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DAEDALUS: グラスゴー大学におけるEPrintsとDSpaceの初期の使用経験

William Nixon は、DAEDALUSプロジェクトにおけるGNU EPrintsとDSpaceソフトウェアの初期の使用経験と両ソフトウェアを使用することになった経緯について簡単に説明する。

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(原文: DAEDALUS: Initial experiences with EPrints and DSpace at the University of Glasgow
William Nixon. Ariadne, Issue 37, October 2003)

はじめに

DAEDALUS [1] は、JISCにより資金提供されているFAIR プログラム[2]に基づく3年間のプロジェクトで、グラスゴー大学におけるオープンアクセスデジタルコレクションのネットワークを構築するものである。これらのコレクションは、グラスゴー大学における広範な学術成果物への開かれたアクセスを提供するものである。公開する学術成果物には、ピアレビューされ出版された論文だけでなく、行政文書や研究用の検索補助資料、プレプリント、学位論文などを含む。DAEDALUSは、CURL (Consortium of University Research Libraries)の SHERPAプロジェクト[3]のメンバーでもある。

プロジェクトは2002年7月に開始した。本稿では、EPrintsとDSpaceを使用した初期段階の経験の概要について述べる。本稿は、2003年6月に開催されたデジタル保存連合(Digital Preservation Coalition)フォーラム会議 [4]における発表を基にしたものであり、本学のDSpaceサービスにアーカイブされている。

どうしてEPrintsとDSpaceの両システムを使うのか

DAEDALUSチームが受ける(「何故DAEDALUSなのか」と「どの程度コンテンツをもっているのか」に次ぐ)最も多い質問は「どうしてEPrintsとDSpaceの両システムを使うのか」「どうして1つではないのか、あるいは、別のシステムを使わないのか」である。

後者の答えは、DAEDALUSプロジェクトの起源にある。DAEDALUSはEPrintsを使った初期の経験および試験的な機関サービスの構築から発展したものである。この試験的サービスは、プレプリントや出版された論文、学位論文など様々なコンテンツを受け入れ、かつ、OAI(オープン・アーカイブズ・イニシアティブ)準拠になるように(実際そうなった)構築された。EPrints1.xを使ってこの試験的サービスを開始すると、我々が受け入れる様々な種類のコンテンツに適用する基準はコンテンツごとに異なることが明らかになった。

我々の初期の実装においては、表示されているコンテンツの種類を判別することは容易なことではなかった。EPrintsは出版状況や文書種別といった詳細を必要とするが、我々のサービスの最初のリリースではこれらの情報が表示されていなかった。これを改善するために、我々はアイテムのレコードレベルの記述に変更を加え、出版状況や文書種別を表示するようにした。これらのフィールドはGNU EPrints2.xではすべて表示されるようになっており、アイテムの出版状況や種別が何であるかは見ればすぐにわかるようになっている。

DAEDALUSが提案したのは、これをさらに発展させるものである。すなわち、コンテンツの種類別に別個のサービスを構築することである。これにより、たとえば、ピアレビューされるコンテンツはテクニカルレポートや学位論文とは別に保管されるようになる。コレクションは次のように分類される。

プロジェクト期間中、利用者に様々なコレクションの横断検索を提供するために、これら個々のコレクションは1つのOAI検索サービスにより補強される予定である。ただし、このサービスを提供する作業はまだ開始していない。コンテンツ毎に別のサービスを構築すると決定したので、我々は、既に経験のあるGNU EPrintsや電子学位論文向けのVirginia Techソフトウェアなど異なる種類のソフトウェアを使用する機会を持つことになった。FAIRプログラムへの申請書を書いていた時点(2002年3月)ではDSpaceはまだ一般公開はされておらず、我々はピアレビューされた出版済論文だけでなく、プレプリントや灰色文献にもGNU EPrintsを使うつもりであった。

DAEDALUSの目的の1つは、複数のソフトウェアのインストールと運用の経験を得ることであり、ソフトウェアの徹底的な比較をプロジェクトのウェブサイトで公開する予定である。DSpacceとETD-dbソフトウェア[6]についての作業は、既に「Theses Alive!」プロジェクトにおいて実施されている。GNU EPrintsソフトウェアは我々のピアレビューされ出版された論文のサービスで使用されている。このサービスの役割は我々の当初の提案を超えて拡大されており、出版に関する情報をサービスが提供できるように書誌レコード(フルテキストは持たない)を含めるようになっている。このアプローチはすでにスウェーデンのルンド大学 [7] によりEPrintsを使って実行されている。

