2015

611日(木)&12日(金)

Contents Session 新コンテンツサービス 発表会

2015.6.11 13:00-

大学等と協力して取り組んできたコンテンツサービスの最新リリースをお知らせするとともに、オープンサイエンスの進展の中で、学術情報の公開と共有のために、大学図書館とNIIが何をするべきかを議論します。

SINET5におけるコンテンツサービス

細川  聖二(NII学術コンテンツ課 課長)

 コンテンツサービスの成長点2015を紹介する。SINET5への移行にあたってネットワークは大幅に機能が向上するが、コンテンツサービスは地道にこつこつ成長。SINETといえばネットワークの部分を連想されるかもしれないが、ネットワークの上のレイヤーも含めた学術情報基盤全体をSINETとよんで整備している。

 教育研究活動に求められるサービスは多様化しており、そのようなニーズに応えるため、SINET5では、クラウド、セキュリティ、学術情報流通の強化を行っていく。コンテンツでは学術情報の公開と共有をさらに拡充することを目指している。学術コンテンツ事業の成長点としてどの部分が変わったのか。

  • 電子図書館事業(NII-ELS)の終了(しかし、CiNiiは続く)
  • JaLC DOI登録
  • JAIRO Cloudへの既構築機関からのシステム移行
  • JUSTICEとの連携によるアーカイブの拡充
  • 教育研修事業の見直し
  • 学術コンテンツ課のチーム編成のリニューアル
  • 大学図書館との連携の枠組み

 学術コンテンツ事業の課題としては、事業の歴史的経緯もあるが、各システムが乱立し、名前もインターフェイスもバラバラで統一感がない、グランドデザインがないといわれる。

 今後の方向性として、オープンサイエンスに向けた対応が求められており、図書館が担う役割もどんどん多様化している。その中でNIIのコンテンツ事業をどう対応していくのかを考えなければならない。一方で予算の状況も厳しく、新たなシステムの立ち上げは困難である。逆に既存のシステムやサービスを寄せていく必要がある。そこで中心になるのが機関リポジトリ(JAIRO Cloud)で多様な情報を集め、CiNiiで利用しやすいような形で提供する、というのが大枠の方向性と認識している。コンテンツ事業の要である大学との連携・協力を一層緊密にしながら事業を進めていく必要がある。

第3のCiNii「D」

大向 一輝(NII准教授)

 本日、「日本の博士論文をさがす CiNii Dissertations(http://ci.nii.ac.jp/d/)」をリリースした。CiNiiは、ブランドとしてはひとつだが、Articles、Books、Dissertationsの3つの機能が揃った。ちなみにCは、Coreという名寄せの基幹システムがある。CiNii Dは、日本国内の大学および大学評価・学位授与機構が授与した博士論文を検索し、本文へのナビを行うサービス。平成25年から学位規則改訂により、博士論文は原則公開が義務付けられた背景からサービスの開発に着手した。CiNii Dの情報源は、

  • 国立国会図書館NDL-OPAC(約60万件)
  • 機関リポジトリ(約13万件)
  • 国立国会都市間デジタルコレクション(約13万件)

書誌としては、NDL-OPACを信頼し、機関リポジトリ・デジタルコレクションの本文へのリンクを結びつけるということを行っている。今後は名寄せの精度を追求してリンク率を上げていく。

 

 CiNii Dの技術面としては、軽量なシステム基盤=Elasticsearch、ウェブAPI=RDF/XML・JSON-LD、ハーベスティング対応=ResourceSyncを備える。機関リポジトリの本文をクローリングして全文検索するという機能があるがまだ運用していない。これから各大学の皆様のご理解をいただき、ステップを踏んだ後、これを用いて博士論文のアクセシビリティを高めていきたい。このほかモバイル向けのインターフェイスもあり、ArticlesとBooksは秋ごろまでに対応する。現在CiNii Dは試験公開の段階で不具合の修正や名寄せの精度向上にご意見をいただき10月に正式公開とする。第4のCiNiiは・・・あすの「CiNii10周年アイデアソン」で。

 

http://ci.nii.ac.jp/d/

利用者とeコンテンツをつなぐERDB

古橋 英枝(NII学術コンテンツ課)

