研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

佐藤 健
SATOH Ken
情報学プリンシプル研究系 教授
学位:博士(理学)東京大学
専門分野:知能情報
研究内容:http://researchmap.jp/ksatoh/

サイエンスライターによる研究紹介

人間の推論をコンピューターで実現したい

ロボットは夢の技術として研究されてきましたが、今では身近で使える可能性が見えてきました。被災地などの危険な場所で人の代わりに人命救助にあたったり、日常生活でのさまざまなサポートを行ったり、あるいは、情報処理能力のきわめて高い優秀な秘書としてビジネスをサポートしてくれるかも知れません。このような機能を実現するには、ロボット自身がその場の状況を判断して的確に行動する必要があります。そのための重要な技術の1つが「人工知能」であり、私が長年取り組んでいる研究テーマです。

フレーム問題の解明を目指して

私たちはごく普通に「推論」という行為をしていますが、これを人工知能で実現するには「フレーム問題」と呼ばれる難問を解決しなければなりません。どういうことかというと、例えば、ロボットに廊下を安全に移動させようとすると、「人が物陰から突然出てこないか」「つまずくようなものが床に落ちていないか」など、無数の起こりうる可能性を判断させる必要があります。
しかし、すべてをコンピューターに記述しておくことはできません。つまり、「完全な実世界を記述する」としたら、無限に近い時間がかかってしまうのです。
そこで、当面の問題と関係することだけを抽出して、その他は無視する。つまり、枠(フレーム)を作って、枠の中だけで解決するという方法が考えられています。しかし、問題解決に十分な枠の設定はどのようなものなのか、また、何を基準として選べばいいのかがわかりません。これが「フレーム問題」です。
フレーム問題は、人工知能の研究が盛んになり始めた約50 年も前から研究者たちをずっと悩まし続けている最大の難問で、私の研究のゴールもとどのつまりは「フレーム問題の解明」ということになります。

"常識"のメカニズム構築に取り組む

フレーム問題に対して、人間は「ここまでは考えなくても良いだろう」といった"常識"をあてはめて柔軟に対応しているように見えます。しかしながら、人間がどのようにフレーム問題を解決しているのかというメカニズムが解明されていないため、コンピューターにも、この常識なるものを処理させることができないのです。
この問題は、コンピューターに"学習"させることで、解決できるのではないかと考えています。常識のメカニズムを構築するための理論の研究というわけです。
人工知能を実現するための研究としては、人間の神経系を模倣したニューラルネットワークを構築するといったアプローチもありますが、私の場合「"論理"を使って常識を機械化する」という方法を取っています。この方法の良い点は論理を使うことにあります。なぜならば、論理を使うと、どのような処理が行われるか、われわれに理解できるような言葉の一種として説明できるからです。これがニューラルネットワークのようなメカニズムで人工知能を構成していこうというアプローチと本質的に違うところであると考えます。このため、間違った結果が得られた場合、その原因となった処理を言葉によって説明して、どのように改善するかの見通しがつけやすくなるのです。
この研究が、ある程度、実用可能なレベルになれば、まず「気が利くソフトウエアエージェント」として提供できるようになると思っています。例えば、航空チケットをインターネットで予約すると、ソフトウエアエージェントが好みのホテルを探して予約してくれたり、交通渋滞で空港に到着する時間が遅れしまったときには、航空チケットをキャンセルして、別の便を予約してくれたりします。
ロボットの開発はハードウエア、ソフトウエアの両面からの研究が必要ですので、実用化までにはまだまだ長い道のりがありますが、ソフトウエアエージェントであれば、そう遠くない将来に実現できると期待し、日々研究に取り組んでいます。

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