国際文化会館図書室における学術情報センターシステムの利用

(財)国際文化会館図書室

樋口 恵子

1.はじめに

 国際文化会館図書室は,日本研究の専門図書館として,会員を中心とした内外の学術研究者をサービス対象とする図書館である。利用者の6割が外国人研究者であり,直接来館利用できない海外の研究者に対するサービスに力を入れている点に特色がある。蔵書数は約2万冊であり,欧文による日本研究図書および人文・社会科学分野の雑誌を収集対象としている。特色のあるコレクションとしては,英文の日本政府刊行物,海外日本研究機関のワーキング・ペーパー類などがある。

2.学術情報センターシステムの利用

 当図書室ではレファレンス・サービスの拡充を図るために,1991年にNACSIS-IRシステムおよび電子メールシステムの利用を開始した。さらに1993年にはNACSIS-CATに参加し,1995年からNACSIS-ILLの利用を開始している。

 学術情報センターシステムの利用は,当図書室の場合レファレンス・サービスにおいて,最も力を発揮していると言えよう。海外在住の研究者からNACSIS-MAILによるレファレンス質問を受け,NACSIS-CAT,NACSIS-IRによって,調査した結果を電子メールで回答し,当該研究者の来日予定に合わせて必要な文献をNACSIS-ILLによって予め取り寄せておいて提供するといった事が日常的に行われている。当図書室は土曜日も開館しているので,最近ではNACSIS-Webcatをレファレンスに利用することも増えている。つまり,当図書室は海外の研究者が日本の資料を利用する際の窓口として機能しているが,NACSISの利用がこのようなサービス提供の基盤の一つとなっているといえる。

 現時点では当図書室の利用者の多くは,日本語の表示機能を自分のパソコンに持たないために,海外から直接NACSIS-Webcatにアクセスして利用した経験が無い。海外から学術情報センターシステムを直接利用したいと考える学術研究者および図書館に対する広報,サポートについては,学術情報センターのサービスの一層の充実を期待している。

3.今後の課題

 当図書室の業務の多くは,コンピュータ化されておらず,学術情報センターへの接続はすべてダイヤル・アップ接続であって,常時ネットワークで接続可能な情報環境はまだ無い。今後最大の課題は,新CAT/ILLシステムへの移行であるが,その際には図書館業務システム全体の電子化,ネットワーク化を同時に実現したいと考えている。民間の非営利団体であるため財源に乏しい事,またネットワークの専門知識を有する人材の不足など,問題点は多々あるが,前向きに取り組んでいきたいと考えている。


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