プレプリントや灰色文献を扱うサービスのためにDSpaceを平行して使用するという結論に至ったのには様々な理由がある。

我々はETD-dbとGNU EPprintsソフトウェアに加えて(ハードウェアおよび技術サポートの両面において)DSpaceを稼動させることができると感じていた。

DSpaceは、そのコミュニティとコレクションモデルとソフトウェアが機関向けに開発されたという性格により、GNU EPrintsとはまったく異なる管理上の機能を提供しており、部局のコンテンツを管理するための興味深い使用法が考えられる。コミュニティの管理を個々の部局に移譲するという将来的な可能性は、我々が今後検討する価値のある重要な課題の1つである。また、DSpaceのデジタル保存コンポーネンツにも非常に興味を持っている。DAEDALUSが対象とするのはテキストベースの研究資料であり、(MITにおいてDSpaceの開発を促した)データセットや画像、その他のデジタルコンテンツではない。

EPrintsについて

GNU EPrints 2.x は、「オンラインアーカイブを作成するフリーソフトウェアであり、デフォルトの設定では研究報告書のアーカイブを作成する[8]」。そもそも、EPrintsは学術コミュニケーションの運動から登場したものであるので、デフォルトの設定は研究報告書向きになっているが、その他の目的やコンテンツに適用することも可能である。EPrintsはサウサンプトン大学の電子工学・計算機科学科のインテリジェンス・エージェント・マルチメディア・グループにより開発された。GNU EPrintsのウェブサイトには現在おおよそ106のEPrintsアーカイブがリストアップされている。事例調査によればさらに多くのアーカイブが開発中や利用中であることが示されている。

英国のFAIRプログラムにおいては、サウサンプトン大学におけるTARDisプロジェクト [9] がEPrintsアーカイブを開発中であり、EPrintsソフトウェアの開発に対し意見を寄せている。その多くはv.2.3に取り入れられる予定である。

GNU EPrintsはGNU一般公衆利用許諾契約書(GPL)[10]の下に自由に配布することができる。ソフトウェアやドキュメント、機能の詳細な一覧表など、 GNU EPrintsに関するさらなる情報は、GNU EPrintsのウェブサイト[8]で入手できる。さらに、(既知の)設置サイトのリストも見ることできる。

図 1 スクリーンショット (56KB): software.eprints.orgサイト
図 1: software.eprints.orgサイト

DSpaceについて

DSpaceは、「大学の研究部局の知的成果物をデジタル形式で、捕捉、格納、索引化、保存、再配布するために設計されたデジタルリポジトリ」である[11] 。EPrints同様、DSpaceはオープンソースのシステムであり、だれでも自由にダウンロードして、どんな機関、組織、会社(個人でも)においても稼動させることができる。DSpaceはMIT図書館とヒューレット・パッカード社が共同で開発した。利用者は自組織の要件に合わせてDSpaceを変更することも許されている。具体的な使用許諾条件はBSD配布ライセンス[12]に記述されている。英国においては、DSpace@Cambridge [13]のような別のプロジェクトでもデジタルリポジトリの構築にDSpaceが使用されている。

DSpaceに関するさらなる情報はDSpace連合のウェブサイト[14]で入手できる。 このサイトは最近再構築され、DSpaceに関する大量の情報のほかに、FAQや実装ガイドライン、ソフトウェアダウンロードサイトへのリンク、DSpaceメーリングリストなどを提供している。

図 2 スクリーンショット (50KB): DSpace.orgサイト
図 2: DSpace.orgサイト

DSpaceはデジタルコンテンツを管理、保存するという機関の要請に応える製品として登場し、この要請がDSpaceの開発を方向付け、システムが採用している「コミュニティとコレクション」というモデルを生み出した。コミュニティは組織における管理単位に対応させることができ、グラスゴー大学においては、MIT同様、本サービスの「初期採用」部局に対応してコミュニティを作成した。コンテンツの種類や研究領域などに合わせて種々のコレクションをコミュニティ内部に作成することができる。

