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Doric column and link to Issue Home Page 45号 2005年10月 Doric column and link to Issue Home Page

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Cream of Scienceの作り方: オランダの機関リポジトリのための特別なコンテンツ収集法

Martin FeijenAnnemiek van der Kuilが、
オランダ国内の207名の傑出した科学者によるおよそ25,000件の出版物への
オープンアクセスを提供するWebサイトを作成した
DAREプログラムの目玉であるCream of Scienceプロジェクトを説明する。

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(原文: A Recipe for Cream of Science: Special Content Recruitment for Dutch Institutional Repositories,Ariadne, Issue 45 (October 2005)

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結果

Cream of Science: その課題

DAREプログラム[1]の主な課題の1つに、科学者がデジタル版の研究成果物を大学のアーカイブ(機関リポジトリ)にデポジットするよう働きかけること、言い換えれば、この成果物をインターネット上でアクセスできるようにすることがある。これを念頭に、2004年夏、Cream of Science(科学の精鋭)と呼ばれるプロジェクトが開始された。Cream of Scienceの主な目的の1つは、科学コミュニティに最高品質のコンテンツを開放し、デジタルでより簡単に利用できるようにすることである。もう1つの目的は、科学者が自らの資料をリポジトリに喜んでデポジットすることを示すことにより、他の研究者の意識を高めることである。全てのDARE参加機関は各々10名の傑出した科学者を選出し、これらの完全な出版物リストを作成し、できるだけ多くのフルテキストがDAREnetを通じて閲覧でき、デジタルで利用できるようにした。全体でおよそ24,000件の出版物のフルテキストが、リポジトリを使ってアクセスできるようにされた。プロジェクトは2004年10月から2005年4月まで実施された。本稿の目的は、Cream of Scienceに至る過程で得た経験、結果、学んだ教訓を共有することである。

Creamの選出

Cream of Scienceは傑出したオランダ人科学者の選抜を行うことを目的としたものであり、必ずしもオランダにおける科学者ベスト150を選定することを目的としたわけではない。「傑出した」という言葉の定義には客観的な基準は存在せず、各DARE参加機関は自らの望む選出手段を自由に使用することができた。参加機関の多くは、理事会により選出し、研究者へは学部長名でCreamへの参加招請文書を送るという正式な方法を使用した。また、大学図書館長名による文書が使われた例もあった。その後のフォローアップは(学部の)図書館員が行い、個人的に連絡を取り、チームに加わるよう研究者を説得した。中には、学部長がこの作業に当たり、処理の進捗を図る例も見られた。反応はおおよそ前向きなものであったが、参加をためらう者も依然として若干存在した。それでも、1月から5月の間に207名の科学者がCreamに参加した。当初の目標は150名であったので、我々は既に「右にならえ」効果を証明したことになる。Creamへの参加を強制された者はいなかったことに注目してほしい。そうではなく、プロジェクトの目的と目標に賛同した者がCreamに参加したのである。

立ち上げ祝賀会

Creamの立ち上げ祝賀会は、SURF、Coalition for Networked Information(CNI)および英国のJoint Information Systems Committee(JICS)により開催された2日間の指導者会議「機関リポジトリのための戦略的事例の作成」の一部として行われた。全ての大学と参加機関の理事会役員、世界中から会議に参加した70名のリポジトリ専門家とともに、全てのCream科学者が招待された。残念ながら多くの科学者は祝賀会に参加することができず大きな失望をもたらしたが、総計60名の科学者が参加し、祝賀行事を楽しんだ。

photo (63KB) : Prof. Dr. Frits van Oostrom launches Cream of Science (Photo courtesy of Theo Koeten Photography)

図 1: Cream of Scienceを立ち上げるFrits van Oostrom教授
(写真はTheo Koeten Photographyのご好意による)

Cream of Scienceのサイトは、2005年5月10日、王立オランダ芸術科学アカデミー(KNAW)のトリッペンハイスにおいて、サイトの開設に当たって「Cream of Science」特別会員として参加するよう要請されたKNAW理事長Frits van Oostrom教授により堂々と立ち上げられた。

