研究 / Research

コンテンツ科学研究系

安東 遼一
ANDO Ryoichi
コンテンツ科学研究系 助教
学位:博士(芸術工学)
専門分野:パターンメディア
研究室WEB

サイエンスライターによる研究紹介

コンピューターで「美」を表現

短時間の計算で魅せる「流れ」を創り出す

今の研究内容は、分野としては「コンピューター・グラフィクス(CG)」です。主な対象は、水や空気のような流体で、2 つの志向性をもって研究を進めています。
1 つ目は、たとえば大きな流れ、海の高い波や川の速い流れを、速く、少ない計算で、目に見えるグラフィクスとして表現できるようにすることです。液体の流れを数式で現すことは19 世紀に可能になりました。その数式をコンピューターで計算して、高い精度でコンピューターシミュレーションを行うことも、現在は可能になっています。そのようなシミュレーションは、飛行機の設計など、人命に関わる分野で非常に多く使われています。
しかし、高い精度で正確に解くには、数多くの計算を行う必要がありますし、計算時間もかかります。
でも、流れの計算に求められることは、目的によって全く異なります。たとえば映画産業のニーズは、「それほど正確でなくてもいいから、速く計算を終わらせてほしい」ということです。
たとえば、ある映画を制作している途中、海面が沸き立ち、渦を巻き、渦の中から白いイルカが飛び出してきて幸運をもたらすシーンをCG で描くとしましょう。映画産業の人々は、流体のコンピューターシミュレーションに、海面らしさ、海水らしさを持った動画の候補を、限られた時間の中で、できるだけ数多く示してもらい、「見た目」の比較検討が簡単に行えるようにすることを求めます。この例で最も求められるのは、イルカの「幸運っぽさ」を印象づけられる海の表現です。物理としての正確さ・結果の確からしさは、ある程度は犠牲にしてもよいのです。
2 つ目は、工学分野では扱わない現象をあえて計算することです。たとえば飛行機や船の周囲を空気や水が流れるとき、渦が出来ると、振動や騒音につながり、さらにエネルギーのロスや思わぬ事故へとつながる可能性もあります。飛行機や船の設計では、渦のできにくい設計を行うための計算機シミュレーションが度々重要となります。でも映像表現の世界では、渦は「あった方が面白い」と歓迎されます。それで、渦のように、視覚的に面白い特別な現象を効率的に再現できる計算方法を研究しています。そもそも原理的には、水の数式は計算コストが非常に高いことで知られるのですが、数式に何かの制約を設けてコンピューターの中に取り込んで計算することで、計算コストの減少に加え、「美しさ」を表現可能になります。この「美しく」する制約によって、その流れの視覚的に重要な性質を保たれていたりもします。私たちが「美しい」と感じるとき、それは見た目だけの問題ではなく、必ず何か数学的な根拠があると私は信じています。

没頭と集中で拓いてきた研究

今の専門は、計算科学ですが、実際は数学に近いと感じています。高校時代、数学は得意な方ではあったのですが、当時は実際に数学を職業で使うとは考えていませんでした。研究に没頭し集中しているうちに、気付かずに数学を発見し、積み重ねから感覚的に数学を理解できるようになってきた感じです。これからも研究を通して、コンピューターで表現するからこその「良さ」「美しさ」を今まで以上に追求していきたいです。

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構成=サイエンスライター・みわよしこ

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