図 3 スクリーンショット(26KB): グラスゴー大学におけるDSpaceのコミュニティ
図 3: グラスゴー大学におけるDSpaceのコミュニティ

DSpaceを使用した初期の経験から分かったことは、コミュニティとコレクションの実装がフラット過ぎるということであった。この問題は改善項目として取り上げられ、サブコレクションの追加が、リリース1.2の機能拡張項目リストにあげられた[15]。この機能拡張により、我々がEPrintsで提供した、部局によるブラウズと同じように、部局を構成する学科をより階層的な形でネストすることが可能となる予定である。

グラスゴー大学における実装

グラスゴー大学では、GNU EPrintsとDSpaceを同じサーバ上で稼動させている。サーバは、Sun Fireサーバと呼ばれるもので、OSはSolarisであり、4ギガバイトのメモリと36ギガバイトのハードディスクを2つ備えている。このサーバの仕様は、EPrintsおよびDSpace両者の最小限のソフトウェア構成の推奨値を超えるものであるが、プロジェクト期間中および期間後のサーバの「耐久性」を得るには重要であると感じている。EPrintsおよびDSpaceからの忠告はいずれも小さく始めよというものである。両システムともLinuxの各種ディストリビューションが稼動するデスクトップ仕様のパソコンにインストールできる。これは、システムに関する経験をつんだり、試験的なサービスを運用するための良い開始点となる。

GNU EPrintsのインストール

EPrintsはDAEDALUSサーバにインストールした最初のパッケージであった。なぜなら、我々にはこのソフトウェアのオリジナルバージョンを使用した経験があったからである。 ソフトウェアをインストールして、「デフォルト設定の」サービスを立ち上げるまでに約1週間半を要した。サービスの設定とカスタマイズにはさらに数週間を費やした。この設定には、サービスの「ルック・アンド・フィール」の設定、フィールドやファイル形式の新規追加などを含む。

現在、EPrintsはバージョン2.xであるが、ソフトウェアはバージョン1.xから全面的に書き直されている。GNU EPrintsになったのはバージョン2.xからである。このようにバージョン1.xと2.xでは多くの点で異なるので、EPrintsはアップグレードではなく、ソフトウェアを新規にクリーンインストールすることを推奨している。EPrints 2.xのインストールプログラムは、我々が経験したバージョン1.xに比べてはるかに改良されていることも注目に値する。

図 4 スクリーンショット(70KB): グラスゴー大学 EPrints サービス
図 4: グラスゴー大学 EPrints サービス

DSpaceのインストール

DSpaceのインストールはさらに難しい作業であった。2002年11月にバージョン1.0が公開されるまで、我々にはDSpaceについての経験がなかった。DSpaceのインストール作業は2003年2月に開始した。インストール作業に平行して別の作業をしていたので断続的な作業ではあったが、ソフトウェアをインストールして完全に設定するまでに約3ヶ月かかった。インストール作業に費やした時間の多くは、既にインストールしてあったTomcatのバージョンに起因するものであった。TomcatはApacheから送られてくるJavaサーブレットに対するリクエストを処理するサーブレットエンジンである。我々は既にインストール済のTomcatでDSpaceが稼動すると思っていたが、実際は稼動させることができず、Tomcatをソースから再インストールしなければならなかった。

DSpaceはLinuxではなくSolaris上にインストールした。我々が遭遇した問題の多くは、DSpaceを稼動させるためにインストールする必要があるパッケージのバージョンに関係するものであった。これはDSpaceのアップグレードにも関係するかもしれない。特に、特定のバージョンのパッケージを必要とするソフトウェアが他にもサーバ上で稼動している場合は関係するであろう。最終的には、ソフトウェアは2003年5月に何の問題もなくさらにバージョン1.1にアップグレートされた。DSpaceの次のリリースの際には、我々はApacheの使用を止め、Tomcatを単体で使用するか、他の機関が試したようにmod_jkを使うことを検討している

テネシー大学は自らのウェブサイト「怠け者のためのDSpace」[16]において、DSpaceのSolarisへのインストール体験を公開している。EPrints同様、DSpaceにも技術者のためのメーリングリスト、DSpace-tech [17]が、SourceForgeサイトにある。このメーリングリストは非常に活発であり、DSpaceのインストールや設定に関する貴重な情報源になっている

図 5 スクリーンショット (66KB): グラスゴー大学 DSpaceサービス
図 5: グラスゴー大学 DSpaceサービス

必要なスキルとプラットフォーム

EPrintsとDSpaceが使用するプログラミング言語は異なっており、EPrintsはPerlであり、DSpaceはJavaである。選択するソフトウェアに合わせて、JavaかPerlの経験を有するスタッフを得ることが強く推奨される。