立ち上げの際、6つの機関が「自然科学および人文科学における知識へのオープンアクセスに関するベルリン宣言」に署名した。署名した機関は、オランダ科学研究機構(NWO)、アムステルダム大学、ユトレヒト大学、ワーゲニンゲン大学および研究センター、ライデン大学、英国におけるSURFにあたるJISCである。KNAWとSURFは既にベルリン宣言に署名済みであった。署名機関は、オープンアクセスパラダイムの原則に従って研究成果を公開することを所属の研究者や助成金受給者に奨励する意向である。5月10日以降、さらに2つの大学(デルフトとグローニンゲン)が宣言に署名し、2005年9月22日には欧州研究図書館連盟(LIBER)も宣言に署名した。

公式の立ち上げ祝賀会とは別に、プロジェクトに参加した全ての人がサプライズ祝賀会に招待された。リラックスした雰囲気で他大学の仲間と経験や成功、不満を共有できたことで非常に歓迎された。

立ち上げ当日の5月10日の1日だけで、DAREnetは50万ヒットを記録した。続く2日の間に、まったく予想していなかったことが起こり始めた。新聞がCreamについての短い記事を載せ、ラジオのレポーターがインタビューを申し込んで来た。そして、Webサイトは訪問者であふれた。その結果、技術的問題が発生し、この後数回にわたってWebサイトは停止し、安定するまで2日を要した。

より重要なことは、多くのCream科学者がプロジェクトに参加したことを誇りに思い、自身のブログやWebサイトなどにそれを掲載したことである。研究者もこの試みに熱狂した。今や多くの研究者が研究成果の全体像を示すために自らのWebサイトにおいて www.creamofscience.org を参照している。彼らは「Cream of Science」を品質証明書のように見なしている。メディアの中には、特に、オランダ以外のメディアには、このサイトが学術出版社に対する大学からの宣戦布告であると表現するものもあった。しかし、これは間違いである。それどころか、Springerのように「Cream of Science」に協力する出版社も存在する。DAREの第1の目的は知識の共有であり、このサイトはこの目的を果たすための1つの手段にすぎない。

正確な情報による結果

Cream of Scienceは、以下で構成されている。

DAREnet利用統計

異なり訪問者数 訪問者数 ページ数 ヒット数 データ転送量
2005年5月*
35,762
49,538
746,208
1,471,585
8.74 GB
2005年6月
17,054
21,582
105,008
342,388
2.53 GB
2005年7月
9,462
11,676
45,990
140,967
1.07 GB

* 2005年5月10日以降

5月10日の立ち上げに伴い、国内外のメディアの注目を集めたため、当初のWebサイト訪問数は予想外に多かった。2005年5月から12月の間におよそ50,000件の検索があると予想したが、この目標はたった1日で達成してしまった。これはサイトがしばらく過重負荷に見舞われたことを意味するが、問題はすぐに解決した。もちろん、この高スコアを維持することは不可能であり、夏期シーズンは確実に数の減少をもたらした。DAREnetとCream of Scienceが再訪するに値するほど面白いと来訪者が思うか否かは、これに続く月の統計で示されるだろう。

プロジェクトに関する問題と話題

著作権

ほとんどの図書館や著者にとって、著作権は重要な問題である。DAREは著作権に対する方針はまったく持っていないが、著作権へのある対処法を採用している。大きな一歩は、DAREが著者と出版社間の契約の分析を発表したことである。DAREコミュニティにとって大変な驚きであったが、1997年以前に出版された全ての資料は著作権の制約なしにリポジトリに登録することができることが明らかであった。

出版社はそれまで電子出版について契約書に盛り込んでいなかった。1998年以降、出版社は契約書を変更し、著作権契約の一部としてデジタル版を含めた。もう一つ驚いたことに、実際には、ほとんどの著者は自分の署名した契約書がどんなものであるのかを正確には知らないまま、著作権を商業出版社に譲り渡していた。

ほとんどのDARE参加機関は安全側に留まることを決定した。その理由は、1つは所属の科学者がそうすることを望んだためであり、1つは図書館が「厳格な」方針を持っていたからであった。しかし、大多数の科学者が著作権にかかわらず全ての出版物をリポジトリに入れたいと決定した機関もあった。

