研究 / Research

情報社会相関研究系

佐藤 一郎
SATOH Ichiro
情報社会相関研究系 教授
学位:博士(工学)
専門分野:情報制度
研究内容:http://researchmap.jp/ichiro

研究紹介

ネットワークを移動するソフトウエアを実現

次世代ソフトウエア技術として期待されるモバイルエージェントとは、コンピューター間を自在に移動しながら処理を実行してくれる能動的なソフトウエアです。これを実現させるためには、モバイルエージェントがいったん処理を中断して"冷凍"されたような形でネットワーク上を移動して、目指すコンピューターに到達すると自動的に"解凍"されて動き出すといった仕掛けを入れておかなければなりません。基盤となるソフトウエアに加えて、モバイルエージェントを利用した新しいネットワーク技術やアプリケーションを主に研究しています。

情報システムを自律的に管理する

今後、ネットワークに無数のコンピューターがつながれ、一人のユーザーが何百台ものコンピューターを使うようになれば、人間ではコンピューターやネットワークを管理しきれなくなるでしょう。そこで、モバイルエージェントによって自律的に管理・制御させれば、ネットワーク内のコンピューターを巡回しながら各マシンの動作状態を確認したり、古いソフトウエアを新しいものに入れ換えるといったことが可能になります。例えばある1 台が故障らしいと判断すれば、モバイルエージェントは他のマシンに移動して処理を再開することもできるようになります。
モバイルエージェントの新しい応用では、無線LAN 付きのノートパソコンや携帯電話のソフトウエアの効率的な開発やテストを支援するツールを開発しました。ノートパソコンや携帯電話は移動した先々で使われるので、実際に多くの場所に持ち込んでソフトウエアが正しく動くかを調べなければなりませんでした。新たに開発したモバイルエージェントによれば、ノートパソコンや携帯電話を動かさなくても、その真似をしてくれるソフトウエアを運んで検証することができます。これは世界的に大手の携帯電話メーカーなどに採用されるなど、広く使われています。

ユビキタスコンピューティングやIC タグとも連動

2007 年には国立科学博物館で、人間を関知するセンサーのネットワークでモバイルエージェントを動かし、見学者が所定の場所にたどり着くと自動的に音声解説が開始されるという展示支援システムの実験を行いました。あらゆる所にコンピューターがあって、互いに自律的に連携できるようになるユビキタスコンピューティングも、私の研究課題の1 つなので、そのような環境下でモバイルエージェントを応用してみたわけです。
さらに、この実験はRFID タグと呼ばれるIC タグの実証も兼ねており、見学者にRFID タグの付いた帽子をかぶってもらうことで、同じ展示の前を訪問した時には前とは異なった解説内容を流すような仕掛けになっています。RFID タグは、電波や超音波などで室内における人やモノの位置を測る技術(RTLS)と組み合わせることで、効果的な物流の管理などを可能とする技術です。RFID 及びRTLS のISO 規格委員も務めており、RFID を管理するソフトウエアの研究もしています。
このほか、トラックによる物流網で、集配順序やタイミングを専用言語で記述すると、瞬時に最短の経路を選択できるシステムを開発しました。効率化が高まり、二酸化炭素削減で"エコ物流"に貢献できると期待されており、今後実証実験を予定しています。

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取材・構成 塚﨑朝子

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