  GNU EPrints DSpace
オペレーティング・システム Unix / Linux Unix / Linux
使用するプログラミング言語 Perl Java
データベース管理システム MySQL PostgreSQL

設定

サービスの設定は、「ルック・アンド・フィール」のカスタマイズから追加機能の実装にまでに及ぶ。両システムともインストールした「そのまま」で使用することができる。しかしながら、たとえ極めて基本的なレベルの「ルック・アンド・フィール」のカスタマイズにせよ、各サイトはなんらかのカスタマイズをしたいと望むだろう。

GNU EPrintsの設定

我々がこれまでに行ったもっとも大規模な設定作業はGNU EPrintsに対するものである。この設定は、グラスゴー大学仕様の「ルック・アンド・フィール」の実装からフィールドや文書種別の追加に及ぶ。.

我々がEPrintsで広範囲の設定が行えたのは、我々がこのソフトウェアに慣れていたことと、Perlに対する豊富なスキルを持っていたためである。この追加フィールドには、プレプリントが利用できる場合にDSpaceへのリンクを提供するものを含んでいる。

図 6 スクリーンショット (14KB): EPrints - プレプリント利用可能指示
図 6: EPrints - プレプリント利用可能指示

EPrintsは、デフォルトで、プレプリント(およびポストプリント)バージョンの存在を非常にエレガントに扱い、両バージョンへの前方および後方リンクを自動的に提供する。しかし、我々は最終的にはプレプリントを別の場所に置くことを決めた。これは、我々がこの優れた機能をうまく利用できなかったことを意味している。GNU EPrintsでは、設定の変更はコードレベルで行ない、/cfgディレクトリ配下の様々なxmlファイル(ArchiveRenderConfig.pmやArchiveConfig.pm など)に変更を加えなければならない。EPrintsのドキュメントでは、フィールド追加など、システムの改良に役立つハウツーガイドがたくさん提供されている[18]。

DSpaceの設定

EPrints同様、DSpaceも設定を変更することができ、幅広い機能性を与えている。この変更は、投稿プロセスからサービスの管理にわたっている。今までのところ、我々はまだインストール時から実質的なコード変更は行っていないが、スタイルシートを適用して、DSpaceサービスのルック・アンド・フィールを変更し、本学のカラースキームを適用している。さらに、グラスゴー大学固有のヘッダとフッタを追加した。サービスは現在のところ「グラスゴー大学 DSpaceサービス」と名付けているが、それ以上、サービスの基本的機能は変更していない。

実際にDSpaceから奨励されているように、各サイトはコードを変更することができる。エジンバラ大学の「Theses Alive!」プロジェクトでは学位論文用のDSpace追加モジュールを開発している[19]。管理者レベルでは、DSpaceにおけるコミュニティとコレクションの各ホームページに様々な変更を加えることが可能である。これらのページは、ページを記述しているテキストや画像を使ってカスタマイズすることができる。特定のコミュニティやコレクションに関する著作権情報を追加するフィールドも存在する。また、「最近の投稿」リストがサイドバーに表示される。

図 7 スクリーンショット (57KB): DSpaceコミュニティ - スラブ学科
図 7: DSpaceコミュニティ - スラブ学科

コレクションの各アイテムに追加したい内容をあらかじめフィールドに設定しておくことのできるテンプレート機能が存在する。DAEDALUSコレクションにおいては、スポンサーフィールドに、プロジェクトがJISC FAIRプログラムから資金提供を受けていることを感謝する旨のテキストを追加している。このテキストは今ではこのコレクションにデポジットされるすべてのアイテムに自動的に追加されるようになっている。フィールドの内容が適切でない場合は、投稿の段階で削除することも可能である。

投稿

EPrintsもDSpaceも、セルフアーカイブ、すなわち個々の著者(投稿者)が自分でコンテンツをデポジットするよう設計されている。しかしながら、FAIRプロジェクトでは別の投稿プロセスが研究されている。TARDisプロジェクトの目的の1つは、著者のデポジットを助けるゲートウェイを提供することであり、そのための新しいインターフェースが設定されている。我々は現在、利用者に自分でコンテンツをデポジットすることを積極的に奨励することはせず、代わりにDAEDALUSが提供する投稿仲介サービスを提供している。自己永続化・セルフアーカイブ・モデルは長期的に移行したいと考えているものの一つである。

