研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

速水 謙
HAYAMI Ken
情報学プリンシプル研究系 教授
学位:1991年 Ph.D. (Wessex Institute of Technology, CNAA, U.K.)
1993年 博士(工学)(東京大学)
専門分野:数理情報
研究内容:http://researchmap.jp/KenHayami/

サイエンスライターによる研究紹介

アルゴリズムの構造を数学の目で読み解く

ある問題をコンピューターで数値的に解くためには、計算の手順を示した「アルゴリズム」が必要です。私は、アルゴリズムの構造や性質を数学的にきっちり解明しようと研究しています。具体的に言えば、そのアルゴリズムが出す答は本当の解なのか、途中で破綻することはないのか、 どのくらい速く解に収束するのか、より良いアルゴリズムはないのか、そういった問題に取り組んでいます。

われわれの生活を支える基礎理論―最小二乗法―

数値計算のアルゴリズムには、さまざまなものがあります。その中で、私は最小二乗問題を解くアルゴリズムに注目して研究しています。まず私の研究の話をするにあたって、最小二乗法を説明しましょう。実験や観測で一連の測定結果が与えられたとき、それらデータの並びを直線や曲線で近似することがあります。曲線からデータを補間して、将来もしくはデータのないところの値を推測します。最小二乗法はこの近似曲線を求める方法で、科学分野でもっとも一般的に使 われています。この方法は、各データ点と近似曲線とのズレの差の二乗和が最小になるよう曲線に含まれるパラメーターを与えます。最小二乗法を使う問題を最小二乗問題といい、測量や画像処理など、われわれの生活を支える問題の解決に使われています。 さて、最小二乗問題の答を導くためには、連立方程式を解かなくてはいけません。ただし、最小二乗問題で現れる連立方程式は、中学校で習ったような連立方程式とは違い、変数と式の数が必ずしも一致していません。また、方程式の数も膨大です。数値的に最小二乗問題を解くためには、どんな型の連立方程式が出てきても速く解を見つけるアルゴリズムが必要です。

数理工学の魅力

最小二乗問題の計算法には、直接法と反復法があります。直接法は、中学校で習ったように連 立方程式の各変数を消していって答を出す方法です。しかし、この方法は変数の数が多くなると 計算時間が莫大となり、現実的に答を出せなくなります。一方、反復法は最初にある値を変数に 入れて、それらを徐々に改良して解に収束させます。この方法は同じ作業を何度も何度も反復させ、解を探すため、計算方法が簡単で、変数が多くても短時間で解くことができます。私は、この反復法を用いて最小二乗問題を速く解くアルゴリズムを作っています。現在、われわれが開発 したアルゴリズムは、テスト計算において従来の反復法に比べ圧倒的に少ない反復数で答を導くことに成功しました。 またアルゴリズム開発とともに、私は開発したアルゴリズムの構造や性質を数学的に解析して います。収束の速さは何で決まるのか、本当の解を与えているのか、どういう条件だと計算が破綻するのかといったことを数学的に証明しようとしています。 私は、中学生の頃数学の美しさに魅せられ、数学者に憧れました。しかし、純粋数学ではなく、 数理工学分野で研究をしています。数理工学の研究は、アルゴリズムを含む現実的な問題を数学的な考えでとらえ直し、その性質を明らかにするものです。数学的な面白さだけでなく、工学への応用を視野に入れることができ、とてもワクワクする研究分野です。

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取材・構成 山田 耕

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