研究 / Research

コンテンツ科学研究系

金澤 輝一
KANAZAWA Teruhito
コンテンツ科学研究系 准教授
学位:2002年 博士(工学)(東京大学)
専門分野:テキスト・言語メディア
研究内容:http://researchmap.jp/tkana/

研究紹介

よりよいサービスへ ログ基盤整備

いつ、どこで、誰が、何を利用したか?

NII は様々なコンテンツサービスを提供しています。その1 つであるCiNii(サイニー)は国内有数の規模とアクセス数を誇る、日本語論文の検索サービスです。近年、科学研究に関する情報をできる限り公開しようという" オープンサイエンス" の動きが世界的に起こっており、それを受けCiNii もサービス内容の大幅な拡大を模索しているところです。それに対して私たちは、ログを活用してCiNii の発展を後押しします。ログとはコンピュータの操作記録のことで、CiNii の場合には「いつ、どこで、誰が、何を見たのか」といった内容が残されています。「ログを使うとこれまでとは違う何ができるのか」。私はその提案と実践を行います。

攻めと守りでサービスを運用

ログには、2 通りの活用の仕方があります。1 つは、ログからユーザーの増減の状況を知り、その結果を魅力的なコンテンツづくりやもっと多くの人にサービスを利用してもらうための仕組みに生かすというもので、私はこれを「攻めの活用」と呼んでいます。またログからは、システムが不安定になっていないかなど、システムの運用状態を知ることができます。ここに注目すれば、現状のコンテンツサービスを適切に運用するための「守りの活用」ができます。
特に攻めの活用をする際には、ログとしてどのような情報を集めたらいいのか、また、ログ情報を他のどのような情報と組み合わせて分析すれば意味のある結果を見いだせるのかといった戦略を立てなければなりません。そこで今、CiNii をどのようなサービスに発展させるのかについて全体像を描こうと、内部の研究者や企業と議論を重ねています。(図1)は、現状のCiNii のログ情報をもとに、アクセス状況を1 分ごとに世界地図上に表示させたものです。議論の助けになればと作成したものですが、これだけでもCiNii の状況が手に取るように分かります。本格的にログ活用が始まったら何が見えてくるのか、私も楽しみなのです。

検索技術をサービスに実装

NII には情報学分野の優れた研究者が集まっています。一方、私はgoogle が登場する前から、検索システムをつくるための研究をしてきました。2002 年に起業してからも、検索技術を応用したサービスをつくってきました。このような背景を持つ私の役割は、NII にある研究成果を単なる研究に終わらせず、CiNii を始めとしたサービスに実装させることです。また、得意とする検索技術では、今「名寄( なよ) せ」の精度を上げることに注力しています。名寄せとは、似たものがあった場合に、それらが同一のものかを判別することで、大量の情報を扱う際には欠かせません。こうした技術も、NII が提供するサービスに積極的に搭載していきたいと考えています。

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構成=サイエンスライター・池田亜希子

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