DAEDALUSサービスにコンテンツを投稿できるのは登録された利用者だけであり、コンテンツをデポジットするには各サービスにログインする必要がある。

GNU EPrintsの投稿プロセス

EPrintsでは、利用者はログインした後、まず、ドロップダウンリストからコンテンツの種別を選択しなければならない。これにより、記入すべきフィールド(そのうちいくつかは必須)が決定される。典型的な選択肢は以下に示したとおりである。グラスゴー大学EPrintsサービスでは、選択肢として雑誌論文だけが表示されるようサーバを設定している。

図 8 スクリーンショットt (21KB): EPrintsのコンテンツ種別選択用のドロップダウンリスト
図 8: EPrintsのコンテンツ種別選択用のドロップダウンリスト

コンテンツ種別の選択肢は、/cfgディレクトリにあるmetadatatypes.xmlファイルを使って追加したり削除したりすることができる

次に、アイテムに書誌データを入力する必要がある。このセクションに示されているフィールドで*印がついているものは必須フィールドである。我々がこのセクションに追加したラジオボタンによる選択肢がついた追加フィールドは、コンテンツのフルテキストを同時にデポジットするかどうかを確認するものである。

図 9 スクリーンショット (13KB): EPrints - フルテキスト提供の有無
図 9: EPrints - フルテキスト提供の有無

書誌データを入力し終わったら、ファイルをEPrintsにアップロードする必要がある。これは、ファイル形式を選択し、ファイル数を指定することで行う。我々は、XML Docbookのような様々なファイル形式を追加した。ファイルがアップロードされると、EPrintsは、レコードがどのように見えるかを表示し、また、メタデータフィールドの内容を表示する。

投稿プロセスの最後のステップは、次の文書にクリックして同意することである。

図 10 スクリーンショット (59KB): EPrints同意文書画面
図 10: EPrints同意文書画面

EPrintsへ投稿されたコンテンツは、たとえ管理者が投稿しても、自動的に投稿バッファに送られる。このバッファに入れられた投稿コンテンツは、表示、編集、受諾、棄却することができる。コンテンツが受諾されると、検索インターフェースからは利用可能となる。しかし、generate_viewsプログラムを実行しないとブラウズリストには表示されない。このプログラムは、EPrintsの定期的ジョブリストに入れ、少なくとも1日に1回は実行するよう設定するべきである。

DSpaceの投稿プロセス

DSpaceによる投稿プロセスも非常に似ている。ただし、最初に指定するのは、コンテンツの種別ではなく、コンテンツをデポジットするコレクションである。

My DSpaceにログインした後、利用者はまず「新規投稿開始」をクリックし、次に、アイテムを追加するコレクションをドロップダウンリストから選択する。コレクションの完全なリストがアルファベット順に表示されている。どのコミュニティに属しているのかがはっきり分かるようにコレクションすべてに違う名前を付ける必要があることがわかった。投稿は、まずコレクションを選んでから、「このコレクションに投稿」ボタンを押して開始することもできる。

図 11 スクリーンショット (18KB): DSpaceコレクションへの投稿
図 11: DSpaceコレクションへの投稿

コレクションを選択すると、利用者にはアイテムに関するいくつかの選択肢が表示される。

図 12 スクリーンショット (17KB): DSpaceアイテムに関する選択肢
図 12: DSpaceアイテムに関する選択肢

DSpace投稿プロセスでは、利用者が7つの投稿段階のどこに今いるのかを示す「ソーセージバー形の」進捗表示バーが表示されている。利用者が現在いる処理ステージ(下の例では確認中)は赤で強調表示される。.

図 13 スクリーンショット (11KB): DSpaceデポジット進捗表示バー
図 13: DSpaceデポジット進捗表示バー

記述(Describe)セクションは、EPrintsにおける書誌データ入力ページに相当する。DSpaceにおける必須フィールドは、タイトル、日付、言語の3フィールドだけである。EPrintsと同様に、進行中の作業を保存することが可能である。また、進捗表示バー上の既に完了済みのステージをクリックすることで、投稿ステージを後戻りすることも可能である。DSpaceのアップロードステージでは、EPrintsで行ったようなファイル種別を選択してアップロードするのではなく、ファイル種別を登録済みのビット列と比較して、ファイル種別をそのビット列に割り当てる。この登録ビット列へのファイル種別の追加は、DSpaceの管理セクションで行う。