多くの図書館では、Sherpa Webサイト [2]の出版社の著作権リストを使って、どの論文が著作権フリーであり、どれが違うのかを調べることに多大の時間と労力を費やした。これは非常に時間を浪費する作業であることがわかり、それゆえ、この作業を中止する図書館もあった。1997年以前に出版された資料については、PDFとメタデータの双方がリポジトリに格納された。1998年以降に出版された資料については、依然として著作権による制限があるので、メタデータだけが利用可能となった。

結果として、Creamは出版物リストに挙げられた文書のおよそ60%に対してオープンアクセスを提供している。

Cream資料の残りの40%は、自由にアクセスすることはできない。1998年以降の著作権制限が最大の障害物となっている。

コンテンツ

メタデータ

Creamで観察された重要なことの1つに、多くの図書館はCream科学者の出版物リストをカバーするメタデータを持っていないことであった。利用できるメタデータレコードはすべてモノグラフや雑誌のものであり、ほとんどの図書館は(工学系の大学を除いて)個々の論文のメタデータを持っていなかった。メタデータの入力は著者(すなわち、科学者などでカタロガーではない)により提供された出版物リストに基づいていたので、その質はしばしば非常に低いものであった。(機関内外の情報源を用いて)メタデータの追加を試みた機関もあったが、労力と時間の不足により、これは常に実行できるものではなかった。この理由により、Creamは常に完全なメタデータレコードを提供しているわけではない。

スキャン

DAREリポジトリにおいて、1997年以前に出版された資料でデジタル形態が利用できたものは20%未満であった。したがって、多くのスキャン作業を行う必要があった。これは機関内部のスキャン部署あるいはアウトソーシングで行われた。アウトソーシングはDAREが中心となって組織化され、Strata社に委託された。

全てのDARE参加機関は図書館の書庫から論文を集めた。自館にない論文は全国組織のILLを通じて他の図書館から入手した。出版物の1%は、オリジナル文書の印刷版もデジタル版も見つけることができず、消失したという結果になった。この事実はリポジトリが価値ある役目を果たすということを明らかに示している。

Strata社はスキャンした画像ファイルにメタデータをリンクする専用のソフトウェアを開発した。極めて注意を要する物流の問題はいくつかのワークフロー: メタデータの入力、スキャン、ILL、図書館からStrata社およびStarta社から図書館に運搬しなければならない資料の貸し出し手続き、にまとめられた。この処理を行うために特別の文書が作成されたが、これはほとんどの図書館で問題や誤解を引き起こした。品質問題も解決する必要があった。ILLで依頼したスキャン論文は当初品質が低かった。全ての者はこの方法が以前にはどこでも行われていない先駆的な作業であることを実感した。結果として、「試行錯誤」という表現がより深い意味を持つことを学ぶことになった。

ハーベスティング

Cream of ScienceはDAREnet(これの詳細については次のパラグラフを参照)の一部であるので、ハーベスティングにはセット[3] が使用される。

ARNOとDSpaceはOAI-PMHで定義されているセットをサポートしていなかったので、これらのシステムを使用していたサイトはセットメカニズムを実装する必要があった。その他のシステムは別の解決策を見つけた。2005年5月8日までに、やっと間に合い、最終バージョンのハーベスティングが行われ、5月10日の公式開始日に向けて安定バージョンを保つためにDAREnetプラットフォームは凍結された。

Webサイト

Cream of Science [4] は、DAREnet [5]の一部である。DAREnetは2004年1月にサービスを開始した。当初、その目的は、オランダの全ての大学といくつかの関連機関に所蔵されているデジタル文書のコレクションをネットワーク化して、統一的な形で利用者に提供することを実証することであった。これは関連する1つあるいは複数のリポジトリを検索することも可能にしている。DAREnetは他に類のないものである。デジタル形態の学術研究成果に対してこのように簡単なアクセスを提供している国は世界中どこにも存在しない。1年のうちに、DAREnetはネットワークだけでなく、リポジトリや永続的な保管、オープンアクセスの有益性についても実証するようになっている。

DAREnetの2004年バージョンはデモンストレーション用であり、本番運用ではなかった。Creamの登場とともに、このバージョンは変更の必要があり、処理能力、安定性、機能性を改善する必要があった。DAREプログラム管理者はDAREnetに(Scirusなどで使用されているFASTソフトウェアを使用している)SURFnetサーチエンジンを使用する試行を開始することにした。その後1月にはこの試行が成功したことが判明し、DAREnetの新しいバージョンが導入された。とはいえ、この平行した作業は、Creamプロジェクトにさらなるプレッシャーを与えることになった。

