問題を処理する役割を担当します。

営業担当(Marketer) - チームの誰かに雑誌を世間に知らせるアウトリーチ活動を担当させるべきです。これはおそらくチーム全体で分担する役割でしょうが、外注することもできます。また、編集長はコンテンツ獲得に重点的に取り組む場合が多いので、編集長が自ら行うことになるかもしれません。

広報担当(PR Person) - 雑誌に関してプレスリリースを発行したり、公的なコミュニケーションを取りたい場合に必要です。

財務担当(Financial Officer) - 雑誌が何らかの金融取引を行う場合、販売収入の徴収やインボイスの発行、銀行口座の管理、必要に応じた関係者(出版チームなど)への報告などを担当する財務担当者を指名することになります。

本ガイドの制作者と資金提供

オープンアクセスジャーナル出版のためのオンラインガイドは、Co-Action Publishingルンド大学事務局の共同プロジェクトとして始まりました。両者は、北欧の図書館プロジェクト、オープンアクセス出版に向けた学術雑誌の支援(NOAP: Aiding Scientific Journals Towards Open Access Publishing)にも参加しています。

本ガイドはスウェーデン王立図書館の openaccess.se プログラムからの資金提供を受け、公開システムの構築には、Nordbibからの助成を受けているNOAPプロジェクトの支援により資金提供を受けました。

本ガイドの情報源

本ガイドに含まれている情報や提案は、プロの出版者と図書館員である私たちの経験、北欧諸国の情報提供者から寄せられたベストプラクティス、NOAPプロジェクトからの情報、オープンアクセスジャーナル出版に関する既存の多くの情報源に基づいています。

先に述べたように、オープンアクセス出版に関するガイドは既にいくつか存在し、本ガイドでも参考にしました。中でも次のガイドは役に立つと思いますので、当たってみることを勧めます。

Open Society Institute (2003) Model Business Plan: A Supplemental Guide for Open Access Journal Developers & Publishers.

Open Society Institute (2003), Guide to Business Planning for Launching a New Open Access Journal (Edition 2).

Open Society Institute (2003) Guide to Business Planning for Converting a Subscription-based Journal to Open Access (Edition 2).

Public Library of Science (February 2004) Publishing Open-Access Journals. http://www.plos.org/downloads/oa_whitepaper.pdf

David Solomon (2008), Developing Open Access Journals: A Practical Guide.
(Amazon.com や Chandos Publishingを通じて入手可能。)

Kevin Stranack (2008) Starting a New Scholarly Journal in Africa.

*注- このガイドの情報の多くはアフリカ以外の雑誌にも適用可能です。

今後、本ガイドのユーザから各自のベストプラクティスが報告されることが期待されます。すでに、オープンアクセスジャーナルに関する物語は、David Solomonの『Developing Open Access Journals: A Practical Guide』First Monday誌で見ることができます。北欧地域で発行されているオープンアクセスジャーナルのリストはNOAPのWiki http://www.ub.uit.no/wiki/noap/index.php/Nordic_Journals_using_OJSで見ることができます。多くの場合、これらの雑誌のほとんどは大学図書館の支援を受けている学術出版社や小規模なチームにより発行されています。