ファイルについて記述したテキストを提供することもできる。これは、複数のファイルを持つアイテムでは特に便利である。

図 14 スクリーンショット (18KB): DSpaceアイテム
図 14: DSpaceアイテム

DSpaceでの投稿プロセスの最後のステージは、ライセンスのクリックスルーである。

DSpaceにはMITが使用しているライセンス例が参考用として付属している。これをそのまま使用してはならない。ライセンスのコピーはレコードと一緒に保存され、管理者はこれを見ることができる。以下はその例である。

ライセンスは、William Nixon (w.nixon@lib.gla.ac.uk)により2003-06-18T08:56:16Z (GMT)に与えられた

アイテムが直ちに利用可能になるか、「プール」(EPrintsにおける投稿バッファに相当)に送られるかは、コレクションに与えられたワークフローによる。

My DSpace と (My)EPrints

EPrintsもDSpaceも共に、「マイ・リポジトリー」機能を持っている。この機能は登録利用者に、コンテンツの投稿、デポジットしたアイテムの表示、処理中の任意のコンテンツに戻るウェブインターフェースを提供するものである。

GNU EPrints

EPrintsには利用者個人用ホームページがあり、ここから現在投稿中の任意のドキュメントに戻ったり、既に投稿したドキュメントや中断して投稿バッファに入っているドキュメントを見ることができる。

図 15: スクリーンショット (59KB): EPrints利用者個人用ホームページ
図 15: EPrints利用者個人用ホームページ

My DSpace

DSpaceでは、コレクションのワークフローに何らかの役割を持っている利用者は、「プール」に入っている処理を行うべきタスクを見ることができる。また、新しいタスクが生じた際には、利用者に電子メールで通知される。

図 16 スクリーンショット (36KB): My DSpace
図 16: My DSpace

管理

サービスの管理はウェブインターフェースにより行う。管理者はこのインターフェースを使って、登録利用者(利用者あるいはE-people)の管理、アイテムの受諾・削除、コミュニティや主題標目の追加を行うことができる。

GNU EPrintsの管理

EPrintsでは、サービスのコンテンツだけでなく利用者情報を管理することもできる。コンテンツを直接修正したり、処理をするためにアーカイブから投稿バッファへ移したりすることができる。管理者用アカウントにはシステム状態表示オプションも存在する。これは、サービス中のアイテムの数、現在のリリース、現在使用中のディスク量を表示するものである。EPrintsバージョン2.xでは、ウェブインターフェースを使って、主題階層に項目を追加したり、削除したりすることも可能である。

図 17 スクリーンショット (35KB): EPrints - 主題エディター
図 17: EPrints - 主題エディター

DSpaceの管理

DSpaceはサービス管理用の優れたウェブユーザインターフェースを持っており、システムの様々な要素を管理者が操作できるようになっている。画面の左側には、管理者が操作できる様々な要素を示している。

図 18: スクリーンショット (63KB): DSpace管理画面
図 18: DSpace管理画面

DSpaceのコミュニティとコレクションモデルは、各コレクション内のコンテンツへのアクセスをさまざまな粒度で細やかに設定することが可能であることを意味している。EPrintsにおいては、アクセスコントロールはアイテム各個に対して適用される。またDSpaceでは,コレクション毎に異なるアクセスポリシーやワークフローを適用することもできる。これらはグループとポリシーを使って管理されており、コレクションとそのアイテムに対するアクセスをコントロールしている。権限付与ポリシー管理ツールは、DSpaceのコンテンツへのアクセスを管理するための様々な強力なオプションを提供している。

図 19: スクリーンショット (25KB): DSpaceポリシー管理ツール
図 19: DSpaceポリシー管理ツール

DSpaceはシステムの状態情報を電子メールで提供する。これは総合的な報告であり、ログイン利用者に関する詳細な情報や検索ログ、アイテムの表示回数などが含まれている。

さらなる経験

グラスゴー大学において、EPrintsとDSpaceを使ってするべき作業はまだ数多く残っているが、サービスは、現に提供されており、絵に描いた餅(vapourware)ではない。GNU EPritnsもDSpaceも機能が豊富な製品であるが、まだ開発されてからそれほど日が経っていない。両システムとも開発者や活発な利用者コミュニティにより開発が進められている。

