研究 / Research

アーキテクチャ科学研究系

鄭 顕志
TEI Kenji
アーキテクチャ科学研究系 准教授
学位:2008年 博士(工学)(早稲田大学)
専門分野:ソフトウェア工学
研究内容:http://researchmap.jp/teikenji/
自己適応ソフトウェアの分析・設計

サイエンスライターによる研究紹介

最先端技術を日常生活に活かすシステムを構築する

人間の「便利」をサポートする「エコ」なシステム

人が近付くとセンサーがそれを感知し、灯りがつくといったシステムをご存知でしょう。「無線センサーネットワーク」技術は、このようなセンサー技術を高度化し、より複雑な用途へと応用したもの。センサーを搭載した小さなコンピュータ「センサーノード」を広い地域に複数設置し、ネットワーク化して情報を収集します。無線センサーネットワークを利用することで、たとえば、頻繁に行き来するのが難しいような山奥にセンサーノードを設置し、山火事が発生していないかどうかを確認するシステムを構築するといったことができます。また、災害時に人々を安全に避難させるため、時々刻々と変化する状況をリアルタイムに感知し、最適な経路を誘導するシステムの構築といったことも可能です。
このように、大変便利に活用できる無線センサーネットワークですが、ある難しさを運命づけられています。センサーノードは1 つ1 つがある程度安価である必要があり、大量のメモリや高価なCPU を搭載することができないのです。また、バッテリーはできるだけ長持ちするのが望ましいでしょう。このような制約のある無線センサーネットワークにおいて、センサーノード間のどのような経路で収集したデータを伝達させ、どのセンサーノードから外部に通信させるか、また、正確さを犠牲にすることなく、流通するデータ量をどのように最小化させられるか――言い換えれば、どうすればできる限りエコで、信頼性の高いシステムが実現できるか、ということが、私の研究テーマです。

コンピュータが実世界を理解し関与する世界へ

無線センサーネットワークは、我々の生活をより便利にしてくれる、次世代のコンピュータシステムの基盤となると考えています。というのも、このネットワークは、「世界がどうなっているかをコンピュータに伝える」ことができるからです。
従来のコンピュータシステムは、ユーザーがどのような環境に身を置いているかについてあまり考慮してくれませんでした。ですが、無線センサーネットワークを用いることで、コンピュータは、ユーザーがおかれている状況を感知することができるようになります。
たとえば、お祖父さんが部屋に居間に入ってきた時には、テレビの音量や室温を少し上げるといった、対象者に合わせたきめの細かい調節も、システムが自動で行うことができるようになります。コンピュータの操作が不得手な年代の方でも、情報技術の恩恵を受けることができるのです。
このような、ユーザーの状況を理解し、生活をより積極的に支援してくれるシステムは、様々な分野で次世代のシステムとして期待されています。しかし、その分野をよく知る専門家と技術の専門家とが従来のシステム開発以上に密接に協力し合わなければ、このようなシステムを実現することはできません。今後は、様々な分野の専門家と協力しながら、具体的なシステム構築に取り組んでいくと共に、侵入者感知、空調管理、災害時の誘導など、複数のタスクで1 つのネットワークをシェアするにはどうしたら良いかという、より資源制約の厳しい中での情報効率化の研究を進めていく予定です。また、無線センサーネットワークで活用するソフトウェアを、どのように効率良く作成できるかという、開発手法に関する研究も進めていく予定です。

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取材・構成 中野恵美子

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