DAREnetはローカルリポジトリからデジタルで利用可能な資料をすべて収穫して、検索できるようにしている。ただし、DAREnetは、全ての人がフルコンテンツの利用ができるオブジェクトに収穫を限定している。有料のオブジェクト(たとえば、高額のライセンスを持つ者だけにアクセスを提供する出版社の出版物)をDAREnetは収穫しないので、これらを見ることができるのはローカルリポジトリだけである。これは、オランダの全リポジトリに保管されているコンテンツの総量は、DAREnetで見つけることができるコンテンツの総量を確実に上回ることを意味する。しかし、DAREnetはその全てのコンテンツに対してまったく制約なしのフリーなオープンアクセスを全ての人に提供することを保証している。

Cream of Scienceはこのオープンアクセスに関する規則の例外である。Cream of Scienceに最大の関心が集まるようにするために、207名の選ばれた科学者の全出版物へのアクセスを提供することを決定し、その結果、著作権による制限のある出版物も含まれることになった。この著作権による制限のために、フルテキストが利用可能となっているのはおよそ60%(約25,000件)である。その他の40%は、メタデータだけが利用可能となっている。

diagram (5KB): Figure 2: Degree of overlap between DAREnet and Cream in open access availability

図 2: オープンアクセス可用性についてのDAREnetとCreamの重複度

全てのCream科学者のために個人ページが用意された。このページには、顔写真、所属、研究分野と専門、受賞歴などの基本情報と、もしあれば個人Webサイトへのリンクが含まれている。さらに付加価値として、リポジトリにより利用可能な最新の出版物リストへのリンクが提供されている。

このプロジェクトの歴史について興味がある読者のために、プロジェクト年表を提供している。

学び取った教訓

評価: 図書館の見解

Creamの結果について図書館の見解を尋ねた。ローカル条件が大きく異なることを強調しなければならないが、一般的な意見もいくつか見られた。全てのDARE参加機関が経験したことの1つに「Cream後の脱力感」がある。人々はプロジェクトの目的を実現するために本当に熱心に働いたので、しばらくの間リラックスすることが絶対に必要だったのである。図書館はCreamから次のような利益を得たと報告している。

しなければならなかったものが先駆者的な作業であったので、多くの人々は想像力や能力、忍耐力、共同作業や即興作業への取り組みを最大限に発揮する必要があった。これは誰にとっても簡単な仕事ではなかった。時間に追われたとはいえ、Creamは多大な熱意と献身を生み出したと言わねばならないだろう。個人的な進歩や能力の点から見て人々の成長が見られたのは素晴らしかった。彼らにとって、これは単なる学び取った教訓ではなく、彼らの職業人生の中での大切な経験であった。

問題と解決策

DARE参加図書館により行われた作業は多く面で先駆的なものであった。以下に、遭遇した最も重要な問題と我々が選択した解決策のリストを提供する。

問題 解決策
組織上の問題
各機関
Cream科学者の選出 図書館、部局、大学理事会により各機関で決定
労働力の欠如 各機関: 臨時作業員の雇用;
中央: 追加助成とDAREサポートチームの編成
中央
必要な容量を見積るために必要な信頼できるデータの欠如 最良推定値を使用し、実行中に調整する
大量の契約と支援要員の不足 より高品質(2階調ではなくグレースケールのスキャン)のために、あるいは、メタデータの誤りの修正やリポジトリへのダウンロードに関してStrata社からより多くのサポートを得るために、お金を使う
メタデータ、スキャン、ILLのワークフロー統合 効果的な解決策が見つからなかった。日々の問題解決でこれを改善した
著作権に関する間違った考え 著者と出版社間の契約を分析した
著作権に関する専用のSURF Webサイトを使用した
オープンアクセスとデジタル版の利用が100%でない そのまま受け入れた;
いくつかの出版社に対して、Creamに協力してCream出版物に特別な許可を与える意思があるかを尋ねた
PDFの再構成(tweaking)[6]を実験した
技術的な問題とその解決策
著者表示形のばらつき メタデータ入力用の標準的なリストとDAREnetのフォーマット済みリスト[7]を使用した
雑誌の略誌名とそのばらつき メタデータ入力用の標準的なリストを使用した
予想外に多いヒット数のためにサービス開始後にシステムがクラッシュ サーバを追加した