我々が研究を続けている分野は、これがすべてではないが、以下のものがあげられる。

結論

本稿は、機関リポジトリの構築に利用できるソフトウェア選択肢のうちの2つについて、その特色を伝えることを目的とした。両システムは多くの共通点を持っており、どちらを選択するか、両方とも採用するか、あるいはどちらも採用しない[20]かは、採用する機関側の様々な要因によるであろう。どちらのソフトウェアが優れているのかという問題ではない。構築する機関サービスやその目的あるいはコンテンツ(すなわち、研究論文を公開するためのものなのか、デジタルコンテンツを管理、保存するためのものなのか、その両者なのか)にとって、ふさわしいのはどちらかが問題となる。

ソフトウェアの選択は、機関リポジトリサービスの構築にあたって検討すべき多くの課題の1要素にすぎない。資産、啓発、アクセス、対象者に関する決定の基礎となる、様々なポリシーを決定しなければならないのである。

グラスゴー大学では、GNU EPrintsとDSpaceを、異なる課題をもつ様々な機関資産を集めるための宣伝活動に対して2通りのアプローチを提供する、互いに補足しあう製品であると考えている。最終的には、これらのサービスが、十分なコンテンツを持つこと、すなわち、コンテンツがなくなり十分な機能をしなくなるほど衰えないようにすることを保証するのは、文化の変容と啓発活動である。我々の経験は、このサービスはただ構築するだけでは不十分であり、本当の課題はコンテンツを集めることであることを示している。しかし、このことは別の論文に譲ることにする。

謝辞

DAEDALUSプロジェクトの同僚、特に、Stephen GallacherとLesley Drysdale、Morag Mackieに感謝する。彼等の果たした作業、コメント、援助は計り知れないものであった。

参考文献

  1. DAEDALUS Project http://www.lib.gla.ac.uk/daedalus/index.html
  2. The JISC FAIR Programme http://www.jisc.ac.uk/index.cfm?name=programme_fair
  3. The SHERPA Project http://www.sherpa.ac.uk/
  4. Digital Preservation Coalition Forum, 24 June 2003. http://www.dpconline.org/graphics/events/24603dpcforum.html
  5. Nixon, William J, "DAEDALUS: Freeing Scholarly Communication at the University of Glasgow", Ariadne 34, December 2002/January 2003 http://www.ariadne.ac.uk/issue34/nixon/
  6. Jones, Richard, 'Space and ETD-db Comparative Evaluation' http://www.thesesalive.ac.uk/arch_reports.shtml
  7. LU:Research http://lu-research.lub.lu.se/
  8. EPrints.org http://software.eprints.org/
  9. TARDis Project http://tardis.eprints.org/
  10. EPrints GNU License http://software.eprints.org/gnu.php
  11. DSpace FAQ: What is DSpace? http://dspace.org/faqs/dspace.html#what
  12. BSD License http://www.opensource.org/licenses/bsd-license.php
  13. DSpace@Cambridge http://www.lib.cam.ac.uk/dspace/
  14. DSpace Federation Web site http://dspace.org/
  15. Dspace-general list: Preview of next release of DSpace
    http://mailman.mit.edu/pipermail/dspace-general/2003-September/000006.html
  16. 'Space for Dummies' http://sunsite.utk.edu/diglib/dspace/
  17. DSpace Tech List http://lists.sourceforge.net/lists/listinfo/dspace-tech
  18. EPrints 2.2 Documentation - How-To Guides http://software.eprints.org/docs/php/howto.php
  19. Theses Alive! Project, DSpace Add-on for Theses http://www.thesesalive.ac.uk/dsp_home.shtml
  20. There is other software such as CDSware: http://cdsware.cern.ch/

著者紹介

William J Nixon
Williamは、グラスゴー大学図書館IT部門の副長であり、グラスゴー大学EPrintsサービスの管理者である。また、DAEDALUS(グラスゴー大学)のサービス開発担当のプロジェクトマネージャでもある。


Email: w.j.nixon@lib.gla.ac.uk
Web site: http://www.gla.ac.uk/daedalus

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Article Title: "DAEDALUS: Initial experiences with EPrints and DSpace at the University of Glasgow" Author: William Nixon
Publication Date: 30-October-2003 Publication: Ariadne Issue 37
Originating URL: http://www.ariadne.ac.uk /issue37/nixon/intro.html
Copyright and citation information File last modified: Monday, 03-Nov-2003 08:35:52 GMT

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