研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

金沢 誠
KANAZAWA Makoto
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:1994年、Ph.D.、スタンフォード大学
専門分野:数理論理
研究内容:http://researchmap.jp/kanazawamakoto/

サイエンスライターによる研究紹介

言葉の科学のためのモデルづくり

ニュートンは力学の理論を展開するために「微積分法」というそれまでになかった数学
を発明したと言われています。同じように、言語の仕組みを今までになかった新しい数学的な手法でとらえたい。それが私の夢です。

観察ではわからない言語の世界

私たちは、毎日たくさんの言葉を交わしています。相手の言ったことを瞬時に理解し、それに対して答える。あまり意識したことはないかもしれませんが、それはスゴイ能力です。そんな能力を科学的に解析するために、数学的道具(モデル)を提供しよう、というのが私の研究です。
私には 4 歳になる息子がいますが、以前、「誰の靴がなくなったの?」と尋ねたところ、「誰の靴もなくなってないよ」という難しい答え方をしたので、驚かされたことがあります。この表現が難しいのは、一般的に疑問で使われる「誰」という言葉が、「不特定の人」を指す言葉として使われている点と、それに呼応して「も」という助詞を必ず使わなくてはいけないという文法的な規約がある点です。子供は、まだろくに数を数えることもできないうちに、このような言い方ができるのです。こうして、いとも簡単に母国語を習得してしまう様子を見ると、子供は言語を習得するための"最適の方法"を知っているのかもしれないと感じさせられます。しかし、その"最適な方法"は、観察すればわかるというものではありません。
もし、文法習得の数学的モデルにおいて有効なアルゴリズム(問題を解くための手順)を提示できれば、実際に子供が従っているアルゴリズムについて洞察が得られ、科学的仮説を立てるための助けになるはずです。

道具立てが必要な言語学研究

さて、今、言語学研究において重要な問題は、大きく 3 つあげられます。1つは人間が
言葉を話すために必要な基礎知識とはどのようなものかということ。その基礎知識をどのように使って話したり、聞いたことを理解したりしているのか。そして、言葉について何も知らない子供が話せるようになるまでに、どのようなプロセスをたどるのかということです。
これらの問題に少しでも迫ることができたら、言語に対する理解は格段に深まります。
そのためには、適切な数学的道具を使うことが重要なわけですが、まだそれが十分そろっていない、と私は考えています。ですから、文法という言語のルールに関する数学的基礎理論を作ろうとしているのです。

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取材・構成 池田亜希子

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