 電子ジャーナル・電子ブックといったeコンテンツの登場以来、どうすれば利用者とeコンテンツをつなぐことができるのかという大学図書館の模索は20年にわたり行われてきたが、未だに解決の糸口は見えていない。今年度発足した電子リソースデータ共有作業部会のメンバーは、過去の議論に捉われることなく、利用者とeコンテンツをつなぐために今必要なことが何かを皆さんにも見える形で議論し、もう一度一緒に考え、学び、情報交換をするテーブルを作りたいと考えている。ERDBをそういった議論の場にしたいと考えている。誰かが新しいサービスを作ってくれる、ではなく、こうなっていたらいいのにという理想を全員で思い描き、そこに近づけるように行動していきたい。ERDBを学術機関のスタッフとしての根幹を支えるようなチャレンジにしたいと考えている。

 国内電子リソースのナレッジベース(KB)が必要、というのが過去20年の検討結果の一つである。管理・提供する上で、紙と電子で決定的に異なるのは、電子リソースは利用者がアクセスできる範囲がころころ変わるという点である。しかし各機関の図書館員が一人でアクセス範囲の管理をするのは限界があるため、協力して管理する枠組みが必要である。一人でできないことはみんなでやる、世界中でやる、ということは日本のKBは日本が責任を持って作ろうということである。この日本のKBを登録する箱として用意されたのがERDB-JPである。ERDB-JPの登録データは、Creative Commons 0ライセンスを採用しており、誰でも自由に使うことができる。大学図書館等が利用すれば紙と電子両方へのアクセス情報を同時に表示できるほか、登録データが世界のKBコミュニティに流れることで、世界中に日本のeコンテンツを流通させ、国際的な視認性を高めることができる。また、世界の動きに参加することで、日本の学術情報をより流通させるための提言がしやすくなる。

 

 本日の発表の主眼は、誰がそのデータを作るのか、ということである。本日付でERDB-JPはデータ作成機関=パートナーの募集を開始した。ウェブサイトからパートナー登録の申請ができるので、ぜひ登録を検討していただきたい。本日時点での対象機関は、大学・短期大学・高等専門学校・大学共同利用機関・文部科学省および文化庁の施設等機関だが、今後拡大していく予定である。

  • パートナーA=ERDB-JP内のすべてのコンテンツの修正・削除が可能
  • パートナーB=自機関が登録したマイコンテンツの修正・削除が可能

 

とにかく一緒に創っていくのだということを第一に考えている。どんな些細なことでもご連絡いただきたい。

 

https://erdb-jp.nii.ac.jp/ja/

KAKENから統合成果データベースへ

片岡 真(NII学術コンテンツ課)

 KAKENは、科研費の研究課題・報告書を公開するデータベースである。NIIが文部科学省、日本学術振興会と協力して作成・運用している。現状の国の競争的資金全体のうち、科研費は6割近くにあたり、KAKENはその助成成果を公開している。他のファンディング機関は、それぞれが持つウェブサイトや公開システムごとに公開されている。このような状況の中、NIIはJST研究成果データベースの公開を支援している。JSTがファンディングした情報の一元的な発信を行うものである。

 JSTとNIIの連携事業は、KAKENをベースにした新しい研究助成成果データベース。内容は、JSTが実施したファンディング事業の研究開発課題およびその研究成果を公開するもの。研究課題のライフサイクル可視化(採択・交付・報告書・評価資料・受賞・外部リンク(プレスリリース、新聞報道、アウトリーチ))、ルックアンドフィールの洗練、高アクセス負荷への対応、データ反映の迅速化、制度変更への柔軟性などがコンセプトである。今後、科研費、JST、この他の研究助成の集約したデータベースを構築し、統合検索を実現させたい。国の研究成果を一つに集められるような活動にしたい。

 オープンサイエンス推進の動きのなかで、内閣府による検討会の報告の中で”公的研究資金による研究成果のうち、論文および論文のエビデンスとしての研究データは原則公開する”、”各機関において、研究成果の散逸・消滅・損壊を防止するための具体的施策を講じる必要がある”とある。科研費の助成による発表文献は年間40万件で、科研費関与論文は我が国の論文数の約5割、被引用土トップ10%論文数の約6割である。そのなかで、大学とNIIが共に考え共に作る、安心・安全・便利な学術情報の流通基盤はどういうものが描けるか。ひとつの将来像として、NIIで行っているKAKEN、JAIRO Cloudなど、それぞれに文献情報を別々に管理しているものをひとつに集める活動を展開していければ、今までとはまったく違った、発展的な学術情報基盤の整備ができるかもしれない。

 

 

 

 

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