経費

SURF財団はDAREプログラムのコーディネーターかつ共同出資者である。したがって、SURFは財政的にも関与した。CreamプロジェクトのSURF側の当初予算は10万ユーロであった。その後、参加科学者を追加するために、この予算は20万ユーロに引き上げられた。この予算は、スキャン作業、サポートチームによるメタデータ入力(労働力)およびILLに使用された。DARE参加機関が独自で負担した経費の正式な数値は存在しない。

しかし、推定値は存在する。Creamの総経費の推定値は、科学者1人あたり1万ユーロである。科学者1人あたり、図書館で8,000ユーロ、SURFで2,000ユーロ使用したと推定される。この2,000ユーロのうち、およそ1,000ユーロがスキャン作業とメタデータ入力、ILLに費やされた。SURF側の残りと機関側の経費は全てスタッフの活動に関係するもの(労働力)であった。

これは、各Cream出版物あたり50ユーロを費やし、そのうち、45ユーロがスタッフの労働力、5ユーロがその他の経費であることを意味する。伝統的な図書館の処理プロセスにおける印刷体の出版物あたりの平均経費と比較すると、Creamの出版物あたりの経費はまったく高いものではない。それどころか、Creamの処理プロセスはその場で考案しなければならず、合理化も標準化もされていなかった。処理プロセスやインフラが改善されれば、出版物あたり約10ユーロにまで経費を削減できると我々は予想する。

結論

科学者は環境が整っていれば喜んで研究成果をリポジトリにデポジットする。Creamでは短期間のうちに「右にならえ」効果が発揮され、中期的には、ローカル側でのCream類似の新規プロジェクトを通じて拡大した。Creamは、科学者コミュニティにおいてリポジトリの認知度を非常に高め、科学者と図書館の関係を改善し、オランダ国内のリポジトリのコンテンツに重要な成長をもたらした。

参加した科学者には、できるだけ多くの出版物がデジタルで利用可能になり、出版物が流通されるようになり、その結果、人目に触れる機会が多くなるという付加価値があった。

Creamは、リポジトリは当たり前の存在であり、出版物消失の防止など、多くの目的を果たすことを示した。この207名のオランダの先進的科学者の多様性のあるコレクションは、(今のところまだ)学術情報の主要な情報源であると考えることはできないが、機関リポジトリにある資料は質が低いという神話は、今や過去のものである。

オランダは国際的なリポジトリ開発の最前線にあり、Creamは国内外におけるオープンアーカイブコミュニティに対する極めて大きな刺激となった。

我々はCream of Scienceを(DAREnetの一部として)できるだけオープンアクセスにしたいと思っているが、科学者の参加を確保するためには、完全な出版物リストを(できればフルテキストを、そうでなければメタデータだけでも)科学者に提供することが不可欠であった。

その実務作業は困難を伴うものであるが、Cream of Scienceのようなプロジェクトは実行可能である。最終的にできたものはまったく完璧なものではないが、他の多くの例と同じように、Creamへと至る過程それ自体が、その結果できたWebサイトより重要であった。

文書あたりの平均経費は50ユーロであった。これは、伝統的な図書館環境において印刷資料を処理する経費より安い。この経費は、作業プロセスとインフラが標準化され、費用効果が改善されれば、文書あたり10ユーロに削減することが可能である。

オランダと同じような、ネットワーク化された全国リポジトリシステムに必要な技術的インフラには、多くの改善と微調整が必要である。既存のツールやソルーションはまだ開発されたばかりであり、設計の見直しや機能向上から得られる利益は大きいだろう。

Creamそれ自体ではDAREという列車を動かし続けるには不十分である。科学者の間で認知度を高めたり、科学者がリポジトリを好きになるように「誘惑」したりするためには新しいアイデアを考える必要がある。自尊心という要素が重要な役割を果たすと考えられが、それは外からそう見えるだけである。図書館は教官の中に入って行き、科学コミュニティの言葉を話すことを学び、新しく革新的な科学コミュニケーションに必要なツールを共に作り出すことが絶対に必要である。

このようなプロジェクトが(メディアの)注目を集めることを期待することは難しい。しかし、注目を集めれば集めるほど、事態は良くなるのである。そんなに遠慮することはない。開始早々Webサイトへのアクセスが殺到することを期待せよ。

するべきこと、してはいけないこと

将来計画

2005年5月10日以降の状況

当初に過負荷が見られた後は、Webサイトへのトラフィックは徐々に減少し、メディアの注目もなくなり、生活は平常に戻った。あるいは、そのように思える。図書館は、Cream of Scienceのために延期していた作業に目を向けるようになった。そして、新しい問題が発生した。Cream科学者が図書館に提供するようになった新しい資料をどうするかという問題である。

Creamをフォローアップするプロジェクトの計画書を書いている図書館も存在する。たとえば、ユトレヒト大学はCream科学者に15人を追加することを決定し、ティルブルグ大学は大学のCream活動を拡張するためにさらにお金を費やすことを決定した。

インフラの改善

Creamに関するインフラやワークフローについて意見が出されたので、DAREプログラム管理者は2005年5月と6月に会議を開いてDARE参加機関と協議した。2つの主要テーマが存在した。第1は、インフラとワークフローの安定化と改善であった。手作業で行わなければならないことが依然として多すぎた。システムはシームレスに統合されていなかったので、入力、処理、出力には依然として多大な注意が必要であった。品質の問題も存在した、などなどである。DARE参加機関は、DAREプログラムの最終年はこれらの改善に焦点を合わせる必要があると述べた。その結果、DAREは2006年に実施するべき最適化の提案書を現在作成中である。

第2のテーマは継続であった。全てのDARE参加機関はDARE 2プログラムが必要であることに合意した。Cream of Scienceは触媒であるが、科学者のためのツールとしてリポジトリを有する、改善された科学コミュニケーションのプラットフォームを実現するには、さらに長期にわたる努力が必要である。我々は現在、DARE 2プログラムを作成するにはどのようなアプローチがふさわしいかを検討中である。

謝辞

本稿にご意見を頂いたプロジェクトリーダーの皆さまに感謝いたします。

参考

  1. DARE(Digital Academic Repositories)プログラムは、オランダの大学の共同事業であり、各大学の研究成果を標準的な方法によりデジタルでアクセスできるようにすることを目的としている。プログラムは、SURF財団 http://www.surf.nl/ がコーディネートしている。
  2. Sherpa http://www.sherpa.ac.uk/
  3. セットとは、OAI-PMH(Open Archives Initiative Protocol for Metadata Harvesting)プロトコルで使用されている用語で、リポジトリデータベースのメタデータレコードのサブセットを意味する。
  4. Cream of Science http://www.creamofscience.org/ (訳注: 原文の参考文献4と5を入れ替えた)
  5. DAREnet http://www.darenet.nl/ (訳注: 一部URLを修正)
  6. 再構成(tweaking): ある大学がPDF再構成の実験を行うことを決定した。彼らは、ポストプリントを使って、出版社の情報とレイアウトを取り除き、開始ページと終了ページは変わらないようにした上でテキストを新しいレイアウトに再フォーマットし、大学の情報(ロゴなど)を入れて、新しいPDFを作成した。これにかかる時間は、Creamプロジェクト期間中にこの方法を大規模に継続するには長すぎた。しかし、実験は打ち切られなかった。これをより実現可能な方法にするためのソフトウェアツールを書くことができる(あるいは、既に存在する)ことが期待されている。
  7. 著者名の標準化: Cream著者の名前に標準形が存在しないことで様々な問題が生じた。Creamのようなプロジェクトでは、これらの問題は一時的な解決法で対処可能である。しかし、長い目で見れば、より確実なアプローチが必要である。DAREプログラムの一環として、デジタル著者識別子(DAI: Digital Author Identifier)が2006年の上半期に導入される予定である。現在、DAIインフラを用意するための特別プロジェクトが開始されている。PICAの著者名シソーラスがその基礎として使用される予定である。

著者紹介

Martin Feijen
Member of DARE Programme Management / Partner and Corporate Coach of Innervation BV

Email: feijen@surf.nl
Web site: http://www.innervation.nl

Annemiek van der Kuil
DARE Community Manager
SURF Foundation

Email: vanderkuil@surf.nl
Web site: http://www.surf.nl/en/oversurf/index.php?cat=Organisatie&oid=21

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